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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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  鍵を造らせる者との争い その2

 ■■□□■■□□■■□□■■


 茂みのこちらをひっそりと歩き、あの施設の東側がよく見える位置に着いた。女が東を見張っているのがよく見える。

 こちらが気付かれては……いない……よし、と思ってからシェイカーを礎物化(そぶつか)させた。そのシェイカーを巨大化させその側面をゲート化させ、女の背後に繋げ忍び寄った。ゲート化解除だけでなくそもそもの礎物化(そぶつか)解除で礎術によるシェイカーは存在自体しなくなる。

 一旦全てをオフにする方。

 これだとやりやすい。そのあとでまた礎物化(そぶつか)、巨大化。女にそのシェイカーを被せると、ゲート化させてズラした。

 シェイカーの側面がゲート化……というのは内側もだ。もし繋いだ先に野良のユニクオオカミでもいたら側面を通ってこちらに現れていたことだろう。『こちら』にいた女は『あちら』へと移動した。

 何だったらと、この近くに使われていない空き地がないかと調べておいた。戦力分断は必須になるだろうからと。ここから北西に別の廃墟がある。そこへ繋いだゲートだった。

 そのゲートを一旦消す。そしてまた出現させ、その廃墟の、屋根に出た。

 女は廃墟の前に。そこはさっきのゲート先。あまり移動せずに警戒したのか、そこにいるままで辺りに注意を払っているみたいだ。

 そんな女の前へと飛び降りた。グルーシュは特に着地の衝撃をほぼ受けない。

 そのままグルーシュが女へと飛び込んでいった。礎術(そじゅつ)による跳躍力と、カクテルによる身体強化、二つを利用し、とんでもない速度で。

 女は十数メートルほど吹っ飛んだ。その先で何とか受け身を取れたという姿勢。

 咳き込むのは聞こえた。が、まだ何かやる気らしい。

 女はこちらを睨んで――


「んだテメぇ!」


 かなり勝気に言った。そんな感想を得た瞬間、辺りが急に真っ暗になった。

 何の光もない、赤みのある日の光まで。女の礎術?

 まずい、見えなければ戦いも何も――だなんて、グルーシュなら思ったかもしれないが――俺は違うぞ。

 即座にカクテルをばら撒いた。ポケットに入っていたファイヤースターターを取り出して――その点火棒を付属のプレートで擦った。そうしたら、そこから火花が出る。

 ばら撒かれたカクテルがそれによって燃え上がったから辺りがまあまあ見えるようになった。奥に女がいるのも見える。


「あまり活用できないんじゃないか? その力」

「あんだとコラ!」


 女の方から何かが飛んできた。瞬間、手を前に差し出しシェイカーを盾に――しようとしたけど、グルーシュのショットグラスが巨大な盾になる方が早かった、助かるね。

 それで防がれた女の舌打ちが聞こえた。

 よく見て気付いた――飛んできたものが消える瞬間を見たが、女はペン型の懐中電灯、いわゆるペンライトを操る礎術使いらしい。しかも消えたということは礎物(そぶつ)。無力化は大変そうだ、大事なのは視界を奪う事になりそうだ。もしくは……

 と、そこで思い付いた。


「抵抗しなければ特別な措置をしてもいい」

「ふざけるなよ」

「じゃあどうされたって文句はないな」

「何ィ?」


 女の頭上にシェイカーを礎物化(そぶつか)させた。三つ。女をそのうちの一つのゲートで空中に移動させるとその落下位置にシェイカーを置き、女を入れた。


「くそ、ふざけやがって!」


 女は当然シェイカーを出ようとし、縁に手を掛け、ぐいっと自身を引き上げた。そこで、もう一つのシェイカーを、女の入ったシェイカーに、同じ向きで、重ねる。


「あぐっ、くそ……!」


 その時点で暗闇が晴れた。

 女は、崖に対するようにシェイカーの側面を内側から登ることもできなくなり、縁に脇を置いて出られずにもがくだけ。

 そんな女の首から上を――今いる廃墟の裏の草地に繋げた別のシェイカーの側面に『外から』突っ込む。

 そのシェイカーを回すと、女の首は転移先のシェイカーの中で――回らされた。言ってみれば、それは、バケツの内側の側面に上を向けたカメラの下部を固定し、倒してぐるぐる回すようなもの。


「うああああもうやめろおおおお」


 こんな声が聞こえたということは、こちらの狙い通りだ、恐らく目を回し、吐き気を催している。

 あとは、回したシェイカーを止め、上空へ移動させることで女の首をこちらに戻し、これらのシェイカーを全て消して尋ねるだけ。


「抵抗したら今のをもう一度やる」

「解った、解ったよ、さっさと拘束しろ」

「……よし、じゃあグルーシュ」

「ああ」

「ただし遠隔で、だ」

「お、おう」


 (うなず)いたグルーシュがショットグラスを操り、遠隔で拘束パーカーを着せていく。念のためだ。

 去年はできなかったシェイカーの遠隔操作や巨大化、礎物化(そぶつか)がここまでできるようになった。これはツァーレさんに師事したおかげ。本当にありがたい。こんな成果を出せた自分を今は誇らしくすら思う。

 仲間にもかなりの影響を与えた。拘束パーカーを着せる速さも段違い、もう終わった、以前はもっと掛かっていた。


「ふう。できなきゃ恥ずかしい所だった」

「できるって信じてたよ」

「どきっ」


 ――さてと。ユズトは大丈夫か? 一人で行かせたのは……あの顔を見て大丈夫だと思ったからだが……殺してしまったりしてないだろうな……


 ■■□□■■□□■■□□■■


 みんなが四方に向かってある程度経ち、北の見張りがいなくなってすぐ、そこへゲーティング・ブラックで移動した。

 廃工場らしきこの建物の中を探索するのは自分の担当――


 ――誰が来てもやっつけてやる。もし、少しでも酷いことをしていたら……容赦はしない。


 腰にはいつものポーチ。右手には瓶。左手には拘束パーカーを三着。想像(イメージ)から礎物化(そぶつか)させるのも視野に入れる。

 そばには、扉が外れたのか枠のみとなった入口だけがあった。

 そこから中を覗き込んで様子を見た――人の姿は見えない。

 それならと入ってみた。

 ライトが幾つかある。そこまで暗くない。

 すぐ通路があると解ってそこを進んだ。左に曲がり、広い場所に出た。背後にも警戒しながら進む……

 と、前に人がいるのが見えた。自分と同じくらいかそれより低いくらいの金髪の男。


「ジオガードだ、抵抗すると」


 その瞬間、男が勢いよく手を差し出した。

 すると何かが飛んできた、しかもあまりの速度で。

 とっさに、こちらからもビーズを。拳より少し小さい程度のものを複数――風を受けて荒れ狂う(ひょう)のように。

 叩きつけてやると、相手の何かはボロボロになってそこら辺に散り粉末っぽくなった。

 やけにホコリっぽい。

 何だ?――って思ったけど今は考えないことにして――そのままそのビーズの嵐を男に向けた。

 それを受けると、男は壁に叩き付けられてから床に顔から倒れた。その手のそばにハタキが。


 ――ホコリの塊みたいなものをこちらに飛ばした、そういう能力か。


 考えるのは一瞬だけにして周囲へと目をやる。

 誰もいない。そう解ってから、動かなくなった男に拘束パーカーを着せた。一応確認したが、息はしている。

 より身軽になったのを感じながら右奥――入口から見て左奥へと進んだ。

 そこには誰もいなかったが、進んでいるある時、横に気配が。


「ダキリス、何かあったのか」


 ――さっきの人のことか?


 声は渋い四十代から五十代くらいを連想させた。顔や高身長からの印象も何となくそんな感じだった。白染めの髪の一部が黒い。見た目も気にしているのか。


「あんたがリーダーか?」

「そう見えないか?……何の用だ」

「あんたらが捕らえた人を解放しに来た。ついでにあんたらを捕まえる」

「警察にしちゃ若いな」

「ジオガードだからね。警察に見えた?」

「ハッ。やれると思ってるのか」

「やれるね。あんたは捕まるよ」

「……ガキが。舐めるなよ」


 男の前に何かが突然現れた。灰色のキーボードみたいな……ノートパソコンと言うには少し折れ曲がり方が違うもの。その蓋のようなものが開いた所から、人がタッチすべきキーのようなものが男の更に前方に『複製』され、増えた方のキーがこちらへと飛んできた。かなりのスピード。

 こちらからも衝突させ相殺、破壊しようと思ったが、全弾を破壊となると間に合わない。

 透明なビーズを前に置き、盾にした。

 この盾に当たると複製されて飛ばされてきたキーは消えた。そして盾も当たった部分を中心に丸く削れていた。


 ――衝突部分を削る……?


 分析もほどほどに、薄くなった盾を別の透明なものと変えた。そして拳大のビーズを盾の向こうに三つ捻出し、それを放った。ただ、男も身を(ひるがえ)して()けた。幾つかは追わせたが、それを……――多分ワープロという奴だ――あれを勢いよく当てられ、三つのビーズは遠くへと弾かれた。

 その時男の声が。


「今度はその盾で間に合うかな?」


 そんな男の周りに、五つもの灰色のワープロが。恐らく礎物(そぶつ)。その蓋がそれぞれ最初から開いていて、五つそれぞれの全てのキーがその前方に漏れなく複製され――


「避けてみろ。全部飛ばす」


 先の出来事をイメージをして、軽く寒気を感じた。飛んでくるキーに、今の盾では間に合わないことを悟った。横幅、奥行き、高さをどのようにしても今この空間にある別のもの――機械なんかが邪魔だった。

 飛んでくる。だから走った。カクテルの身体強化のおかげでかなり走れる。

 ただ執拗にキーが追ってくる。

 しかも、全てが後ろから追うのではないのが対処を難しくしていた。

 ある時、前後左右、頭上、ありとあらゆる方向から攻められ――


 ――()けられない!


 怖くなるのと同時に、この瞬間が一番対処しやすいということも理解した。

 当たる直前、自分の周囲に灰色のビーズを設置。


 ――シャタリング・グレー!


 キーの全てがほぼ同時にそれを通って粉々になった。これがほぼ同時でなければ対処をされていただろう。

 ふぅ……などと一息つく暇はない。その地点から、男が見やすい位置にいる――ということを数秒前から解っていた、だからそこへ――

 体ごと急速に近付く。

 男がビクついたのが見えた。その隙を見てその頭上に礎物化(そぶつか)


 ――ホワイト!


 奴の顔を覆えば発動する。ゼロビジビリティを――

 と思ったその時だ、横から何かが飛んできた。

 横っ腹を腕で守ったものの、吹き飛ばされた。

 視界に一瞬入ったものから推測した。多分当たったのはコップ、しかも当たった瞬間そのコップから出てきたのかどうなのか、なぜか、長雨に打たれたみたいに自分が濡れていた。

 吹き飛ばされた先から辺りを観察した。床も濡れている。

 と、そこで――

 男の目の前に、青白いワープロが。


「俺なら油断はしない」


 何が起こるか解った気がした。やはりこういう組織のリーダーは格別か、とも思ったが――


「いや、してるよ、今も」


 そう言い返した。そしてさっきから消えていなかった白いビーズを奴の背後から今の頭上に移動させ、首から上を包囲した。そして今までで一番の礎力(そりょく)込め。


「くっそがあああ! クソガキィ!」


 白いだけの、何の輪郭もなくなった世界だけを、これから多分、数十分は見続ける。男の視界は終わった。

 それでも手当たり次第に攻撃される可能性はある。その証拠に奴の前にはまだ青白いワープロが浮いている。しかも、こちらがかなり横に移動したことに気付きもせずに、誰もいない方を向いてキーをタッチ――すると、そのワープロから電流が(ほとばし)った。

 何となくそういう力だと予想していた。キーに対応した座標めいた場所に向けて電流が放たれている。

 そしてがむしゃらな攻撃でも万が一がある。

 すぐに青いビーズを男の横に呼び出し、放水し、男を壁へと押しやった。すると男はこけた。これでもっと方向が解らなくなったはず。

 更に、奴の腕に通せる大きさのビーズを大量に作り出し、手足を空中で固定する。こうなるともうキータッチもできない。

 拘束パーカーが少し遠くの床に投げ出されたようになっていたが、それをビーズで運んできて着せていく。

 暴れる男の腕を折る勢いで礎力を込めると、それ以降抵抗しなくなった。

 やっと一息吐きながら。着せ終わる。

 そして金髪のさっきの男の横まで運ぶと、そこを、透き通った琥珀色のビーズによる『ウッドシリンダー』の複数を立てたもので囲い、告げた。


「動くなよ、動いて余計な所に触れたら、最悪押し潰されるからな」

「何ッ?」


 言ったのも念のためだ、この丸太はかなり太く重い、幾つも立てて囲まれていれば、縛られた人間がそこから動けっこない。

 これで自由に探索できる。

 ほかに人がいる可能性があった。それが誰であろうと見付ける、そのために様々な所に目をやった。

 手作りの牢屋らしき場所の中に来た時、目を疑った。外に向かってうつ伏せに倒れた大男が、血溜まりの中で夕陽を浴びていた。

 駆け寄った。

 仰向けにして首に手を当て、息を確かめた。


 ――死んでる。いったい何が。


 それからも探した。その瞬間は、今日で一番急いでいる気がした。

 必死に探したが――廃工場のどこにも姿がない。見付からない。どこにも。


 ――なんで……


 そこへ足音が。自分のチームやイルークさんのチーム、それとドナだった。


「ドナ、僕の家族だけがここにいない、探してほしい」

「任せて」


 白と赤と黄色の光が飛んだ。その方向は……白と黄色が南東、赤が南。


「なんでこんなことに」


 ジリアンが呟いた。そこでベレスの声がした。


「探しましょう」

「そうか」僕は考えを声にした。「逃げたんだ。ただ逃げたんだ。でもこのままじゃ、遭難する可能性が……。ドナ、正確に探せる?」

「それが……空にあの柱が見えないの」

「え?」

「多分、凄く遠くに行ってしまってる。……探しに行ってもいいけど……」


 ドナの視線は様々な所に向いた。

 まずは連中をカトブルック区警察に連行。引き渡しを済ませ、何か判ったら連絡をと自分の番号を知らせた。

 廃工場に戻ると、全員を乗せられる大きさのビーズを生み出し、それに乗り、まずは南へと移動した――どこだどこだと思いながら。

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