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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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「おい広田何している。外回り行くぞ」

「あータイムリミットか、残念。また後でね」

 やって来た同様爽やかスマイルで広田さんは颯爽と立ち去っていきました。

 はあぁぁぁぁ 取り敢えず助かったぁ。

 ナイスタイミングです課長。ありがとうございます。

 それにしても大変な事になりました。

 何とかして広田さんの誤解を解かなくてはなりません。私の話をじっくり聞いてくれたら直ぐに分かってもらえると思うんですが…… 聞いてもらえますかね? さっきは相槌すらまともに返せなかったし。これは対策を練らなければいけないかも。はぁ…



 30部の会議資料を作り終えて一息つくために給湯室へ行くと先客がいらっしゃいました。

「さっき広田に絡まれてたみたいだけど、なんだって?」

 先客の鈴木さんが興味津々な顔をして聞いてきました。手短に話すと鈴木さんはしたり顔で頷き、

「ああ、やられたね。それはお局様の仕業だわ。きっと」

 と、断言されました。

 やはり鈴木さんもそう思いますか。

「あの人、水嶋さんが絡むと時々とんでもないことをするのよね」

「あの、私、奥村さんに嫌われたんでしょうか?」

 私は一番気になることを真剣に聞いたのだけど、鈴木さんにとっては変な質問だったらしい。びっくりした顔をされてしまった。


「好きとか嫌いとか同性の同僚をそんな風に思わないんじゃない? それとも、まさか千葉さんそういう趣味?」

「い、いえ… その、そういうんじゃなくて」 

 ど、どうしましょう変な方向に捉えられてしまいました。

 私の言い方が悪かったんでしょうか、きっとそうですね。でもこの場合どのように聞けばよかったのでしょう? 聞かなかった方がよかったんですね。でももう言っちゃたし。忘れてくださいって言ってみる? ダメダメそうしたら余計にややこしくなるよね。鈴木さんの誤解が深まるだけだよね。

 訂正の仕方が分からなくてあたふたしていたら鈴木さんが笑い出した。

「ごめんごめん。ちゃんと意味わかってるわよ。仕事仲間として仲良くしたいってことでしょ。まっそんなに気にしなくっていいって。私もお局様とはいろいろあったけど、それなりにやってるし」

「私あまり人付き合いが上手い方じゃなくて」

「大丈夫大丈夫!」

 鈴木さんは明るく励ましてくれるけれど、私の不安は広がる一方だ。

 ずっと私が俯いたままなので鈴木さんは気になったようだ。さっきより声のトーンを下げて優しく訊ねてくれた。

「千葉さん、何がそんなに心配なの?」


 どうしよう。言っていいかな? でも、こんな事を聞いたら変な人って思われちゃうかも。

「あのさ、私じゃ頼りないかもしれないけど言ってみなよ。ほら誰かに聞いてもらうだけで心が軽くなるって言うじゃない」

 ……ここまで言ってくれてるんだし、思い切って聞いてみよう。

「円滑な人間関係を築く為には水嶋さんの傍に近寄らない方がいいですよね」

「はっ?」

「奥村さんを怒らせたくないので水嶋さんと話さないでおこうかなと考えているのですが」

「それじゃ仕事できないじゃない」

 思いっ切り溜息を吐かれてしまった。

「実は奥村さんに水嶋さんを狙っていると誤解されてまして、その誤解を解くには水嶋さんと接触しなければいいのではないかという結論に達したんです」


 鈴木さん、ものすごーく呆れた顔をされてます。

 自分でもおかしなことを言っている自覚はあります。

 会話するくらいで怒らせちゃうなんて普通あり得ない。

 でも、実際あったし。松木先輩はそうだったし。私、かるーくトラウマなんです。

 世間話をしていただけで色目を使ってっるって言われて。そんなつもりはないって何度言っても信じてもらえなくって。それから何を言っても、何をやっても否定されて…… とても辛かったし。

 ちょっと総務での日々を思い出してすっかり落ち込んでしまいました。


「どうしてそんな考えになるのかイマイチ理解できないけど、なんだか拗らせてるみたいね。後でゆっくり聞いてあげるから気持ち切り替えて今日一日頑張りましょう! はい、仕事仕事。千葉さん行くわよ」

 そうです、そうです、そうでした。

 私はここに仕事をしに来てるんです。決して人生お悩み相談に来ているわけじゃありません。

 鈴木さんの言う通り気持ちを切り替えてお仕事頑張らなくてわ!

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