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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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「はい、お疲れさん」

 そう言って主任がポンとハンコをついてくれました。

 やった、やりました。やっと終わりました。

 ただ今の時刻pm6:28。

 なんとか主任のイライラがMaxになる前に提出することが出来ました。

 千葉 美鈴、頑張りましたーっ!!

 ……でも、やり遂げた達成感より疲労感の方が強いです。目とか腰とか肉体的にも辛いですが、精神的なものがドーンときてます。


 何時までこんな状態が続くのでしょうか。

 ついこの間までは仕事でミスしないことだけ考えていればよかったのに、今は仕事のことよりどうしたら総務のみんなと元通りになれるのかなって、そればかり考えています。

 特に松木先輩と…



 松木先輩は以前からちょっと怖い存在でした。

 総務に配属された時にコッソリ教えられたんです。「あの人を敵に回したら総務ここでの仕事がやりづらくなるから気を付けてね」って。

 なので、彼女に対しては人一倍気を使ってきました。課長や主任よりもです。

 ああ、それなのに……

 私の馬鹿、馬鹿、馬鹿!

 なんであの日、あの時、あの場所に行ってしまったんでしょう。

 出来る事ならあの時の私に会って注意したいです。あの場所には近づくなと。

 そうしたら五十嵐さんと知り合うこともなかったし、その後の度重なる邂逅もなかったはず。

 そうしたら松木先輩や総務の皆さんとこんなギクシャクした関係にならずにすんだ。

 そう、こんな苦労をしなくてすんだのだ。




「お先に失礼します」

 扉を閉めてから「ふうっ」と溜息をついた。

 重たい心と体を引き摺るようにして廊下を歩く。

 ただ今の時刻pm6:40。

 今から速攻で身支度してタクシーを飛ばせばちょっとの遅刻で女子会に行けるだろう。

 お断りの電話を入れたとき「早く済んだらおいでよ」って言ってくれたし、美味しい食事とお酒で盛り上がりたい気分である。

 けど……ちょっと待って。


 確か三ヶ月前の集まりの時、ちょうど彼氏と別れたばかりで、酔って愚痴ってくだ巻いて騒いだあげくにリバースと、とことんみんなに迷惑をかけた。

 もしかして今日も仕事の愚痴を言っているうちにエスカレートして、前回の二の舞をしてしまうかもしれない。

 それはさすがにまずい。

 そんなことになたっら、本気で引かれて友達を無くしてしまうだろう。

 行くのやめといた方がいいかな。

 でも、みんなに会うと気分が晴れてパワーがもらえるんだけどな。

 だけどもしまた酔っ払って迷惑をかけたら困るし。

 いや、お酒を飲まなきゃいいんじゃない。

 飲まずにいられるのか? 私。

 うーん…… 決めた。

 今日はおとなしくお家に帰ろう。


 トボトボトボ…

 あっ、そうだ。夕飯にコンビニおでんを買って帰ろう。

 そうだ、そうだ、そうしよう。

 おでんのことを考えたら少し気分が上向いてきたよ。

 私はおでん、というか鍋物が好き。

 大学のサークルも鍋物同好会に入っていたくらい。

 今日の女子会のメンバーもその同好会の人達で、社会人になった今でもなんだかんだと理由をつけては集まるようにしているのだ。


 そういえば、前回も、前々回も、そのまた前もドタキャンしたんだったなぁ。

 考えてみたら三か月前の私が羽目をはずしたあの日から行けてないんだ……

 大学を卒業してメンバーのほとんどは会社勤めになった。

 翌日の仕事を気にしないで集まるとなるとやっぱり金曜がベストだよね。

 でも、約束した日に限っていつもこんな風に仕事を押し付けられて残業になってしまう。


 こう何度もドタキャンしていたら、そのうち誘われなくなりそう。それだけは、なんとしても、避けたいところだ。

 それに確か今日のお店は元大関がやっているちゃんこ鍋の店…


 よし! やっぱり、行こう。







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