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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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052 組織員のその後と新しい仲間

「なぜ地下にあんなに人を。何かの装置に繋がっているようだったが」


 取調室でまず最初にした質問がそれだった。

 捕まったあとのジピサー・コウォンリッチはあまりに静かだ。もう拘束パーカーで縛られている訳でもなく、封印チップとそのガードが右すねに取り付けられていて、礎術(そじゅつ)による抵抗はできないものの、ただただその身で暴れることもない。

 冷静であるかと言えばそれは計り知れないが、その落ち着いた声で、彼はこちらの質問に答えた。


「あれで礎術を付与していた。そのために大量の礎力(そりょく)が必要でね」

「最近の妙な使術動物(ジオアニ)はそれによるものか」

「さあね。俺は確かめてなどいない。ほかの誰かかもしれんぞ」

「そんな使術動物(ジオアニ)を生み出して何がしたいんだ、本当の目的には思えないぞ、何かあるんだろ、その先に」


 ギウリがそう聞いた。俺も答えを待った。

 この部屋にあるほかの音と言えば、記録係がタイプする音だけ。それもかなり抑えられた音。そんな静けさの中待つと、またジピサーが口を開いた。


「礎術道具の材料から何まで……あらゆる『部品』を変える度、何度も実験した。その実験の末ある種の礎術だけを付与できるようになった。……武器というか……手段を、売りたかったものでね。対応させた礎術道具のスイッチを押せば、礎力の信号によってシロヨツミミイタチが自動で能力を発動させる」

「まさか」

「そう。遠隔の……生きた爆破生物……スイッチによる礎力信号で自動で爆発し――周囲に爆風と爆炎をまき散らす――そんな礎術を付与したくてね、試行錯誤を繰り返したよ。……できたのはつい最近でね」

「イタチごと人を爆死させるのか、それを売るだと?」

「そうだ、そして既に、数匹売却済みだ」

「何だと!」


 ギウリが掴み掛かった。そして。


「最ッ低のクズだな」

「なんで答えてくれた」


 とりあえず俺は聞きたかった。こんな犯人の多くは今後のことを考え答えずにいたがると思ったからだ。犯罪者の心理はよく解らないが……

 俺が問うとジピサーが言った。


「作られたものが何なのか――明らかになった時に人は初めてその価値を認識する」

「価値だと? 注目だけはされたかったか?」


 ギウリはそう聞いたが、それ以外の意味もありそうだ。

 ジピサーは答えた。


「驚きの程度も知りたかったね」

「命を弄んで楽しいか?」ギウリが問うと。

「楽しいよ」

 もうここを出るつもりで、俺は最後に言った。「イカレてるよ」

「知ってる」


 記録係と共に部屋を出た。あとは別の署員がジピサーを連れていく。最近脱走事件があったが、今となっては難しい。彼らはもう、この地獄の領域から出ることはないだろう。


 ■■□□■■□□■■□□■■


 任務の報告をして報酬を受け取ってからは、次の任務以外に気になることがあった。オレンジヒカリヤモリのペタメイズのことだ。自分たちの身に何かあったら世話どころの話じゃなくなる。それに任務が長くなると寂しがらせてしまう。


「ペタちゃんのために何かできないかな」


 リビングのソファーの上で止まったペタちゃんを、近くに座って眺めながら、考えた。

 そこでレケの声がした。


「冷蔵庫の処理でも困ってるから……いっそ、ハウスキーパーがいればいいんだがな」

「……よし! もうそれしかないな! じゃあ依頼しよう!」


 そんな訳で、ベレスが買ったノートパソコンをリビングに置き、みんなでサイトを見ていった。


「このサイト、なんで爺さん婆さんばっかりなんだ」

「七十……八十……ほんとだな、ここはやめておこう、うちには戦える人が欲しいし」

「だね」


 複数のサイトを見てみたが、格闘術、礎術(そじゅつ)関連の特記がほぼなかった。あっても礎術道具販売店で働いた経歴アリとか、その程度だ。

 ジリアンも画面を覗き込んだ。


「あ、この人……」


 ジリアンが指を差した。少し上らしく、画面を戻して見やる。「この人この人」と言われた男性の備考欄を見た。そこにはこうある。

『礎術アスレチック大会予選Aブロック九位』


「本戦に行ってないんかい!」

「ごめん、大事な所を見てなかった」


 ジリアンが笑いながら謝ってすぐスクロールさせ、ページを少し下に戻した。


「じゃあこの人は? この人」


 ベレスがその位置から下へと同じページをスクロールさせていく中で、ケナがそう言った。指も差していた。

 その人物の特記には、『礎術能力込みで警備経験アリ』とあった。


「おお、いいじゃん」


 そんな訳で早速会いに行った。

 待ち合わせ場所はホテルの前にした。空や建物を背景に映える大きな木のある花壇がホテル『グランドセントライト』の前にはあって、その下のベンチで座って待った。

 待っている間に電話が鳴って、出ると最初に言われたのは気になっていたことについてだった。


「おう、ロロ・ピューブリックだ、別件の妙な礎術を使う使術動物(ジオアニ)だが、彼らが実験的に付与したものだと判ったよ」

「そっか、確信できてよかった」


 気になっていることはほかにもあった。


「ところで、なんで地下の彼らは感知されなかったんだろ」

「ん? ああ、カーテンが礎力波の感知を遮っていたんだよ」

「カーテンが……? そっか……」


 そこで、既に答えの判った疑問が湧いた。なんで僕は殺されなかったのかと。あの腕時計みたいな礎術道具で僕になりすました……その僕が死んでいるとダメだったのではないか――リミィさんの判定能力によると本当にそうだと今判った。

 それを伝えると。


「そうか、取り扱い注意の代物ではあるし、報告助かる、ありがとな」

「いえ、こちらこそ」

「じゃぁな」

「はい」


 電話を切ったタイミングで思い出した。レイシー・ピアーソン。ドナになりすました人。捕まる切っ掛けになった僕らを恨んでいるかもという話。彼女は礎術で姿を交換する。その相手が死んだら姿が固定されるかもという話だった。彼女の本来の姿をした誰かは既に亡くなってしまったとニュースで知った。脱走したレイシーは今どんな姿やら。

 考えている所へ、背の高い一人の女性が現れた。長い黒髪がさらりと風に揺れる。もしかして彼女がそうじゃないだろうな、なんて思いも、じわりと胸に(にじ)んだ。

 サイトによると、名前はルヴェンダ・ノキローニ。


「ユズトさんですか?」

「あ、はい」

「ルヴェンダです。……よろしく」


 無表情で手を差し出してきた。握った感じはかなりガッシリとしている。かなり頼りになりそう。

 黒いビーズ『ゲーティング・ブラック』で家の庭へと繋いだ。

 キャリーバッグを持ったルヴェンダさんを家に連れてくると……まずは案内。そして裏庭まで見せペットボックスやその他諸々の事情を説明。


「――ということで、この家の管理を、僕たちがいない時にして頂ければ。ただ、どのくらい……連続で家を空けるかは解らないので、住み込みで働いて頂ければ嬉しくはありますけど」

「それでいいならぜひ」


 ルヴェンダさんは無表情でそう言った。


 ――本当に大丈夫かなぁ。


 なぜかそう思ってしまった。ただ、サイトによると彼女の成績は優秀とのこと。きびきびとした行動や態度、手の感じから、嘘はないように感じる。それでもやっぱり心配しちゃうなぁ。

 庭の花壇からフユツリバナの芽が少し出ているのを見て、ルヴェンダさんは、


「フユツリバナですね、これは大切に育てたいですね」


 って言った。確信した、彼女を選んでよかった。

 これで任務に出発する日にペタちゃんを預けることもできる。ひとまずは安心だ。

 たまの休みということでペタちゃんを庭で遊ばせたりした。天候的にもちょうどよかった。

 ついでに礎術の訓練をする。その訓練でペタちゃんをビーズに乗せて浮遊移動させて遊ばせると、『もう一回それをして』という感じで歩いてきたり、乗ると『カカカ』と鳴いたりする。それも面白かった。本当に可愛い。くすくすしちゃうね。

 ルヴェンダさんの歓迎会をその日のうちにやった。


「いやぁホント助かるよ、困ってたからさ」

 僕の発言の次にジリアンが。「解らないことがあったら言ってよね」

「よろしくルヴェンダさん、ねえ、これやる?」


 ケナが誘ったのは丸い板を積んでいく『マルトー』という遊び。玩具用として専用の板があって大きさは三種類。しかもそれを礎術の操作でやろうということだった。

 ルヴェンダさんは頷いた。


「ええ、やりましょ」


 彼女は、そう言った時初めて薄く笑ったような気がした。



 ……さて。あれから数日。

 仕事に慣れたと思い始めた。最近は母の故郷を滅ぼした犯罪者たちについての新しい情報を探したりしている。が、新しい情報は中々ない。


「何かあったら教えてください」


 調査室の補佐官メネア・レフリガームさんにそう言って「解りました」という返事だけは聞いておいた。

 もしかしたら関連する任務が入っているかもしれない。

 もう少ししたら人を捕まえる任務を選ぼう。チームの仲間ともそう話した。

 ただ、ジピサーの実験の残り火がある。

 本来持っているはずのない力を持った使術動物(ジオアニ)はどれだけ世を騒がせているのか。ある程度はそれの確保やそれに対する正しい対処を考える任務に就こうと考えた。

 依頼リストにある確保対象としてあったのは、岩や煉瓦を吹き飛ばすはずがないのにそれができるネバケヘビや、ちょろりと水を出す程度しかできないはずなのに電流も放てるマキツノアオイヌ、頑丈さを強化するくらいしかできないはずが衝撃を遠くへ移すタイガタイガタイガというのがそうだった。


 ――ゴリラゴリラゴリラみたいな。なぜ。


 突っ込みも程々にそれらの任に就く。

 騒ぎの場所が判っているし三匹とも都会にいた。そこまで難しい任務ではなかった。とあるチームと協力できたことも難易度低下に一役買っていた。


 チーム「自然の恵み」

 そのチームの黒葵チューブ使いの男性、イオ・アロク。塗る場所によって目や鼻をヒリヒリさせることができ、対象の身動きをある程度鈍らせることができる。

 菓子箱使いの男性の名は、チェフ・コハノシカ。緑レーズンバターを二枚のクダイモクッキーでサンドした「ニ・ムクサ」というお菓子の箱を操ることができる彼の力は、逃げ場を隠したり相手を覆ったりすることに適している。そして彼はサクサクムニムニしたお菓子が好きだということだった。事ある毎にそれを言うから解った解ったと言うことが多かったが、それはそれとして。

 丸い果物使い、男性、ルフィル・マーツ。そのままだが打撃に一目置かれている。

 毒の二枚貝使い、ガイマニィ・カツイ。彼は、眠り毒の黒い二枚貝、マヒ毒の白い二枚貝の二種の捻出と操作ができるということだった。毒の液を出させるのは一日三回までということだが、彼の力が今回大いに役立った。


 眠らせ、そして確保。

 現場で被害がまったくないという訳でもなかったが、かなり抑えられたようには思えた。死者はいない。重傷者もいない。

 使術動物(ジオアニ)を捕まえたら保護管理センターに送った。が、マキツノアオイヌだけは違った。白衣の男性から買ったという男性の一家が現場に近寄って来て、小学生くらいの息子の元へと帰っていった。

 少年にすり寄るマキツノアオイヌ。

 それを見て話を聞いた。すると父親が言った。


「ありえないペットを飼ったものだから、それを知った同級生が変な所から買ったのだろうと噂を流したようなんです。それで悲しんだ息子の様子から何か動物なりに察したのか……ミライの方から息子の元を去ったんです」


 ――本当は人の心が解ってたりして。


 まさかな、とは思った。思いつつ男の子と戯れるマキツノアオイヌを見て、羨ましいな、とも思った。

 マキツノアオイヌが恐れられたのは、事情を知らない者による生け捕り作戦から逃れようとして電流を放ったからということだった。

 そのままでは何も知らない者が怖がってイヌを死傷させていても不思議ではない。

 そんなマキツノアオイヌのミライが男の子に懐くのを見て――僕らは目を見合わせ、何も言わずその場を去った。

 これで一件落着。

 家に帰って最初に見たのは、ルヴェンダさんが、肩に乗ったペタちゃんを撫でながら、ふたりしてリビングのテレビを見ているところだった。


「ありがとうございます、ただいまぁペタちゃん」


 ケナも彼女と一緒に撫でた。ルヴェンダさんが背を撫でるから、ケナは頭を。ペタちゃんはされるがままになりつつ、ただテレビを凝視している。何を思っているのやら。

 こういう光景を見ていると、幾らか心も安らぐ。


 ……数日休んだ。

 そのあとで、あれ以来初の対人任務に就くことになった。

 いつも通り受付でB型免許用のリストを見る。

 目撃情報が一般人からあり警察経由でないものもあるようだった。人員確保からではないため重要に思えた。

 まず本当に指名手配犯か確かめる必要がある、そんな任務。


「これにします」


 書類を持ち現場に向かう。依頼文には、待ち合わせに使ってほしいという場所が明記されていた。ジェンタム市イロー区にあるデパート『エシアン』の食事処『ソバパスタ~激音~』に、と。

 そこで席に着くと全員赤い帽子を被った。

 そこに、七十代の男女が近付いてきた。


「ジオガードの方々ですね?」


 ――最近お爺さんお婆さん多いなぁ。


「ええ、そうです」とベレスが言ったあと、「こちらです」と案内された。ついて行った先は古い映画館だった。


「ここを出た時にちょうどあちらに――どこかで見たことがあるなと思いまして」


 映画館を背に示された方向を確認した。交差点があり近くには高いビルが連なっていて、色々な店舗が入っているようで、様々な状況があり得そうに思えた。


「ではまたあとで連絡します」


 二人が帰ってからも観察を続けた。

 警察は現行の事件を『解く』のに忙しいが、ジオガードはとにかく『動く』ためにある。自分たちだけで解決できればいいが一応の連絡はした。

 そして、手配書で見た顔に似た……変装しているのであろう男がとあるビルに入るのを見た。

 店舗にはカフェもある。

 数分後、そこから出た男が今度はどこかへと向かった。――行くのか、帰るのか。

 ゲートでビルの屋上に移動し、そこから目で追った。

 移動にはほぼ常にゲートを使った。

 次第に辺りはある程度静かな街並みになっていった。林や図書館、ぽつぽつとある一軒家が周囲にある。男はそのうちの赤い屋根の一軒家へと入っていった。

 みんなを見ると、まずベレスが言った。


「裏には私が」

「左側は私」

「右側はケナ、頼む、俺は正面」

「じゃあ僕が中に?」

「その方がいいでしょ?」


 ジリアンの言葉を聞いて、ほかの人を現場にやってしまうくらいなら自分が行きたいと思ってしまうこちらの気持ちを理解してもらえている気がしてから、フッと笑みがこぼれるのが解った。

 全員納得の位置取り。そして家へと二階の窓からゲートを使って入った。

 二階を静かに見て回る。誰もいない。一階へ。向かうと、ニュースの声が聞こえてきた。


「――ヨツミミイタチと飼い主の爆死事件が発生しました。ハゼットさんは窃盗による犯罪歴が多数あり、ストーカー行為を繰り返していたためその恨みによるものと思われ――」


 多分、男は自分がニュースになっていないかを確かめているんだろう。そうなるのはこれからだ。

 居間にいるのが見える。横から見ると手配書の強盗犯とそっくりだ。ただのそっくりさんかどうか、言葉による確認もしたい。言葉を待つと――


「そろそろ大金を狙いたいなぁ」


 そう言いながら、男が帽子を取った。カツラも取った。――こいつだ。

 すぐに白いビーズを向かわせ、顔を覆った。そして念じた。


「狙うべきなのはもっと違うものだよ」


 その瞬間、視界が白くなり何も見えなくなったはずの男は、こちらを見た――声がしたのだから振り向くのもおかしなことではない――その上白い包帯まで大きくさせながら放ってきた。


「シャタリング・グレー!」


 灰色のビーズを礎物(そぶつ)として呼び出し、目の前で巨大化させた。相手の操作対象はそれを通ると粉々になった。

 敵が一人なら何のことはない。まあ見えない視界であれだけの現象を起こせたのは凄いが、こちらが油断しなければこの通りだ。


「逮捕するからちょっと待ってろ」


 自分で言っておかしいと思った。犯罪者はそう言われてもきっと待たない。

 一旦玄関から出てみんなに報告し、自分が戻ってから全員にも入ってもらった。

 男は居間から出て廊下にいた。足音を聞くと「ひい」と悲鳴を上げて逃げようとする。追い掛けて押さえると、ジリアンが持っていた拘束パーカーを、レケが手を出して受け取り、着せていった。

 あとで警察が調べるとは思いながらも、この家を調べてみた。居間の引き出しの中に、手帳、黒のボールペン、赤ペン、チラシの山、黒い鍵、カード類を見付けた。

 さて。ひとまずはと、近くの警察署の場所を調べ、連行した。


 ……依頼主であるお爺さんお婆さんに報告すると、そのお婆さんが礼を。


「ありがとうございました、これでこの辺のみんなも安心できます、私たちも」

「よかったですね、お二人のおかげですよ」僕がそう言うと。

「いやぁそんなそんな」


 お爺さんはそう言って照れた。可愛いご夫婦だ。確か依頼書によるとご夫婦。

 彼らにベレスが言う。


「本当ですからね、目撃情報あってのことですから」

「あ、ちょっと待っててください」レケが急にそう言った。


 近くの菓子店で何やら買ったレケが箱を手渡した。


「お礼です。カップケーキ。じゃあ俺たちはこれで」

「こちらこそ。これを受け取ってくださいな」


 菓子の箱と交換したのは、ジェンタム市イロー区名物、ソバクッキーだった。

 二人に手を振られて別れた。帰る途中で警察に報告。

 すると、お年を召された声でこう言われた。


「確かに強盗犯の一人でした。ご協力ありがとうございました」


 ――最近本当に多いな。


 ともあれ。依頼書に目を通しながらついでに言った。


「活躍したのは目撃者もでして。タミ・カリッシさんとスデン・カリッシさんのご夫婦です、二人にも何かお礼やらがあればと」

「解りました」


 一仕事したあとは気分がいい。さて次はどんな出会いがあるやら。切なる想いから依頼が生じる。その分いつも気を引き締めないと……と思いながらも、頭のどこかで、次はどんな人を助けられるのか……そういったことが頭に浮かぶ。


 ■■□□■■□□■■□□■■


 新しい仲間と呼ぶにはあまりにも程度が低く、こちらからはどちらかというと部下という感覚だった。

 ユズト・サエキはこの世にいないらしい。

 部下は頭をヘコヘコとさせながら報告した。


「礎術大会にしかその名が出てこなくて、へへ……」


 つい舌打ちも出た。

 だからあたしは自ら調べた。

 まさか、ユズト・ゼフロメイカに名前が変わっているとは思わなかった。

 ただ、どこに住んでいるかが判らない。

 ゼフロメイカと言えば、一番最後のターゲットの娘の苗字もそうだった、確か州知事の娘。

 その家を確認しに行ったが、警備が固いし、どうやらユズトとかいうガキはいない。代わりに手に入れたものはあるが……


 ――もういい、州知事の家の警備の程度は高い、デメリットがデカ過ぎる。


 ユズトとやらに近付くのにも、極力デメリットの少ないやり方をしたい。

 あたしが捕まる原因になったあのガキ。あたしを(だま)したあの男だけは。

 殺してやる。いつかこの手で。


 ……何日も経ったある日。

 ニュースが気になった。巨大な黒い壁が現れ、ジオガードによって徐々に撤去されていくというニュース。黒い物体と言えば、()()()テシューの身動きを封じたのもそうだった。

 だからあたしは声を上げた。


「おい、あんたら」

「ひゃい」

「行くよ、マデリー市だ」



※ここに登場するマルトーという玩具は想像の産物です。多分どこにもありません。現実にもです。ご了承ください。

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