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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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 それならば急がなくちゃと歩調を変えようとしたその時、廊下の先のエレベーターホールから男性二人の話し声が聞こえてきた。

 一人は聞いたことのない声だったけど、もう一人の人はあのお方。私の最大の悩みの種を作っていらっしゃる五十嵐さんのものだった。

 二人はエレベーターの方を向いていて私には気付いていないみたい。

 私は反射的にクルリと反転するとスタタタタと元来た道を(いや廊下だけど)戻り取り敢えず女子トイレに入った。


 あーこれ違うから。別に五十嵐さんがいたから逃げたわけじゃないし。そうそう、私は五十嵐さんのこと嫌いなわけじゃないし、避けているわけじゃないんだよ。ただちょっと、一緒にいるところを第三者に見られるのが困る。っていうか、出来れば会いたくないっていうか…… いや、用、そう用を思い出したわけよ。会社を出るときは用を足しておかなくっちゃね。

 ……ってなんで私、自分に言い訳してるわけ?



 五十嵐さんとは課が違うけど同じ管理部所属でフロアも一緒なので、以前からこんな風に見かけることがあった。

 もしこの会社にイケメンコンテストなるものがあれば、必ず上位に食い込むであろう程の美貌を持つ五十嵐さん。以前の私は彼の姿を見かけるだけで胸がときめいて幸せな気分になれた。ごくたまにすれ違おうものならば、心臓が飛び出ちゃいそうなくらいドキドキしてた。

 私だって女の子。イケメン様には弱いのです。

 えっ、何だって?

 その頃彼氏がいたんじゃないかって。

 確かに三ヶ月前まではいましたよ、彼氏がね。


 学生の頃から三年間も付き合っていたけど破局しちゃいました。

 大好きで大切で、私の一番だった彼。だけど今は世界で一番大嫌いです。どこか遠くで不幸になってて欲しいと思っています。

 彼と付き合った三年間を私の記憶から抹消したい。というか、彼が存在していたこと自体忘れたい。

 ずーっと私のことを裏切り続け、私のなけなしのプライドをズタズタにした最低男なんだもの。




 私の元カレ小林 瑠偉は同じ大学の同級生。キャンパスでちょっとした有名人だった。そう、かなりのイケメンだったのだ。

 イケメンに弱い私は一目見たその瞬間に恋に落ち、寝ても覚めても彼のことばかり考えるようになった。想いは日毎夜毎につのるばかり。

 だけど告白なんて恐れ多くて… っていうか、話しかけるどころか近付くことすら出来なくて。その姿を見ているだけで幸せだった。

 小林君の周りには、いつもスクールカースト上位者が集い常にキラキラ輝いていた。そう、一般学生しょみんにとって雲の上の人だったのだ。

 同じ講義室にいても彼と私の間には透明だけど天井に届くくらいの壁が存在していたのだ。

 

 そんな彼とお近付きになれたのは二年の時にゼミが一緒になったから。

 それはとても人気の教授のもので競争率が異常に高かったのだが、どういう訳かゼミ生に選ばれたのだ。

 その時は己の運の良さを喜んだのだが、その後に辛い思いをする事になったわけで、まさしく人生は塞翁が馬なのだなとしみじみ思った。

 話を戻そう。

 そのゼミの数々のイベントをこなすうちに私と彼の間にあった透明な壁がだんだん低くなっていき、そしてなんとビックリ。彼の方から告白してきたのだ。


 私の人生の中で最大の奇跡が起こったと思った。

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