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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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 5秒前! 4、3、2、1、キーンコーンカーンコーン……

 って、本当にチャイムが鳴っているわけじゃありませんが、終業のお時間になりました。心の中では今盛大に鐘の音が響いてます。

 いつも忙しい営業部ですが月末処理が終わったあとの数日間は少し時間的に余裕があるのです。あっ、いいえ営業さんは別です。事務員だけです。

 そしてその期間は営業さんが帰社する前に帰らないといけないのです。あっ言い間違えました。帰った方が身のため…… じゃなくて早く帰らないと早く帰れなくなるんです! って、あれ? 何言ってんだか分からなくなってきちゃいました。えーと雰囲気で察してくださいませ。


「千葉さん終わった?」

 鈴木さんがいつものように声を掛けてくださいます。

「はい。終わりました」

「まっ見たら分かりるけどね」

 そう鈴木さんが茶化すように、私の机の上は終業時間とともに席が立てるよう既にキレーに片付けられております。だって今日は花の金曜日。そんでもって鈴木さんとお食事の約束をしているのでございます、えへ。

 二人連れ立って立ち上がると、それに気が付いた奥村さんが笑顔で「お疲れ様」と声を掛けてくださいました。その笑顔に答えるように鈴木さんはニッコリと笑って「お先に失礼しま~す」と少し高めのトーンで返します。私もそれに倣って笑顔でご挨拶です。


 揃ってフロアを出ると途端に鈴木さんの表情が一変しました。ええ本当にもう同じ人かって思うほど変わるんです。そして先程とは打って変わって低めのトーンでつぶやきました。

「この暇なときに残業なんてあり得ない。あれは残業のふりをして水嶋さんの帰りを待つつもりなのよ」

 そして次々と鈴木さんの可愛らしい口から悪態をついた言葉が出てきます

「一人だけ残業で居残られると同じ事務員なのに手伝わずに先に帰る私達のこと薄情な奴らだって営業に思われるわけよ。だけど一緒に残りますなんて言ったら、空気読めよって露骨に嫌な顔されちゃうしね。まったく、やってられないわよ!」

 相変わらず鈴木さんは辛辣です。

 これも初めて聞いたときは大変驚きましたが、今はさほど気にならなくなりました。人間何事にも慣れるものです。


 営業ここに来て二週間ですが奥村さんと鈴木さんの関係性が見えるようになってまいりました。

 何事にも水嶋さん一直線の奥村さん。それに振り回される鈴木さん。

 鈴木さん、ここに配属された当初は場の空気…… ってか奥村さんの気持ちが読めなくて色々あったんだって。あまりの理不尽さに悔し涙を流したこともあったとか。

 そんなこんなで表の顔と裏の顔を持つ鈴木さんが出来上がったそうなのです。

 そうですね。分かります。分かりますよ、鈴木さん! 

 ストレスやうっ憤て溜めちゃだめですもん。

 人間誰だって本音と建前があって、同僚とはいっても上下関係ってのもあって、ストレートに本音をぶつけちゃうと波風が立っちゃいますものね。

 鈴木さんの場合ちょっと落差があるってだけで、人間が生きていくうえで必要なスキルだと思いますよ。はい。




 忘れ物を取りにロッカー室に戻った鈴木さんをエントランスで待っていると、窓越しに広田さんが帰ってくるのが見えました。

 広田さんは断ってもしきりにデートに誘ってくるチャラ男です。おまけに彼女持ちのくせに他の女の子をつまみ食いした前科がありまして、私の中では要注意イケメンNo2に認定されている人です。

 うーん不味い人に不味い所で鉢合わせしそうです。

 いろんな方が通りかかるここで絡まれたら何かと面倒だと思い、とっさに非常階段の所まで非難させていただきました。総務での一件以来イケメンとの接触は極力避けたいのですよ。

 広田さんは私に気付かずにエレベーターホールへと消えて行きました。

 ほっと胸をなでおろした時です、背後から聞き覚えのある声で呼び止められました。


「お疲れ様。千葉さん」

 要注意イケメンNo1が微笑みを浮かべ立っていらっしゃいました。


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