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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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045 とある組織について

 ある休憩の日に考え事をしていた。三頭のクロダマオオイワトカゲと一頭のユニクオオカミのことだ。


 ――そういえば『あの人』が鹿のことも言ってたな、カザダマジカだっけ、あの依頼の土地で殺処分にされたそいつが火を放ったんだっけ……


 一体これは何なのか。何かが起こっている気がして仕方がない。

 リビングにいるみんなに向け、話してみた。


「人を逮捕する任務にまだ就けてないけど……これからもこういうのが続くと思うんだ。違う礎術(そじゅつ)が使える使術動物(ジオアニ)がちょっと気になる。みんなもそうだと思うけどどう?」

「俺は人を追えてなくても気にしない。それこそ気にするな、いつかは警察からの依頼も受けるだろ」

「私も大丈夫だよ、気にしないで。私なんか一番気にしてないかも」

「はは、ありがと」


 僕が礼してすぐ、ベレスの声が聞こえ始めた。


「ユズト様もお母様の一族を滅ぼした犯人が気になるでしょうが、それを我慢しているのですからお互い様ですよ」

「そか。ならよかった」

「あたしも! 気にしてないよ」


 ケナは元気だ。


「ありがとね」


 ……話し合ってから次の日。

 任務を選んでいる時にも気になって考えた。


 ――もしかして誰かが売りつけて回ってる? ならなんで? 何かの資金のため? そもそも使術動物(ジオアニ)がなんで普通じゃない?


 諸々の要素から推察してみた。人と使術動物(ジオアニ)が深く関わっている。人が使術動物(ジオアニ)を利用している? どちらかと言うと使術動物(ジオアニ)に変化をもたらしていて、だけど手放している。そこら辺は少しよく解らないが…そんなことができるならそれなりの場所にいるそれなりの誰かなのか?

 まだ色々と見えてこないが、とんでもない人が関わっていそうだ、そんな事件がないか……と、リストを見ていると――


「これはどうだ?」とレケが言った。


 見るとそこにはこうあった。



『国立聖森養鶏場からゴルドガルスが盗難された事件を追っていたら、追跡先で、保護目的以外に入手してはならない使術動物(ジオアニ)を購入している現場を双眼鏡越しに目撃。その現場は『礎力(そりょく)急速補給剤』の製造会社の敷地内。怪しいと思い捜査しようとしたが、担当捜査官の礎術の特性ではそこまでの捜査が限界だった。取り返しがつかなくなることを防ぐため、礎術による潜入捜査をジオガードに依頼した。その結果、彼らが組織的に動いており、使術動物(ジオアニ)の違法入手、礎術道具や薬品の違法製作をしていると判った。組織から人が行方不明になったこともあると判明。ガードマン以外全員が何らかの犯罪に関与している。組織員を逃がさず一網打尽にするための突撃交戦の依頼として受けてもらいたい。(合同任務:残り二チーム)』



「警察の依頼ですか」ベレスが言った。

使術動物(ジオアニ)の違法入手、その他諸々がくさい、これにしよう」


 ――あの子らと関わってそうだ、でも、違ってもいい。こうやって担っていけばいつかは……


 そう思いながら書類を受け取った。

 アンクウィット市から南東のマデリー市の空港へ飛行機で飛び、それからイーストマデリー区警察署までバスで向かった。

 署に入ると、受付に、ジオガードだと手帳で示し、書類を見せた。すると。


「第一会議室へどうぞ」


 手で示された方へ行き、探してその部屋へと入ると、そこに別チームが既にいるようだった。


「あれ? ユズト!」


 目を向ける。そこには試験でも見た顔が。


「フィンブリィさん!」

「奇遇だね、こんなことが多いのもスピルウッド出身、スピルウッド希望のチームが多かったから…ほかにも今年受かった人がいるよ」

「そうなんですね、へぇ~」


 と話しているところへ、警察官なのであろう三十代くらいの黒髪男性が近付いてきて言った。


「ロロ・ピューブリックといいます、どうも。俺とこっちのギウリが今回の件の担当です」


 隣の二十代くらいの金髪男性を手で示してからも、ロロさんは続けた。


「あと一チーム……と、潜入していたチームが戻ってきてから作戦を練ります」

「おい」


 なぜかギウリさんは不服そうだ。彼は口調も顔も不機嫌そうなままだった。


「なんでこんな子供がいるんだ? これから突撃部隊を作るってのに。お前らちゃんと動けるのか?」

「動けますよ。だからジオガードなんです」


 僕が言っておいたが、ギウリさんの態度は柔和にならなかった。


「あっちを見ろ。あそこにも変なヤツがいやがる……オカマ野郎だぞ! 任務で動けるのか!」

「言っていいことと悪いことがあるでしょう! 何を言ってるんですかこれから協力するのに! 仲間同士で! 喧嘩してる場合じゃないでしょう!」

「喧嘩? ハッ! 任務に必要なのはルールじゃない、強さなんだよ! それ前提での協力だろ!」


 そこでギウリさんはロロさんの方を向いた。


「先輩、これダメですよ、別のチームに来てもらいましょうよ」

「ダメだ。考えを改めるのはお前だよ」

「俺は間違ってません! 任務完遂のために――」

「じゃあ!」


 率先して話を切った。

 その時には周囲に既にいた数人がこちらを見ていた。中にはオカマと言われてしまった人自身もいるんだろう、その視線の中で言葉にした。


「完遂できる実力があると思わせられればいいんですよね?」

「どうやってそれを示すんだ? ん?」


 認められる訳ないとでも思っていそうなギウリさんは腕を組んで言葉を待った。

 ただ、こちらとしても……思い付かなかった。


「さあ」

「さあッ? カッコいいこと言っておいてさあだと? 子供はいなくていいぞ」


 いちいちムカつく。ここの設備やら近くで何ができるかを、来たばかりの僕らに分かる訳がないのに。

 まあある程度の想像でいいなら……というかなぜこの人は自分では考えないんだ。なぜ自分では確かめようとしないんだ。そう思うと、決め付けて掛かっているというのがよく解ったし、それはよくないと改めて思った。


「礎術の扱いのうまさを確かめられる何かはあるんですか? この近くに」


 ギウリさんの返答を待ったが、彼は口をずっと閉ざしたまま。

 はあ、と溜め息をついたロロさんが代わりに言った。


「狙撃練習場ならある」


 本当にギウリさんは自分から言わない。


「それと気になってたんですけど――今ここにいる人の中には女性もいます。あなたの言うことが正しいなら今ここにいる女性も、運動能力的にはダメだということになるので、総合的なことをあなたは見れてないですからね」

「何だと?」


 ギウリさんが近寄ってきた。こちらとしてはサッと後ろに身を引いた。


「……まあいい」


 そして向かった。狙撃練習場。ほとんど署の地下のようなものだった。

 背の高い女性……フィンブリイさんとかのことなら少しは当てにしているようで、ギウリさんは、ケナ、アルマさん、ゾニーさんの三人を指名し、レーンの前に並ばせた。

 アルマさんとゾニーさんはかなり似ていて、ゾニーさんは茶色いベレー帽っぽいものを被っている。ゾニーさんの方が割とキリッとしていて髪も長い。アルマさんの髪はセミロング。

 ふと思い出した。ゾニーさん……という名前だったかは忘れたが、試験で見た。


 ――あ、ゾーニャさんだ! ゾニーさん……? ん? 仲間内ではゾーニャ呼びのはずじゃ。


 そんなことを思っていると、まずアルマさんの狙撃が終わった。

 アルマさんが使ったのは絵筆。奥まで飛ばす速度は中々のものだった。奥のクッション部分に当たると、その絵筆はアルマさんの足元にワープした。それをアルマさんが拾う。


「む、まあいい。次」


 ギウリさんの合図で立ち代わり、ゾーニャさんが次に、絵筆を構えた。

 対象の種類が同じ……と知ってからまた一つ思い出した。姉妹がどうだとか試験の最中に聞いた。つまり遺伝礎術。

 ゾーニャさんが操った絵筆は、アルマさんがやったのと同じくらいの速さで的を射抜いた。足元に戻ってきた絵筆を拾うと、ゾーニャさんは「そこからどいて」と後ろに誰もいない状態にし、振り向いた先の壁を、念動操作した絵筆でなぞった。そこへ礎力を込めたようだった。直後、壁から壁そのものみたいなものが急速に伸び(・・)、それもまた的を貫いた。


「な、なんだそれは」

「これ、活用できると思いますよ」


 にっこりとゾーニャさんが言った。どこか弱々しくも聞こえる声だったが、独特な美しい声だった。

 その声のあとで礎力込めをやめたのが僕にだけは見えた。直後、その伸び(・・)は瞬時に引いていった。

 そこが平らな壁に戻ると、ゾーニャさんは言った。


「絵筆で撫でた所に礎力を込めると、今みたいにその部分の成分を引き延ばすことができるんです、水平な面を撫でれば縦に……柱にできます」


 そう聞くとギウリさんが「なるほど?」と――態度は変えないが理解はしたようで――


「まあ有用ではあるようだ。もっと動ける者がいればお前たちには頼らないかもしれないがそれでもいいな?」

「まあいいけど」とはアルマさんが言った。目は合わせない。

「ただ! 大事なのはそこの女児だ! かなりのものじゃないと現地にすら行かせないからな」

「いいぞ、それで」レケが言った。「ケナ、見せてやれ」


 ケナは動じていないような顔で(うなず)いた。

 代わってケナが的の前に。立ってすぐ放った。的は一瞬揺れて小さな音しか出さなかった。

 足元に戻った消しゴムをケナが拾うと。


「どう?」多分ケナは純粋に聞きたくて聞いている。

「……え?」


 ギウリさんは呆気に取られていた。いつの間に、とでも思っているに違いない。


「だから、どう?」と、ケナが問うと。

「あ、ああ……まあ今の感じなら現場に行ってもいい。……ただ!」


 ギウリさんは腕組みをしてみんなに向けて言った。


「どんなに能力があっても――それは認めたから――とりあえず俺たち警察には従ってもらう、依頼者の望みは聞くもんだろ?」

「ですね」


 ゾーニャさんについてきた誰か――男性がそう言ったあと、ロロさんがこちらに歩み寄った。


「すまんね」

「いえ」


 僕がそう言ったあとすぐみんなで第一会議室という所に戻った。そこに新しいチームが来ていたようで、人がさっきより増えたのが解った。


「ユズト?」


 言われて思ったのは『フィンブリィさん以外に誰がそういうことを言うっけ』だった。その声の方を向くと、いたのは男性。見覚えは……ある。


「あ! ええと……ええっと……!」

「ペーター・ミガリオだよ、大会では話したよね、あれ以来だなぁ」

「そっか、ペーターさん、お久しぶりです」

「イルークは別班なんだよなぁ、本部のチームではあるんだけど。もう会った?」

「試験で会いましたよ、本部ではまだですけど」

「そうか今年担当したのか、あいつ張り切っただろうなぁ、後輩と話すの好きなんだよ割と」

「あー……大会の人たち?」ジリアンが聞いてきた。

「実はさぁ――」


 和む話もしつつ時間が過ぎていった。

 その辺で昼食を食べておけという話になったあと、それも済ませ、Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)に入れているペットボックスの中のペタちゃんの相手を何人かでしつつ潜入捜査チームの帰りを待った。

 ある時――


「お、ゲート。イチェウィックさんだ、戻ってきたぞ」


 ロロさんの声を聞いてどこにどう戻ってきたのかと見やると、この部屋のこちら側を後方とした時の前方左奥となる位置に妙な鏡張りの棚みたいなものが現れているのが解った。そこから四人の男がやって来た。

 その中の一人が礎力を込めていたようで、それが途絶えると、ゲートになっていた何かが小さくなった。

 床に手を伸ばしそれを手にしたのがイチェウィックさんなのだろう。彼の手をよく見て解ったが、対象は恐らく印鑑だ、四角い印鑑の一面をゲート化させていたようには見えた。

 彼らが潜入捜査チームなのだろう、そうでなくても念のためと思い、ショルダーバッグからスポーツバッグにしか見えないMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を取り出し、畳まれた状態から広げ、ジッパーを開けてその中へと入った。

 サバイバルグッスの横に置かれた新緑色のペットボックスの横のボタンを押し、呼び掛ける。


「ケナ、多分みんな揃ったから出ておいで」


 出てきたケナとMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)から出ると、荷物を整えた。

 予想通り会議が始まった。話に集中する。

 イチェウィックさんなのであろう男性がロロさんと話したあと、こちらに向かって言った。


「まずみんな自己紹介してほしい。礎術についても紹介を」


 それによると、ここにいる人員の名や肩書き、チーム、念動の礎術対象や瞬間発動系の礎術の詳細については、こういうことだった。



 警察官 ロロ・ピューブリック(黒いポリ袋)

 警察官 ギウリ・ボウオスク(すりこ木)


 チーム「ナンバーズ」

 イチェウィック・ガプストン(印鑑)

 ニヴル・ネフォケッセント(石粉粘土ブローチ)

 サンタディオ・スカイメート(聴覚強化・半透明な黒い小物入れ)

 シフュー・コーサー(風呂敷)


 チーム「パタパターズ」

 フィンブリィ・アウスイット(フリスビー)

 ミミカ・ガンドハーテラ(手鏡)

 ジッケス・ルギヨール(定規)

 テイバー・キャジプル(下敷き)


 チーム「ペーパーピーポー」

 ペーター・ミガリオ(折り紙)

 カイル・ツワセマ(紙皿)

 キボラ・ミューク(紙袋)

 シキティア・ハキス(色紙)


 チーム「クリミナルキッカーズ」

 ソラ・クォーギット(運動靴)

 ゾニー・フェシディフラ(絵筆)

 アルマ・フェシディフラ(絵筆)

 ヴィスリー・ロックバーグ(バイクグローブ)

 カービティ・アレステス(走力強化・レガース)


 チーム「月下の水」

 ユズト・ゼフロメイカ(固まる礎力の液・ビーズ)

 ベレス・エイスティー(結束バンド)

 ケナ・イース・ペスターライン(蹴った物投げた物等の重さ・消しゴム)

 レケメラウガー・ペスターライン(走力強化・金具付き絞り袋)

 ジリアン・フォスターパック(早送り・口紅)



 ゾニーという名を口にしつつ本人は「ゾーニャと呼んでください」と言った。言われても『じゃあそう呼ぼう』と思うだけだった。もしやとは思ったが触れない。彼女は彼女だ。

 ホワイトボードに連ねられていったメモで数えたが、総勢二十四名。これだけ多ければ周囲を守りながら逃がさないように突撃することもできそうだ……ということなのか。肝心なのはこの違法組織の中にゲート移動等の礎術師がいるなら真っ先に無力化すべきだということ。う~ん、どうやるんだろう。

 紹介の次に、最初に話したのはロロさんだった。


「ではまず、組織について。この組織の……敷地の広さや建物の構造――そこを理解しておく必要がある」


 直後ギウリさんが電気を消し部屋を暗くした。

 ロロさんの手には何やらスイッチがあった。それが押されたのだろう、部屋の中央に立体地図が表示された――プロジェクターのようなものが部屋の天井にあった、それによるものなのだろう。

 眺めて幾つかのことが解った。

 敷地は、南北に長い長方形の南東の角をまあまあ大きく正方形に切り取ったような形。

 敷地の北に、東西に長くて高い建物があり、建物への入口はその南東部。建物全体の前(南)には駐車場がある。

 駐車場より南は芝生になっていて所々細い道やベンチがあるようだ。

 この敷地に、車や人がどう入るのかというと、駐車場の西にある門から、ということらしい。

 そして敷地は全体的に背の高い鉄柵に囲まれていた。


「ここに――」


 ロロさんが、みんなの意志を昂らせようと意図しているかのように、真剣な眼差しで言葉にした。


「入って全員捕まえる。……誰も逃がさずに」


 どうやるというのか。

 静かな深呼吸が聞こえる。みんな考え込んでいる。次に自分が言葉を発するなら何と言えばいいのだろうかと、考えているのかもしれない。

 そんな中――頭の中に、あまりにも強引だが確実な案が、一つだけ浮かんだ。

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