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獣人の求婚  作者: 花ゆき
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獣人のつがい

 あれから新居が完成し、その新築祝いに祖父が来た。ライルと祖父が鼻で匂い合って、挨拶している。犬の獣人による、久しぶりに会う時の挨拶だ。私もやろうとしたら止められた。彼の「駄目だ」の一点張りに祖父はおかしそうに笑う。今までは大丈夫だったのに。


「つがいになったから駄目だ。他の雄に近づくな」

「おじいちゃんなんだけど」

「駄目だ」

「リーシャ。それがつがいというものだよ」


 ライルはうんうんと頷いている。その様子に祖父はまた笑い出す。


「それで、子どもはいつかの。わしと婆さんが出会ったのは花祭りの日だったな。しかし、やっぱりライルとリーシャがくっついたか。わしには婆さんしかいないように、お互いの唯一になったんだな」


 顔をくしゃりと歪めて笑う祖父から、年数分の重みを感じた。そんな祖父の耳飾りは色違いになっている。左は祖母の瞳と同じ灰色が揺れ、右は祖父と同じ色の深緑が揺れている。祖母が亡くなった時、形見としてつけるようになったのだ。そうしている獣人も多いと聞くが、祖父の深い愛情が感じられた。


「リーシャは俺にとって、幼い頃から見定めてたつがいだ。リーシャの代わりに、もらったぬいぐるみを甘噛みするくらい俺はリーシャしか見てなかった」

「そ、それであのぬいぐるみ、あんなに汚れてたの?」

「幼い頃は、よく分かってなかったんだ。だからぬいぐるみばかり噛んでた」

「でも、私にも無意識に甘噛みしてたよね」

「それで気づいたんだ。リーシャに甘噛みしたいってことに」


 ライルの熱い目に縫いとめられ、じっと見つめ合う。そこで、ハッハッハと笑い声がした。彼と二人して祖父の存在を思い出す。


「じいにあてつけてどうする。ライル、つがいをどんな時も守り抜くのが雄の役目だ。実際、わしは婆さんを守り通した。死からは守れなかったがの。ライル、お前も雄なら分かるな」

「おう。俺のすべてで守り抜く」


 ライルが決意を秘めた目で見つめてきた。胸が熱くなる。その気持ちが伝わればいいと思い、そっと彼に寄り添った。


「リーシャも、ライルをよく支えてやれ。雄は惚れたつがいにはとことん弱いから、尻に引くといい」

「それはじいさんのことだろ」

「これ、ライル!」


 軽口に思わず笑うと、つられたかのように祖父とライルも笑った。


「うん、私だってライルのつがいだもの。これからずっと一緒」


 手を絡め合わせると、手のひらに彼の肉球の弾力が伝わる。ライルは感極まったのか、鼻息荒く抱きついて体に匂いをすりつけ始めた。彼の肩越しに見える祖父は、髭を撫でつけて笑っている。私は顔から火をふくかと思った。


「もう、ライル! おじいちゃんの前でしょ!」

「これは子どもが生まれる日も近いかもしれんのう」




 後日、新居に気の早い祖父から赤ちゃん用の家具一式が届くことになる。手紙には『楽しみじゃのう』と書いてあったが、気が早すぎると思う。さらにそれを知った両親が、赤ちゃん用の服と赤ちゃん用の日用品を送ってきた。手紙には『楽しみだわ、ウフフ』とある。わざとに違いない。それでも、私にこんな暖かい家族が出来たことが嬉しくて、ライルの耳に甘噛みして感謝の気持ちを伝える。


「ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」


 左耳に優しく彼の犬歯が触れた。

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