獣人の耳飾り
本日二回目の投稿です。
ライルとリーシャは宝石店にいた。婚姻の証である耳飾りをお互いの目と見比べながら、時間をかけて選んでいる。なんでも、少しでも色が違うだけで夫婦喧嘩になると聞いているので、二人して慎重だ。
ライルが碧色の宝石を私の目元にもってきて、確認している。何だかくすぐったい。ライルにも深緑の宝石をもっていって同じようにしたら、少し照れたようだ。シッポがそわそわ揺れている。お互い耳飾りを選び終わった。ライルが碧色の宝石のついた耳飾りを私の手にのせた。
「リーシャのつがいだって印だ。耳飾りにはリーシャの名前が刻んである。リーシャがつける耳飾りには、俺の名前が刻んである。世界に一つしかない。俺とリーシャみたいなもんだ」
「うん、大切にするね」
「つけてくれ」
ライルは私がつけやすいようにかがんでくれた。両耳につけると目がキラキラと輝き、ぱたぱたとシッポが揺れる。次はライルが耳飾りを手にした。私は耳飾りがつけやすいように、髪をよける。ひんやりとした金属の感触がするんだろうなと身構えていたら、耳たぶをライルに甘噛みされた。
「こら、ライル!」
「もっとリーシャに俺の匂いつけないと。あぁ、初夜が今から楽しみだ。早く夜になればいいのに」
「耳飾り、自分でつけちゃうけどいいの?」
「だめだ。俺がつける」
彼の手が耳たぶをなぞって、耳飾りをつける。かすかに首筋に手が触れ、ゾワッとなった。思わず睨む。その反応すら彼は喜んでしまう。
「今までアピールしても伝わらなかったから、反応してもらえるのがこんなに嬉しいとは思わなかった」
体を擦り付けるようにぎゅっと抱きついてくる。リーシャちゃん、リーシャちゃんと背中を追ってきた子は、私をすっぽりと抱きしめてしまえるほどに大きくなった。大人しくされるがままにしていると、彼は満足したように笑った。
「うん、俺の匂いでいっぱい。夜はもっといっぱいマーキングするから」
「私は?」
きょとんと頭を傾げるライル。伝わっていないようだ。クスリと笑って、もう一度言う。
「私もライルに匂いつけたい」
目を丸くして固まっている彼の太い首に腕を回して、すりすりと体をなすりつけた。うまくいっただろうか。彼に問うように見上げる。
「私の匂い、ついた?」
「ついた……けど、刺激強すぎて、……はぁっ……その、ヤバい。落ち着くまで、このままでいさせてくれ」
彼の荒い吐息と、落ち着かない心音を聞きながら、熱が移ったかのように火照る体を二人して落ち着けた。それは耳飾りを交わした日のこと。