叶うはずのない恋
嫌だった。
うちは、ううん。私は、いつも、自分の気持ちを隠して接するのが嫌だった。
それはなんだか、とても悪いことをしているようで
それはなんだか、みもりんのことを騙しているようで
私は、みもりんが好きだ。
なぜ、好きになってしまったんだろう。それは、入学式まで遡らなければならない。
「痛ったぁ!」
私は入学式当日、体育館の前でつまずいて転けてしまった。
「ねぇ、大丈夫?立てる?」
誰かに声をかけられた。
「う、うん。ありがとう。」
え、めっちゃ可愛い。この子
「良かった。私たち同じクラスだから、これからよろしくね。」
「うん、よろしく。」
入学式の時、私はろくに先生の話を聞かずに、さっきの子だけを考えていた。
あの子、すごく可愛かったし、優しかったな〜!
あの子の名前なんて言うんだろう?
入学式が終わり、教室に向かった。
私は自分の席についた。
さっきの子、どこにいるのかな〜?
私はキョロキョロして探した。
いた!1番後ろの席だ!
「はい、そこ〜。キョロキョロしないよ〜。」
先生に注意されてしまった。
「皆さん、ご入学おめでとうございます!明日からの予定をお伝えしますね。明日は4時間授業の給食なし。4時間、フルで自己紹介やレクリエーションをするので、楽しみにしていてください!じゃあ、今日はさようなら!」
そう先生は言い、クラスの人たちは帰って行った。
さっきの子が帰ろうとしていたので声をかけた。
「あの!さっきはありがとう。」
「え、ああ。大丈夫だった?」
「うん!その、お名前教えてくれる?」
「私の?私は三森沙月、あなたは?」
「私は内山由花。よろしくね。」
「うん!よろしく!由花ちゃん!」
え。由花ちゃん?え、嬉しい。私、小学校で友達が少なくて、そんな、ちゃん付けされなかったのに。
私はこの時には、もう彼女の魅力に惹かれていた。
家に帰ってからも彼女の顔と声を忘れることができなかった。
それから、私は、沙月ちゃんと、ずっと一緒にいたくて、よく話しかけに行っていた。
そんなある日、私は沙月ちゃんにこんな相談をされた。
「由花ちゃん、私、好きな人ができたの。」
え………
「へぇ〜、誰?誰?」
私は興味津々に聞いているフリをした。でも、心の中では悲しみがあった。
沙月ちゃんが誰かに取られてしまう。そうしたら、私は……
「ふふっ、それは教えない!」
彼女はいたずらに笑った。
ああ、彼女のこの笑顔は私だけのものにしたい。
その願いは叶うことがないのに…
私は沙月ちゃんが好きだった。
恋愛感情としても、人としても、好きだった。
私は、入学式の時に彼女に一目惚れをした。
彼女は私が持っていないものを持っている。
それが、羨ましかった。
私は、彼女の恋愛を応援したい。それでも、彼女を誰のものにもしたくない。
その後、沙月ちゃんは付き合った。
相手は2年生の先輩だった。
私は、嬉しさと同時に悲しさがあった。
でも、沙月ちゃんの恋愛を応援したかった。
でも、沙月ちゃんは……
この時にはもう、あの男に騙されていた。
(1話 完)
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