第3話 すでに詰んでるんですけど
アンナさんが、心配そうに、でもやっぱりどこか感情の薄い声で話しかけてくる。
「だ、大丈夫……じゃないけど、大丈夫……」
支離滅裂。そりゃそうだ。こんな状況で冷静でいられるわけがない。
というか、問題はそこじゃない。もっと深刻なのは……
「お嬢様、本日はアステリア魔法学園の登校日でございます。朝食の後、準備を整えませんと」
アステリア魔法学園。
ゲームの主な舞台になってた、あの学園。
カミラは公爵令嬢だから、当然のようにその学園に通ってる。そして、そこでヒロインのリリアンヌちゃんに、数々の嫌がらせを働くんだよね……
「……あの、アンナさん」
「はい、お嬢様」
「私……昨日、夜会で何か……やらかしたり、してない、かな?」
恐る恐る尋ねると、アンナさんは少しだけ、ほんの少しだけ眉をひそめた。
「……昨夜の夜会では、特にいつもと変わらぬご様子だったかと記憶しておりますが。リリアンヌ様が、アルフレッド王子と楽しく談笑していた際、お嬢様が『平民風情が気安く王子に話すな』とおっしゃって、リリアンヌ様がお持ちだったグラスのワインを彼女のドレスに『手元が狂った』とおっしゃいながらかけられていた程度でございます」
程度でございます、じゃねーよ!!!!!
がっつりやらかしてるじゃん! 超弩級の嫌がらせじゃん!
もうダメだ。私がこのカミラ・フォン・エルヴァーンの意識を取り戻した時点で、すでにいくつかの「やらかし」は完了済み、と。
詰んでる。完全に詰んでる。
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