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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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 ずーっと片思いしていた小林君に告白された私は、もちろん即OKの返事をした。

 それから三ヶ月前までの三年間、私の脳内は薔薇色に染まってまともな考えが出来なくなっていたんだと思う。

 まず、二人が付き合っていることは内緒だよ言われたのだが何も疑問に思わず、律儀にそれを守った。

 そして私との約束より趣味のボードを優先しよくデートをすっぽかされたが、怒ることなく許していた。

 バイトしてるくせにいつもお金がないと言ってデート代は私持ちだったし、しまいには外でデートすることもなくなってた。

 そうだ、社会人になっても彼から奢ってもらったことやプレゼントを貰ったこともないや!

 こんなのカレカノじゃないよね。


 そう、今なら分かる。だけどその当時の私はそんな事思いもしなかった。

 ついでに言うと、彼の周りには大勢の綺麗な女の子が取り巻いていて、そしてその中の誰かと絶えず噂になっていた。

 聞きたくなくても私の耳に入ってくる彼とキラキラ女子との噂話。さすがに不安になって聞いてみると「あれはただの友達。俺の彼女は美鈴だろ」と言ってギュッとしてくれた。そしたら頭の中にファンファーレが鳴っちゃって、疑惑なんて何処かに飛んで行ってしまってた。

 この三年間、それを何回も繰り返していたような……

 ホントバカ。私の大馬鹿者!


 恋は盲目っていうけど、私は本当の彼の姿を見ていなかった。

 彼の中にある都合の悪い所は無意識に見ないようにしていたのだ。

 彼はフェミニストだから、ちょっと優しくするだけで勘違いされちゃうんだよね。

 私よりボードを優先しちゃうけど二人でいる時は甘えてくれるし甘やかしてくれる。だからいいよ、許す!

 私との約束より仲間との約束を重視するけど、友人を大切にする人っていいよね。

 彼が「俺の恋人は美鈴だよ」って言ってくれたんだ、だから私が彼を好きな分だけ彼も私を好きでいてくれる。きっと……

 イタイ。痛いよ、痛すぎる。

 どんだけ分厚い恋のフィルターかけてんだよ。


 でも、それは仕方のないことだったのよ。

 ずうっと片思いしていた人に告白されたら、それだけで有頂天になっちゃうじゃない。

 今まで遠巻きにしか見ていなかった彼が至近距離にいるんだよ。私の名前を呼んでくれちゃたりするんだよ。

 それにそれだけじゃぁない。私が一目ぼれしちゃった私好みの顔でじーっと見詰めてくれるんだよ。あまーいあまーい声で「好きだよ」って囁いて、ギュッてしてくれたり、チュッてしてくれたり、いや、まあ、それ以上のことなんかも……

 これじゃあ脳内がお花畑にならない方がおかしいと思わない?

 三年間も幸せの花園にいられたんだから逆に彼に感謝すべきなのかも。

 


 あんな終わり方じゃなければ、きっと青春のいい思い出になっただろうに……

 あの時のことは思い出したくない。というか、三ヶ月しか経っていないのに所々記憶が飛んで曖昧になってる。

 彼が綺麗な女の人とキスしてて

 彼のために買ったバースデーケーキが廊下に落ちて

 彼は私が見ていることに気付いても慌てることもなくて

 彼女と離れるどころか、まるで私に見せつけるかのようにお互いの体を密着させて

「あー、ばれちゃったかぁ」

「言っとくけど、お前の方が浮気だから」

「俺が本気でお前を好きになると思ってんの?」

 

 彼と彼女が私を嘲笑う声だけが頭の中をグルグル渦巻いて、どうやって家に帰ったのかも覚えてない。

 気付いたら部屋がぐちゃぐちゃになってた。

 私の顔も涙でぐちゃぐちゃで、大声で叫んでたみたいで声も枯れちゃって。お隣の住人が「うるさい!」って苦情を言いに来てようやく我に返った。

 彼のために買ったプレゼント。私のお気に入りのマグカップ。ちょっと高かったクリスタルの花瓶。みんな壊れてた。

 

 自分の中にこんな激情があるなんて思ってもみなかった。

 それだけ彼のことが好きだった。

 それだけ彼のことを信じていた。

 だけど、彼は私のことを好きになったわけじゃなくて、

 ちょっと毛色の変わった女と遊んでみたくなっただけで、

 三年関係を続けてきたのは、私が都合のいい女だったからだってさ。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

多くの方からブックマークの応援を頂き大変嬉しく思います。これを励みに頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします。

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