第1話 豪華な天井と無表情なメイド
「うわっ…!」
短い悲鳴を上げたような気がする。
実際には声になっていたのかどうか。
目の前が真っ白になって、衝撃と、あと、なんだっけ。
なんかこう、鉄っぽい匂いがしたような……
で、次に意識がはっきりした時、私はふかふかのベッドの上にいた。
え、天国? いや、にしてはなんか、やけに豪華すぎない?
レースとかフリルとか、一体何事?
「……ん?」
重たいまぶたを無理やりこじ開けると、視界に飛び込んできたのは、見たこともないゴージャスな天井。
え、なにこれ、シャンデリア? 本物の?
混乱する頭でゆっくりと状況を確認しようと、体を起こそうとしたんだけど……
「お目覚めですか、カミラお嬢様」
凛とした、でもどこか冷たさを感じる声。
え、誰? カミラお嬢様? 人違いじゃ……
声のした方に顔を向けると、そこにはメイド服を着た女の人が立っていた。年は私より少し上くらい? 綺麗だけど、なんかこう、感情があんまり読み取れない無表情系美人。
ていうか、メイド服って。コスプレ? いや、この部屋のリアルな豪華さからして、本物っぽい。
「……あの、ここは?」
掠れた声で尋ねると、メイドさんは眉ひとつ動かさずに答えた。
「エルヴァーン公爵邸、お嬢様ご自身の寝室でございます。昨夜、夜会からの帰りにお疲れだったのか、自室に戻られてすぐに休まれましたので、わたくし、アンナが様子を伺っておりました」
エルヴァーン公爵……? カミラお嬢様……?
なんかその単語、聞き覚えがあるような……いや、ある! めっちゃある! まずい、すっごくまずい記憶と繋がってる気がする!
ズキッと頭の奥が痛んだ。断片的な記憶が、洪水みたいに流れ込んでくる。
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