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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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  ゾルスの店と初報酬 その2

「じゃあそれも」


 ……そして買ったのは、ペットボックス内装飾用の土管とブランコ付きの木、餌置き&水飲み用の人工観葉植物付き置き皿、棚、消毒布、専用の冷蔵庫、ペタちゃんの御飯になるグラヤモリート・大、そしてペットボックス――この八個だ。

 カードで支払って、店長に設置してもらうことにした。


「お勧めの置き方がいいので」

「じゃあ」


 そう言ってエジョンさんがこちらの買った商品全部を持って一旦その箱に入った。それから数分後にエジョンさんが光と共に出てきた時は、彼はとても小さかった。この場合気付かない人も絶対いると思うくらいに小さい。そして数秒を掛けて元の大きさに戻った。……出る時には注意が必要だな。

 エジョンさんは「よし」と言ってからまた。


「一応土管と木以外は設置しました。あとでご確認ください。お勧めが――とのことでしたが…木は中央がいいとは思いますが、土管は、離れ過ぎなければどこでもよいかと。好みも大事ですのであとで設置してみてください」

「はい、そうしてみます」

「あと二、三、注意を。これはメモしてください。オレンジヒカリヤモリの適温は二十七度、適正湿度は六十八パーセントです。ペットボックスの入り口付近に防護カバーで覆われたツマミがありまして、そこで設定できます、設定後はカバーを下ろして鍵をし、万が一がないようにしました。私が設定しておきましたが、これは忘れないようにしてくださいね」

「はい」

「それから、この箱に人や物を連れているかに関わらず、出入りの作動をさせられるのは常に一人だけです」


 エジョンさんは人差し指を立てた。それからペットボックスの正面を手で示した。


「『扉の絵』に触れて念じればいいんですが……私が一旦入りましたが、続けて入る許可状態を解除しておきました。この……一人だけが作動させられるという機能は、第三者に渡した時に、ペットの盗難を防ぐために付けられています。加えて、第三者を巻き込まないという意味でもあります。なので、許可状態に関してもご注意を」

「はい、注意しておきます」

「右横のボタンは中への通話ができるようになるものです、連絡に使用してください」

「はい」

「こちらから言えることは以上です、では何かありましたらまた」

「はい、ありがとうございました」


 そういう訳で全てが終わり、店を出た――これで飼う準備はできた。


「やっと帰れるな」とレケが言った。

「時間は掛かったけど……それだけペタちゃんのために揃えられたね」


 僕がそう言うと、みんなが頷いた。

 そして、ジリアンが、ケナの頭にペタちゃんを置いて――


「さ、帰って報告」

「意外と重~い」


 ケナがそう言うのを耳にして、ケータイを見た。今のここの温度と湿度――は、ペタちゃんに合わないこともないらしい。

 ペタちゃんをその新緑色のペットボックスに入れずに、そのまま駅へと向かった。それからコロモア空港へ。そこで係員に言われた。


「そちらのペットボックスごと預かりの貨物としてお運びすることになります。その箱をケージに入れてクッションで固定、鍵も掛けます。箱が揺れても中は揺れませんのでご安心を」


 そういう訳で、一旦ペットボックスの中に入ってもらった。

 アンクウィット空港へ戻ってきた。ペットボックスを受け取ってまずは駐車場へ。車で本部の地下へ戻った。

 三階に戻ると、まず報告窓口へ。


「あの。チーム『月下の水』です。ジャント村での任務の報告に来ました」

「ではこちらの紙に記述をお願いします。そちらでどうぞ」


 テーブルを手で示され、そこへ歩いた。

 今、ペタちゃんはペットボックスに入っている。それをテーブルの奥に置いて、テーブル中央にあるペンを手に取った。

 それで書いていく――三頭のクロダマオオイワトカゲのこと、あの子らの入っていた檻のこと、それを捨てた男のこと、警察への報告と協力のこと、保護管理センターへの三頭の遺体の引き渡しのこと、その遺体の胃から人のシルエットを人性礎力(そりょく)()スキャナーを通して見たこと、死者が誰かということ、村の被害のこと、そして、それらの対処をしたからか、約一週間後には使術動物(ジオアニ)の村への出没数を二日連続ゼロにできたということ……それから、なぜか三頭のクロダマオオイワトカゲはそれぞれ操るはずのない力を操っていたということ――


「これでよし」


 窓口でそれを提出すると。


「これは……大変な任務でしたね。報酬は四十万リギーですが、これなら危険手当が出ます、そのように報告しますね、数日後に連絡が行くのでその時は出ていただければと思います。みなさん初任務ですが、報酬を受け取る口座等はございますか?」

「コバルトカードが」僕がそう言うと。

「ちょっと待って」


 レケがそう言った。どちらかというと窓口に今いるこの女性に対してだろう、みんなにはもっと砕けた言い方をする――と、レケの次の言葉を待つと。


「あの。こちらの女の子、ケナがまだその――口座とかカードを持ってないんです」

「ジオガードになられたのですから、口座とコバルトカードくらいなら作っておけますよ、その申請はここでもできます、どうです?」

「それならぜひ! 助かります」


 そんなワケでケナのカードを作ってもらった。

 そして利用する窓口が変わる。報酬受取所へと移動した。


「メンバーは五人とのことで、五分割して支払うことができます、一人に集中させたりメンバー内で偏らせたりもできます、どうしますか?」


 言われて考えた。自分はまだ受け取らなくていい。ジリアンやレケはどうだろうか。ベレスは……? ベレスは貯金してそうだが。


「僕は要らない」

「そういえば茶封筒の中は何だったんですか?」


 ベレスが聞いてきた。そういえばそれも考えに必要な要素だった。なんで気にしてなかったんだろう、自分でもよく解らない。

 ――中身が食べ物だったら? 日が経たずに確認すべきだった。うう、迂闊(うかつ)。お金なら別にどうでもいいんだけど。

 バッグに入れていた。取り出して中を確認。そこにあったのはお札の束。百万リギーはありそうだ。

 ほっとする。

 腐るものじゃなくてよかった。そういうのだと新鮮なのがいいし。

 ……お金は全部ケナにやることにした。


「そうだ」僕が口にした。「四人で分けてよ、今貰えるのはちょうど四十万だし」

「……ユズト様がそう言うなら」

「お金に無頓着よねえ、ユズトは」ジリアンが言った。

「今はね。大事なのはケナも含めたみんなの貯蓄と、これから先やっていけるかだから。ケナは特に。っていうのも、僕らの『もしも』を考えたからだからね」

「そっか、ユズトらしい。みんなのことばかりだな」


 レケがそう言ったが、そんなつもりはない。


「今はって言ったでしょ。次の任務、その次の任務――って、やっていけたら僕も貰うよ、当然。自分のことも大事なのは当たり前だからね」

「そうだな。なんだ、優先度を考えただけか」


 僕の「そうそう」で終わった話し合いの結果、ジリアン、ベレス、ケナ、レケが十万リギーずつ受け取った。

 ケナは初めてコバルトカードを使用し、自分がそのカードを持っているという事実に目をキラキラさせていた。

 礎術道具を返すべく貸与コーナーに寄った。

 返された携帯トイレと風呂ボックスはそのまま棚に戻された。リングサーチャーと捜索リングは限りなく黒に近い青紫の特殊そうな布で拭かれ、それから棚に戻された。恐らく、それでセット状態を解除されているんだろう。

 返すのも済み、また駐車場に戻り、家へと帰る。

 帰ってすぐ、ケナはジリアンとレケの二人と銀行へ向かった。そこで百万をケナの口座へ。本当にあのお礼は百万リギーだったとあとから聞いた。

 僕はというと――

 三人が買い物もして帰ってくるまでの間は、ペタちゃんを迎えたことだし……と家の中の細々としたものを片付けたり、礎術の特訓をしたりしていた、考え事をしながら。

 ――今はまだ部屋に小物が多いし、散歩させるなら庭だなぁ……

 三人が帰ってきてからは、みんなの前でペットボックスへと入った。こうしたのは、入る様子は全員で確認できている方がいいと思ったからだった。

『扉の絵』に触れて念じて入ってからはまっすぐ歩いた。そして、『あとで好み通りやるといい』と言われた設置をしていった。土管を右奥に、太い枝からブランコがぶら下がる木を中央に。置いてそれぞれ念じると、土管や木は、古くからそこにあったかのように出現した。

 そこへ、ペタちゃんがのっしのっしと、意外と素早くこちらへと歩いてきた。


「どう? ペタちゃん、この中、過ごしやすい?」


 返事は「ケケ」だった。

 とりあえずグラヤモリート・小がなくなるまでは、それを一回の食事で五個ほどあげる。今も昼の分としてあげた。


「おいしいか?」

「ケケ」

「そうかそうか」


 そんなやり取りがあってから、改めて箱内を眺めてみた。昼夜の変化ができるライトが、天井中央に四つほどある。入り口付近の温度と湿度の設定箇所のそばに、ライトによる昼夜の表現を自動にしているスイッチがあったのを既に見ていた。手動にもできるんだろう。どのタイミングで夕方にするかというようなことも設定できそうだったが、自動でできるならそれでいい、念のためアンクウィット市での時間に合わせておいて問題はなさそうだ。

 仕組みを理解して感動した。

 そして角から角までぐるりと見た。

 広さは一辺十五メートルの正方形くらいで、高さが……十メートルといった感じか。この広さと高さのおかげで設置した木も大きい、ということなのかな? 限界の高さにもよるんだろうけど。幹は太いし、登り応えがありそうで、ペタメイズのためにはなってそうだ。


「よし、一旦外に出るか。アンクウィットの地面や空気がペタちゃんに合えばいいけどな……ま、そんな合わないことはないと思うけど」


 ペットボックスを出る時、みんなが気を遣って近くに既にいないかもしれない――自分が小さい状態で出て徐々に大きさが戻るから。店長がそうだった。みんなはこういうことに気を付けてくれる、だから大丈夫だと信じているけど――確認したい気持ちは抑えられない。

 この中と連絡を取れるボタンが正面から見て右横に――箱の外にはあると聞いたが、こちらからの場合は入口の『扉の絵』の左横にあるボタンを押すらしい――温度、湿度、ライトの設定箇所の近くだった。まずはそれを押して……と。


「今から出るから」

「――了解。箱の前は開いてるからね」


 声はジリアンのものだった。ちゃんと話せる。こんな感じか。

 そして『扉の絵』に触れ、礎力を込める。

 出てきた。


「えー! ちっちゃ~い」


 ケナが言うのが聞こえた。

 徐々に大きくなりテーブルの上で元の大きさに戻ったので、とりあえずリビングの床に下りた。そんな時レケが言った。


「箱の中は本当は広いって話だが、外見の大きさに合わせて出るらしいな、注意しないと踏んじゃいそうだ」

「うぅ、ホントにそういうのやだ、気を付けないとね」


 レケは冗談っぽく言ったみたいでそれ以上の意味はなさそうだったが、ジリアンはグロテスクな想像でもして怖がったんだろう――確かに踏まれるのも踏むのも御免だ。


「ねぇあたしも入っていい?」ケナが――まあ興味持つのも当然。

「いいよ。リビングに置いとくから。入る前には言ってほしい……あ、そうだ、僕の許可状態を解除しとこう」


 箱に触れ、許可状態解除と念じた――これで合ってるかなとも思ったが――

 すると、『扉の絵』の横にあった赤く光る直径二センチくらいの丸が黒くなった。誰かが入るとこれが赤く光り、解除を念じると何かのセンサーみたいに赤い光を失い黒くなる……ということらしい。これで今は誰でも作動できる。ケナが作動させたら赤く光って、作動させられるのはケナだけになる。だから誰か無関係の人が入らないための対策になる。

 そんなこんなで解らないことは特にないし落ち着いた。

 ペタメイズは、大体はペットボックスの中にいた方が快適だから居させる。が、箱の外が適正な温度と湿度である時は(まあ若干程度なら適正じゃなくても許すことにするが)散歩なり何なりさせる、その方がきっと開放的な時間を過ごせるだろう。

 任務に関しては、二日だけ休むことにした。

 そして二日なんてあっという間だった。

 その二日の間に、妙なことも起こらなかった。レイシーがうちを狙っているかもしれないが、音沙汰もない。タミラさんに言って警備環境を整えロックも厳重にし、庭に監視カメラも置き、寝る時にもビーズの入った小瓶を肌身離さず持っているが……不穏のふの字もなかった。

 家で事件と言えば、レケが冷蔵庫を見て嘆いていたことくらいだ。

 この二日の間に市役所に行き、シャタリング・グレー、ウッドシリンダー・アンバー、エイド・レッドについて、詳細を礎術診断椅子(デターミンチェアー)で確認した。みんなにメモもさせた。作戦に組み込む準備はバッチリだ。

 ……そして今は、本部、任務受付にて。


「次の任務は、これにします」


 使わないはずの力を使う特殊な使術動物(ジオアニ)が競狼場の支配人の家から逃げたから対処してくれというものだった。気にならない訳がなかった。


「ではイーヴィストン州最南端のポダリストン市へ、移動をよろしくお願いします。この任務の場合サバイバル用品は必要にならないと思いますが、リングサーチャーの類は持っていくことをお勧めします」

「解りました、ご助言どうも」


 礎術道具の貸与コーナーに寄り、今回はリングサーチャーと捜索リングを一色四個ずつを一セットとして五組借り、それから向かった。

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