柵と塀 その2
事情を話して「そんなことがあったんだね」という流れが終わると、ケナが聞いてきた。
「これ、全部、どうやって使うの?」
それらはこういうものだった。
ユズト式狙撃手袋
:警察やジオガードが使うものと使い方は同じ。
剥がし液
:貼ったシールと場所を何も貼っていない状態に。瓶に入っている。
瞬完成天火
:中に入れたものを、スイッチを押して5秒で完成状態に。
未糊化棒
:この棒で念じてなぞる。既にくっ付いたものを糊未使用の状態に。
包丁研置き
:礎力を込めれば、置いた包丁をよく切れる状態に。
直寝アイマスク
:装着して礎力を込めたらすぐ寝れる。
別見アイマスク
:同色二つセット。着けて礎力を込めたらもう一方の視点を見られる。
手拭柔机
:バリバリになったりしたあとのタオルもこれでふんわり。
完全詰替お盆
:トレイの上に使いたい容器と詰替えパックを置き念じる。入れ残しナシ。
瞬間掃除機
:先が触れた所から数メートルを半径とした球状に作動。一瞬で綺麗に。
瞬間充電器
:これに繋げたケータイや電池の充電状態をすぐに十分な状態に。
瞬間食洗機
:礎力を込め、スイッチを押すだけで、中の食器はすぐに綺麗に。
瞬間空冷機
:礎力を込め、スイッチを押すだけで、その部屋をすぐに涼しく。
瞬間乾燥機
:礎力を込め、スイッチを押すだけで、中の衣類はふんわり乾いた状態に。
瞬間画鋲
:壁に押し付けた紙に向き、礎力を込めると、すぐにまっすぐ刺さる。
埃取り箪笥
:箪笥の上に置いたものに着いた埃を、引き出しに全て瞬時に送り込む。
泥汚れ取り敷革
:この敷革の上に置いた衣服や靴の泥汚れを取り近くの地面にまとめる。
割れた皿を直す台
:礎力を込めると、この台の上に置いた皿は直る。
主人の礎力で開く扉
:手が塞がっても開けられるから楽。礎力込めで使用者を登録追加可能。
一時停止指輪
:礎力を込めると飾り石から黒と白の螺旋の線が出る。当たると一時停止。
派生技付与電流輪投げ
:輪投げに成功すると電流が流れるが派生技が付与される、最大四個。
焦物復活箪笥
:焦げた物を箪笥の上に置き念じると引き出しに移動。復活して出てくる。
木の棘を出すラップ
:刺さった患部を覆って念じるとラップの外に木のトゲを取り除ける。
地図点移筆
:正確な地図にこのペンで点を描き念じるとそこへワープ。点は消える。
余水吸石
:念じると半径四メートル球内の余分な水分を石が吸う。乾かして使う。
薪割り手袋
:この手袋をして作動させて振り下ろすと薪を割れる。毎回礎力を込める。
凍らせコップ
:念じると中の液体が一瞬で凍るアクリルグラス。
上り坂を下る自転車
:ハンドルに礎力を込めると下る時のように楽になる。再度込めると解除。
礎力分与帯
:この包帯で自分と相手の腕等をまとめて巻き念じると礎力を与えられる。
服色変え色彩表
:服の色を変えられる。
瞬間盾化外套
:ボタンがありコートにも見えるが、それを外し念じれば一瞬で眼前の盾に。
戻しハンマー
:打たれた釘にハンマーの平らな面を付け念じたまま引くと釘を抜ける。
保護音声仮面
:念じると保護音声に。時間切れ数秒前に後頭部の留め具がピーッと報せる。
電撃折り畳み傘
:柄を持ち柄から先まで満たすように念じれば二秒後先から電流を迸らせる。
「粗大ゴミなんかを使ったヤツもあるけど……汚くはないからね」
ドアやら大きな物に関しては運ぶ際にゲートを通して見せたが、それらはすぐに引っ込めた。レケの家のリビングに無遠慮に置きたくはなかったからで――
それほど大きくないものでも大量にあるのを見て、説明を聞いた上で、みんなは目を丸くした。
「いや、やっぱさ、このくらいのものを失敗せずに、連続で、何十個と作れないと、時空ジャンパーなんて無理だぁ――って思ったからさ」
「なるほどそういうコトね……」ジリアンが頷いた。「戻って来れたのも当然だし、この状況になるべくしてなってるんだね」
「だといいけどね」
と僕が言うと、『え、なんでそういう顔?』と言いたげな顔を、ケナが僕に向けた。
「や、だってさ、もし時空ジャンパーを作ったのが僕じゃなかったら。僕が戻れない未来はありえたんだよ。頑張った甲斐あったねとは思うけど、心細かった。……でも、できると最後は信じるしかなかった。信じてよかったよ、ホント」
「私たちも。ユズト様が戻って来られて……嬉しいです」
ベレスが――何か噛み締めるように頷いた。
……僕も、戻れて嬉しい。
レイシーが死んだと思っていたから心配なんてしていなかったけど、これで本当に心配の必要はなくなった。レイシー改めエリージャの元部下についても心配の必要はなさそうだ。
そして数日後。
任務をこなした。
コンビニ強盗を繰り返したゲート能力ナシの逃亡犯を追い、逮捕するという任務。
犯人が現れたコンビニで、まず依頼者の警察官が中から威嚇し、逃げた犯人を安全に逮捕できるように持ち込む。そういう話になった。
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「ケナの方に逃げた!」
逃走経路の路地を幾つか塞いでいた。犯人の逃げた先に、巨大化した消しゴムの壁ができ上がった。報告したおかげで通せんぼできたみたいだった。
白く延長したゴムでできた塀に、犯人も驚いたようだった、そこへすぐに、後ろから追ったあたしがスタンリップで痺れさせ、押さえ付けて――
あとから犯人の位置に来たレケの絞り袋で、犯人は腕を縛られ、拘束パーカーをすぐ着せられた。
「よしいいぞ!」
とレケが言って、それから白い壁がなくなって……警察に明け渡して任務完了、と思ったその時だった、ケナが妙に甲高い声を上げたのは。
「ねえ! 見て! 見て! ユズト!」
ケナがどうしてそう言うのか、あたしには解らなかった。けれど、ユズトは違ったみたい。
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違う道を塞いでいた。報告があって現場に向かった。
そこで一瞬驚いた――のは、逮捕についてのことではない。
でも、これも当然だなとも思えた。大人よりも子供の方が礎術の練習に割ける時間があるとは言える、たとえば大人が運転中でもケナは練習できる。
ケナのそばに、木の精霊のような存在がいる。
白い羽。嘴と目と足が紫。そんな大きな鳥。
よく見ると、ケナの右鎖骨の辺りに、あれに似た紋様が。
「凄いな、もう宿せたのか」
「ね!」――凄い喜びようだ。
『解っているとは思うが、忘れているかもしれんので念のため自己紹介しておく。私は神木霊獣、その一体だ。私をほかと区別するために、さあ、名をくれるといい』
大きな鳥は、ケナの方を向いて嘴で示した。
「じゃあ……! んーと、んーっと」
ケナがあごに指を添わせて考えた。
「ダダ……ダダにする」
「ダダか……ダダ……うん、いい名前」
僕がそう言ったあと、この事態を把握したジリアンも。
「凄いねケナ、あたしたち四人の中で一番乗りだよ」
「えへへ、それほどでも」
ケナがジリアンに向けて笑った。ジリアンもくすくすと微笑んだ。それからジリアンは何かに納得したようにほっこりした顔を見せた。
自然と僕の口角も上がった。
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