第2話 私が、あの悪役令嬢!?
きらびやかなドレス、嘲笑うような自分の声、怯えた顔の女の子、冷たい視線を向ける王子様たち……
『クリスタル・ラビリンス』
そう、それは私が前世でハマっていた乙女ゲームの名前。
そしてカミラ・フォン・エルヴァーンっていうのは、そのゲームに出てくる悪役令嬢の名前だ。わがままで傲慢で、ヒロインをいじめ抜いた挙句、最後にはざまぁな目に遭って断罪される、テンプレ通りの悪役令嬢。
うそ、でしょ……?
私が、あのカミラに……?
ガバッと勢いよく起き上がると、頭がクラクラした。でも、そんなこと構っていられない。
部屋の隅にある大きな姿見に駆け寄る。そこに映っていたのは……
「……っ!」
息をのむほどの、美少女。
絹みたいに艶やかな金髪が、腰下あたりまで緩やかにウェーブを描いている。大きな瞳は、まるで最高品質のサファイアみたいな綺麗な青色。透き通るように白い肌に、くっきりとした目鼻立ち。我ながら、じゃなくて、この体ながら、まさに「絶世の美女」って言葉がぴったり。
でも、その顔は、間違いなく、私が何度もゲーム画面で見てきた、あの悪役令嬢カミラ・フォン・エルヴァーンの顔だった。
しかも、なんていうか、こう、目つきがキツい。育ちの良さからくる気品みたいなものはあるんだけど、それ以上に「性格悪いです」って顔に書いてあるような、そんな印象。
「あああああああああああ……!」
心の中で絶叫。いや、ちょっと声に出てたかも。
よりによって、カミラかよ!なんで!どうして!
私がプレイしてた時なんて、「うわー、この悪役令嬢、ムカつくなー。早く断罪イベント来ないかなー」とか思ってたのに!そのムカつく悪役令嬢に自分がなるなんて、どんな罰ゲーム!?
いや、待って。そもそも私、どうなったんだっけ?
最後の記憶は……そうだ、雨の日。いつものように俯いてトボトボと学校から帰る途中で、信号無視のトラックが……
あ、なるほど。私、死んだんだ。現代日本で、十六歳の、友達もいない内気な女子高生として、あっけなく。
そして、気がついたらこの乙女ゲームの世界に、悪役令嬢カミラとして転生してた、と。
ありがちだけど、ありがちだからこそ、絶望感が半端ないんですけど!
「お嬢様? いかがなさいましたか? お顔の色が優れませんが」
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