7話 おや、すみー
「そう言えば、荒谷はなんで【うずまき】の外に出ていってた、んですか?」
「何だそのとってつけた敬語は。……お前、この辺りの海についてどれくらい知ってる?」
荒谷による演奏会もつつがなく終了し、僕と荒谷は飲みながら話をしていた。僕が飲んでるのはコーラだけど。
で、酒に強いのか、荒谷は少しも酔った様子を見せずにそんな事を言う。
「いや、綺麗な海だなー、って事くらいしか」
「だろ? 俺より長くここにいるクオンもそうだ」
なん、だと?
猿渡さんとお揃い、とか言われたら何か嬉しくなっちゃうだろうが!
「だから、何でこんな場所に【うずまき】があるのか、とか調べてるんだよ」
「……荒谷って見かけによらず真面目なんですね、見かけによらず!」
「喧嘩売ってるんだよなソレ?」
「ねぇー、楽しく飲んでるところ悪いんだけど、片付けて寝ちゃいたいから早く済ませて貰えるー?」
と、店の奥から響いてくる声。
でも。
「おぅ!」
「死ぬ! 酒のイッキ飲みは死ぬから!」
良い子も悪い子も普通な子も、イッキ飲みはしちゃあかんて!
……って、あれ。
「これ、どこで寝れば良いんだ?」
ぐるり、見渡してみる。
7つくらいあるカウンター席。
4人掛けのテーブル付たたみ。
と、店の奥。
それだけ。
「あ? 雑魚寝に決まってるだろ」
と、言いながらたたみの上に寝転がる荒谷。
まぁ、確かに【うずまき】は(何故か)暑くもなく寒くもないから、布団がなくても風邪を引いたりはしなさそうだ。
だから、荒谷が布団をかけずに寝ても大丈夫だろう。馬鹿は風邪を引かないらしいし。
「表出るか?」
「遠慮しておきます」
でも。
雑魚寝、と言うと。
「……電気、消すわよぉー」
と、猿渡さんの心底眠そうな声が響いているのをバックに、僕の思考は革命的真実に辿り着く。
――猿渡さんと、同じ空間で眠る、と言う事なのか!?
そりゃまあ、布団は違うんだろうけど、一つ屋根の下で猿渡さんと(まあ、荒谷も居るんだけど)!?
やはりこれは年上にリードされちゃうアダルティな展開が来ちゃうのか!?
って言うか猿渡さんって寝巻きどんなんなんだろう。
ネグリジェ? くまさんパジャマ? キャミソール? タンクトップ?
……とか何とか脳内で漏らしている時。
「おや、すみー」
その声の直後、猿渡さんの寝巻きを確認すべく、視線を向けて。
「って仕事着のまま!?」
カチャ、と電気が落とされる。