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初恋ショコラ

彼がアイドルになった理由~強引な彼と初恋ショコラ

作者: 浅葱

「強引な彼と初恋ショコラ」(短編)の続編です。

読まなくてもわかるように書いてますが、読んでいただいた方がよりおいしいかもしれません。

「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?」


 最近よく流れるコンビニスイーツ『初恋ショコラ』のCMを見ながら、


「で、どっちが好きですか?」


 真顔で隣の家に住む幼なじみの妹に聞かれた。途端芹菜(せりな)は石のように固まる。


「……え、ええとなんのことかしら……?」


 妹は3つ年下の中学2年生。彼女はわざわざコンビニで『初恋ショコラ』というチョコレートケーキをお土産にやってきた。

 どうにかそう返した芹菜に、


「やだなぁ芹ちゃん、お兄ちゃんとのことに決まってるじゃないですか!」


 妹は明るくそう言ったのだった。



 発端はこの『初恋ショコラ』である。

 このCMに出ている人気アイドルグループ『デュオ』のメンバーの1人が、なんと芹菜の隣の家に住む幼なじみなのだった。

 芹菜と同い年の彼はある日ふらりと『初恋ショコラ』を持参して彼女の家に上がり込み、ケーキを食べさせたかと思うといきなり恋人宣言をして戸惑う彼女をおいしくいただいてしまったのである。

 そして彼はとうとう「ショウのキスの方が好き」と芹菜に言わせてしまったのだ。


(そりゃあショウのことは好きだけど……)


 あんななし崩し的なことは望んでいなかった。

 芹菜は甘い物が苦手だ。それはショウも知っているはずなのに、あの日彼は『初恋ショコラ』を持ってきた。

「芹菜に俺とのキスの方が好きって言わせたかった」

 そんなことを言って彼女を身悶えさせたショウは悪魔だと芹菜は思う。

 大体アイドルが恋愛なんて御法度じゃないのかと言えば、リーダーはデビュー前から同棲している彼女がいるのだという。

「俺ら生まれた時からの幼なじみじゃん。今更疑う奴なんていねーよ」

 確かに、彼はアイドルとしてデビューする前から芹菜にかまい倒していた。彼女も幼なじみの気安さでそれを容認していたし、たまにショウの妹と3人で遊びにいくなんてことも普通だった。

 確かにショウと恋人になったとしても表向きの生活は変わらないだろう。誰も2人が付き合い始めたなど信じないに違いない。


 けれどそれはそれで複雑なのだ。


 表沙汰にできない関係が続くのだろうか? なし崩し的にショウと関係を持ってしまったがもし2人の関係が破たんしたら……。

 芹菜はとても不安だった。


(ショウの馬鹿。なんでアイドルになんかなっちゃったのよ……)


 ずっとただの幼なじみで、その延長線上で恋人になったならきっと薔薇色だったのになんてやつあたり的なことを考えてしまう。


「……いうわけで、芹ちゃんも今夜遊びに行きましょう!!」


「……は?」


 芹菜が物思いにふけっている間に幼なじみの妹の中で何かが決まってしまったらしい。


「もー、芹ちゃん聞いてなかったんですか!? だーかーらー、今夜は遙先輩たちと一緒に遊びに行きましょうって!!」


 そう言う妹の手にはケータイ。

 勝手に芹菜の友だちに連絡を取って遊びに行くことにしてしまったようだ。


「え……でも遙のうちは確か門限が……」


「夕奈先輩んちにお泊りするんですー」


「はぁ……お泊り、ね」


 芹菜は脱力した。同じクラスの遙と夕奈は同じ学園の中等部に通っているショウの妹とも面識がある。

 芹菜とショウは高等部から入ったが、遙、夕奈、ショウの妹は中学受験で入っているのだった。

 夕奈の家は両親が共働きの上放任主義だということで、たまに泊りに行っている。


「じゃ、5時にN駅で~」


 彼女はそう言うと自分のお皿だけさっさと片付けて帰ってしまった。

 もしかしたら今夜ショウとの関係を問い詰められるのかもしれない。芹菜はため息を一つつくと、残った初恋ショコラを食べ終えてから親に今夜友だちの家に泊まることを言いに行った。



-N駅前


(家が隣なんだから一緒に来てもよかったんじゃ?)


 そんなことを思いながら、芹菜はボストンバッグを持ってショウの妹を待っていた。支度をしている時わざわざ電話がかかってきて、めいっぱい可愛い格好をしてきて下さい! と言われたからもしかしたらクラブにでも行くのかもしれない。

 高校生だとバレないように大人っぽい格好をしてきたがどうだろうか。

 待つこと10分。

 芹菜は首を傾げた。

 何かあったのかとケータイを取りだした時、


「ごめん、遅くなった」


 芹菜は目を見開いた。

 サングラスをかけていても誰だかわかる。


「……え。なんで……」


「午後で上がりだったんだ。どうしても一緒にいたかったから頼んだ」


 そう言って彼は芹菜の肩からボストンバッグを取ると、片手で彼女の手を掴み歩きだした。


(信じられない……)


 タクシーに乗って連れていかれた先はシティホテルだった。


「荷物を先に置いてから食事に行こう」


 言われるがままに荷物をホテルの部屋に置き、まだ時間が早いからと部屋のソファに腰掛ける。

 芹菜は何を言ったらいいのかわからなかった。

 遊びに行くというのは口実で、夕奈の家に泊まるというのも嘘だったのだ。

 わざわざ妹に根回ししてまで芹菜と一緒にいたかったというのは嬉しいが、なんでこんなこそこそしないといけないのだろう。


「ティーバッグで我慢しろよ」


 そう言って紅茶を入れて持ってきてくれたショウを芹菜は睨みつけた。


「……なんでアイドルになることにしたの?」


 ショウがアイドルじゃなければもっと堂々としていられるのに。

 そんな理不尽なことが頭の中をぐるぐる巡ってつい口から出てしまった。

 ショウはそれに目を見開き、頭をかいた。


「……って、なんだよ。やっぱ覚えてないんじゃん……」


 ぼやくように言われて芹菜は俯かせた顔を上げる。ショウが隣にどっかりと腰掛け、芹菜の顎をクイと彼の方に向けた。


「芹菜が言ったんだろ。将来アイドル歌手のお嫁さんになるの、って」


 反対に睨まれて芹菜もまた目を見開いた。


「……え?」


 そのまま抱き寄せられる。ショウの胸に埋もれて顔が見えなくなってしまった。


「小学生の時芹菜が言ったんだって! だから……」


 芹菜は混乱しながらも小さい頃の記憶を辿った。


「……確かに、言ったかも……。え、でもまさかその為に……」


 抱擁がきつくなる。


「そのまさかだよ、悪かったな! ……あーもうむかつく……」


 信じられない。

 そんな、小学1年か2年の頃に言った夢をかなえようとするなんて。


「ぷ……くくっ……ばっかじゃないの……!!」


 思わず芹菜は笑ってしまった。

 顔は整っているくせに、芹菜よりも勉強もできるくせに。


 ショウは馬鹿だ。


 そんなに昔から芹菜のことを想ってくれていたなんて。


「あー、どーせ馬鹿だよ。……夕飯あとでいいな」


「……え?」


 笑いすぎて力が抜けている状態で、芹菜は抱き上げられた。


「むかついたから抱く」


「え? え?」


 どうしてそうなるのだろう。

 抵抗する間もなくダブルサイズのベッドに下ろされる。


「ま、でも少なくとも芹菜は俺とのキスが好きだもんな?」


 そんなことを囁かれて口づけられたらもう何もできない。

 だって。

 芹菜もずっとショウのことが好きだったから。


 そうしてまた芹菜は、まず自分がおいしくいただかれてしまったのだった。



LOVE LOVE HAPPY END.

とりあえず2人の恋の話はこれで終りです。

超ベタな展開のベタな話を勢いで書きましたがなかなか楽しかったです(笑)

お誘いありがとうございました。


シチュのリクなどありましたら、どうぞ。

萌えたら亀の歩みで書くかもしれません(予定は未定

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイドル幼馴染の妹、グッジョブです!素敵なお話ありがとうございました♪ [一言] 自身の異性幼馴染、鼻たれ悪たれのイメージが強すぎて恋愛感情とかありえないな~だからこの二人、羨ましいのか……
[良い点] ほのぼのとしながらも最後は少し大胆できゅんときました。こういう普通のカップルもいいですね。さすが恋愛小説の魔術師の浅葱さんです。 [一言] もしちょっと鬼畜な魔王と人間の女の組み合わせで浅…
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