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星のバラスト  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)


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058 家族①

 廃工場から南への探索。

 ただ探し物を見付ける能力による赤と黒の螺旋(らせん)の柱を目印として探して、それが見付からない。どんなに南を探しても。見付からない。なぜ。

 工場に戻り、南東の都市へ向かった。白と黒、黄色と黒の螺旋の柱が目印としてどこかに見えるはずだった……が、そのどちらも、途中にも都市部にも見えなかった。


 ――なんで……


「少し休憩しようぜ」


 グルーシュさんが言った。それに対して誰も拒否なんか示さなかった。

 みんなでレストランに入った。


「どんな可能性がある?」


 体力が必要ということでテーブルに緑色のパスタなんかが並んだ。

 あまり食べる気はしなかったけど、それでも活力のためにという想いはあった。みんなもそうかもしれない。

 少しずつでも食べ、口が開いている者が話した。

 最初はさっきのイルークさんの声。対してジリアンが言った。


「地球へ?」

「いや、それならリンクゲートへ光が飛ばないと」答えたのはレケ。

「東に?」と再度ジリアン。今度はイルークさんが――

「ああ。ただ、あの場所から東へは飛んでないから違う」

「じゃあ礎球(そきゅう)にいる。じゃあほかにどんな可能性が?」


 僕がそう問うと、テフォーシェさんが新たな問題を挙げた。


「そもそも、誰かに助けられて逃げたのか、自力で逃げたのか」


 少し考えた。多分……と思った時には、ヒッツモーさんの言葉が聞こえ始めていた。


「自力なんじゃないか? あ~なんというか、別の誰かが介入する時間的余裕なんてなかっただろ」

「ですよね」と僕が言うと、

「じゃあ」とジリアンが言って間を空け、また。「自力で逃げたあと誰かに助けられた」

「それでどこに?」とは、ケナが言った。

「……さあ」


 それしか言えないのが歯痒かった。

 それだけでなんで光と黒の柱が見えないのか……

 ふと、ケナが問い掛けた。


「どのくらいの距離で見えないの?」

「だいたいの都市から山を越えた先にいたりすると、その時点で見えない」


 ――以前もそれで点々としたんだっけ。


 あの頃の争いを思い出した。

 今では礎球の家族。ただ、昔からの本当の意味での家族を探すのに、引っ張り回してしまっている。ドナが協力しないなんてことはきっとない。それでもどこか後ろ暗い。


「じゃあ見えなくても結構近くってこともあるんだね」


 ヒッツモーさんがそう言った。

 その場合もっと南へ、南東へ、行けばいいだけ。その想いを確かめ、言葉にした。


「あとは行けばいいだけだ、僕は地道に探す」

「そうなると、もうドナさんはいいな」イルークさんが言い出した。「家に帰しておこう、該当しそうな場所の警察に捜索要請を出していればいい、自力で逃げたのなら――捜索されていることに気付けば、自ら警察に行くだろうし」


 最初は何を言い出したのかと思った。帰るのを決めるのはドナで、家族を探してほしいのは僕で……勝手に決めないでほしいと急に思ってしまった。でも、冷静に考えてみると一理ある。いつまでも振り回せない。


「そうですね……じゃあ、あとは何かから逃げ続けている場合や遭難も考えて、自分たちでも捜索……」

「そこの心配はあるよなあ」


 と。イルークさんが言ったあとで、テフォーシェさんが言った。


「ディヴィエナやセントリバー、フラウヴァ、ウィローフィアにも一応要請しないとな。そこらも、南東と南だ」


 ――確かに。遠いからと言って可能性がなくはない。


「じゃあ……私はこれで」


 警察にもドナみたいな人はいるだろう、今言った場所に要請を出せばそのうちの一人くらいは。そう思えたからこそ安心して送り帰せる。

 念のためリミィさんに頼もうとした、店を出てケータイを操作して……だけど、彼女は電話に出なかった。任務中か。判定能力もあれば早かったが仕方ない。

 店に戻ろうとしてからケータイが鳴った。対応する。

 あの連中の身元が判明したというカトブルック区警察からの一報だった。……番号を教えて、連絡をくれるように言っておいて、正解だった。

 彼が言うには――

 死んでいた大男の次に背が高かったリーダーの名は、ガラナウェル・コプロワータ。昔からずる賢くあらゆる盗みや殺しの組織を作っていた男。ガラナウェルのDNAは母さんの故郷を滅ぼした人物の一人のDNAと一致するらしい、そうだと解る礎術(そじゅつ)道具があるという話だった。


 ――元凶の一人を逮捕できたと知れば、母さんも少しは浮かばれる……いや、まだ死んではいない。今危ないかもしれないけど死なせない。


 スキンヘッドの大男、ノヴァイン・ヘアビガン、彼はワインやビールの瓶を操る礎術使いだった――これは役所の礎術診断椅子(デターミンチェアー)の履歴で判明――それが具体的にどんな力なのか……もう見る方法はない、永遠に。

 中肉中背の青い髪の男の名は、キヒカー・オノルクフ。窃盗、強盗、空き巣の常習犯らしい。

 薄桃肌の銀髪の男、テット・スナハリーキも大体そうで、そこに殺人も加わる可能性があると聞いた。

 ハタキでホコリを飛ばしてきた金髪の男、ダキリス・コホタハは、強盗、空き巣、暴行の前科があるという。

 薄桃肌で薄緑髪の女、レティーラ・グディンプは強盗、暴行、殺人……

 中々ガタイのいい義眼の茶髪の男、ノメリ・ワイツは、婦女暴行、空き巣、強盗、殺人……


「全員ブラックリストに載っていました。彼らはガラナウェルの部下で、そうなる前から前科はアリ。一応言われた通り調べた結果、ガラナウェルは、お母様の故郷が滅ぼされた当時、まだ若かったはずで、その時はガラナウェルたちを指揮するリーダーがいたはずだと解りました。壊滅させて自分たちだけで数人を利用しようとして……で、今は死んでいるか年老いているかのどちらか。うーん、ま、ひとまず資料によると、ガラナウェルは昔、マフィアのようなグループにいたようなので、そこから解るかもしれません」

「そうですか……貴重な情報ありがとうございます」

「……あの」

「はい」

「頑張ってください。……もう会いたくても会えない人たちのためにも」

「……ええ」


 彼らが捕まったことに何も問題がないということが判った、ついでに、故郷の事件の犯人捜しにも大きな進展があるかもという事も。あとは自分たち。


 ――自分でも辿ってみよう、何もしないのは嫌だ。


 店の中、さっきのテーブルに戻ると、みんなが『話が付いた』という顔をしていた。



 それから。

 違う探索方法を始めようとして、手掛かりがほしくて、何かないだろうかと廃工場へと戻った。

 今は自分のチームだけ。

 ドナはもう帰った、イルークさんたちに送られて。


 ――本当にありがとう。


 空へと感謝を送った。

 とにかく自分たちだけでもと、手掛かりになる物はないかと探した。

 逃げた――物探しの光が飛んだし生きている――そう知ってホッとしてはいる、ドナのおかげで。

 ただ、遭難していないとも限らない、急ぎたい。何か手掛かりがあればいいのに。

 そこでふと、自分でも探せればと思った、それも礎術で。


 ――逃げたその方向さえ判れば。ドナのように探せれば。ただ、常時見える何かであればもっといい。そういうものが見えれば……どうやって? 自分なら何で? そうだ、自分はビーズで……


 まだ使っていない色。サファイアのような半透明な青なんかが都合がよかった。色と透明度を変えてそれを手に持ってみた。

 目の前に念じて思う。それで何かできればと。


 ――これでなら……そうだ、過去の景色でも見えれば……見たい相手の動きだけでもいい、その影だけでもいい……何ならとびとびでもいい……


 大量の礎力(そりょく)を込めた。期待も大きかった。ただ、できなそうな予感もあった。

 できたとしても手掛かりに気付けないかもしれない。


 ――心配だ……頼む……頼むよ……何かを……何か手掛かりを見たい……!


 強く思うと、青く、シルエットが見えた。


 ――お、お父さん……っ?


 それっぽいシルエットが見えた。人が通れそうなほどの大きさのサファイア色のビーズの向こうに。


 ――見えた! 見えた……っ!


 興奮しながらも、その状態を維持してよく観察した。

 階段の手擦りのパイプに手首を繋げられてしまっているそのシルエットが、しばらく迷ってから、腰を必死に手擦りに引っ付け、ズボンのポケットからケータイを出したようだった。

 そして恐らく体重を掛けてスマホケースを割った。それでロープをギリギリと。


 ――なるほどそうやって……


 解放された青いシルエットは、周りの様子を確認しながら、どこかへと、忍び足で歩き出した。

 ついて行く。

 ある時、シルエットは、ある壁の小さな穴から向こうを見た。自分も確認してみたが、そこにあるのは牢屋だった。

 大男が倒れていた所……ではないかもしれない。そこへと何か話し掛けているように見える。

 最後に頷くと、南へと――森へと入っていった。


「これをずっと辿れば」


 レケ、ベレス、ジリアン、ケナを呼び、このことを話すと、それから僕は――


「一人で探そうかなと思ったけど、僕一人だと危ないのも解ってる。だからベレスと二人で探す。みんなは帰ってニュースのチェックでもして、帰るのを――僕達が帰るのを待ってて」

「任せて。念のため別方向からも探すよ」


 ジリアンがそう言って、ケナと目を見合い、頷いた。

 そこで――『ありがたいけど無理しないでほしい』という感情が湧いた。


「待ってるだけでいいよ」

「解ってる。ま、気にせず探してきなよ」

「……うん。じゃあ」


 そうして出発した。ベレスと二人で、シルエットを追った。

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