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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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「う~ん 美味しい。千葉さん、いいお店知ってるねぇ」

 うっ、嬉しい‼ 鈴木さんに褒められた。

 今日は一段と寒いねってことで暖かいものを食べようってなって、私の知っている鍋物の店に来たのです。ここは女の子二人で入っても気後れしない店構えで、大人数からボッチまで遠慮なく楽しめるような間取りになっていて、お味もピカイチそしてなによりリーズナブルなのです。

 大勢で寄せ鍋をつつくことも出来るし、変わり種の鍋を一人前ずつ注文することも出来る、誠に至れり尽くせりのお店です。店内も明るくて綺麗だしね。

 ああよかった。鈴木さんに喜んでもらえて……

 ちなみに鈴木さんはトマト鍋、私は豆乳鍋をいただいてます。うん、うまし。


 仕事終わりにこんな風に二人で食事に行くのは今日が初めてなのですが(あっ、前にカフェに行ったのはお悩み相談ってことでノーカンで)鈴木さんといるともうずーっと前からこんな関係が続いているような、そんな感じがしてしまいます。

 私は人見知りで口下手で話題も豊富ではありません。

 鍋サークルの面々となら気心も知れてるし、お互い鍋好きという共通点もあって、話も盛り上がるし本音トークも出来るようになりました。ですが知り合って間のない人と食事に行くのは、それも二人きりでなんてハードルが高いっていうか、荷が重いっていうか……

 ですが彼女といるととても楽しいんです。


 もっとお話がしたい。もっと一緒にいたいって思ってしまいます。

 これはおそらく鈴木さんが私に合った話題を振ってくれるから。そして私の話すペースに合わせてくれているからです。 鈴木さんは気配りのできる心優しい人だなとあらためて思いました。

 明るくて誰に対してもフレンドリーな鈴木さん。課長や主任からも可愛がられていて、営一のマスコットキャラ的な存在なのです。はい。



「で、結局千葉さんはどっち派なの?」

 この質問、今まで何度となく聞かれました。

 私の答えはいつも同じ「どっち派でもありません」です。

 質問は何かって? もちろん水嶋派か広田派かですよ。

「本当にぃ? もう本音ぶっちゃけていいんだよ。絶対お局様には言わないから!」

 鈴木さんは『千葉さんは水嶋派』だと思っているようです。


 まあそう思われても仕方ないです。

 鈴木さんはあのコピー機での衝撃的な出来事やその後私が広田さんとデートする気はない、とハッキリお断りしたことを知っているんですよ。というか、広田さんとの交渉術を鈴木さんから教えてもらったんですよね。


「本音の本気の本当にどちら派でもないですよ。前にも言いましたけどお二人とも私のタイプと違うんです」

「じゃあじゃあ、千葉さんのタイプってどんな人?」

「そうですね…… キラキラしてない人がいいです」

 鈴木さんは私の答えにあっけにとられたようです。そして生温かな眼差しでため息交じりで言いました。

「そこはキラキラしている人、ってのが普通なんじゃないの?」

 そうですね。普通はそうだと思います。

 

 容姿がキラキラしている人。夢に向かってキラキラしている人。仕事に打ち込んでキラキラしている人。その方が魅力的ですもんね。

 でもキラキラした人のせいで辛い思いをしてきた経験上、今のタイプはそうなってしまったのです。


「千葉さん。もしかして五十嵐さんの他にもイケメンのせいで嫌な目に合ったことがあるの?」

 すごいです鈴木さん。大当たりの大正解です。

 ですがどうしましょう。

 元カレ小林とのアレコレを知り合って二週間の同僚に話すのはためらわれるわけで…… なのでその質問にどう答えたらいいのか思案をしていたら、空気を読んだ鈴木さんが話題を転換して下さいました。ほっ。


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