1話 【うずまき】
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「れ、ほほはひっはいほほらんれすか」
「言いたい事は分かったから、まずは唐揚げを飲み込んでくれない?」
ごくん。
「『で、ここは一体どこなんですか』、か。……さっきも言った気がするけれど、信じて貰えなかったのかしら?」
「そりゃあ、あんな冗談を信じるわけには、ひははいひゃないれふか……」
「うん。話しながら頬張らないで?」
もぐもぐ、と目の前に置いてある皿から取り上げた唐揚げを頬張りながら今日の行動を振り返ってみる。
「話す事よりも食べる事を優先するのね……」
まず朝起きて、歯を磨いて、顔を洗って、朝食を食べて、二度寝して、起きて、財布と鍵だけ持って寝ぼけ眼を擦りながら近所の本屋に向かって。
気付いたら、この居酒屋――【うずまき】の前に居た。
見渡す限りの青空と海。そんな日本離れした景色の中にこの居酒屋はあった。
正直に言おう(脳内だけど)。意味が分からない。
勿論、唐突にそんな事になったらついていける訳もない。思わず頭痛が始まるレベルだ。
で、店先で唖然呆然としていたら、先ほどから僕に話しかけている女性――【うずまき】の女店長・猿渡久遠――に声をかけられ、入店して。
持っていた財布と鍵をいつの間にか落としていたらしく、無一文な僕に唐揚げ定食をタダで出してくれて。
それで今に至る。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
ぱんっ、と両手を鳴らしながら言う僕に返ってくるそんな返答。
で。
そんな事はどうでも良くって(いや、食への感謝がどうでも良いわけじゃないですよ?)
「ここは何処なんですか?」
そう聞く僕に。
「現世と冥界の狭間。簡単に言っちゃえば生死の境、ってトコロね」
猿渡さんは、そう返す。




