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私が勤める成瀬興産はOA機器の製造・販売・リースを主な業務としております。
会社の規模としては『ギリ大手』というところでしょうか。
業界では確かな品質ときめ細かいサービスが評判で、なかなかの優良企業なのです。
我が社の花形部署といえば開発部・営業部・広報部…… そんなみんなが憧れる華やかな部署の一つ営業部には三大イケメンと称される飛び切りのイケメン様 水嶋尚久さん(30才)がおられまして、社内外の女性の熱い眼差しを浴びていらっしゃいます。
水嶋さんは営業部の中でもエリートといわれる営業一課の主任さんで、おまけに営業成績が常にトップクラス。営業のエースといわれている御方なのです。美形で仕事が出来てエリートコースに乗っかってる… これはもう花丸優良物件としかいえません。多少取っつきにくいところがあるそうですが、そんなもん何の障害でもないようです。
我が社の大多数の独身女性はなんとか水嶋さんとお近付きになろうとあの手この手でアピールしているのですが、水嶋さんの鉄壁ガードに玉砕していくそうです。
営業部にはもう一人注目のイケメン様 広田海斗さん(24才)がいらっしゃいます。
広田さんは昨年入社組の中で一際目立つ存在で研修時から噂に上るほどだったそうです。人目を引く容姿。頭の回転がよく人を引き込むトーク力も持っていて、ポスト水嶋の呼び声高く皆の期待を背負っていらっしゃる御方です。彼もまたエリートコースの営業一課に所属し営業のホープといわれ、水嶋さん同様熱い眼差しを受けていらっしゃる…… 以上、奥村さん・鈴木さんよりついさっき頂いた情報でした。
さて、話を少し前に戻します。下心見え見えの独身女性のお誘いを華麗にスルーするという水嶋さんですが、中にはその鉄壁ガードをくぐり抜けお近付きになった女子がいらっしゃいます。いえ、語弊がありますね。ガードをくぐり抜けるというよりは仕事上の関係で関わらないといけない立場に納まったラッキーな女子といった方がいいでしょう。
私、千葉美鈴はそのラッキーな立場を図らずも手に入れてしまいました。
イケメン二人が所属する営業一課の事務員として総務より配置転換されたのです。
もしこれがちょっと前の私なら降ってわいた幸運に踊りだしていたかもしれません。しかし、今の私はイケメン好きだったあの頃の私とは違うのです。
小林(元カレ)のせいでプライドをズタズタにされ体調を崩し、五十嵐(エセ紳士)のせいでいじめにあい辛い思いをした。あれが長期化していたら身体だけでなく精神まで病んでしまったに違いありません。
そりゃ私はこれといった取り柄もないちっぽけな存在です。いくらでも代替えのきく事務員です。だからといって不当に踏みにじられるいわれはないはずです。
本当ならあいつらをギッタギッタのグッチャグッチャのめっためったにしてやりたい。ですが、私にはそんなことが出来る知恵も力もありません。実に残念です。
そんな弱っちい私が出来る事といえば自己防衛のみ。もう二度とあんな目には会いたくないのです。
ならば元凶のイケメンに関わらなければいい。
なので社内独身女性垂涎のべスポジについた私ですが、それを活かすつもりはありません。
何故か奥村さん・鈴木さんから水嶋さん狙いだと誤解されているようですが、水嶋さん(ついでに広田さん)とは極力関わらないよう日々努力していくつもりですので、そのうちきっと私は無害だと分かってもらえると思います。




