表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/114

037 もしもの準備とジャント村

 感謝会から戻ってすぐの日の朝――


「よし、行くぞ!」


 レケがそう言って玄関へと誘った。

 家を出てすぐ、共用というか、ジリアン用ではない方の車に乗った。


「私が」

「じゃあ次は俺かな」


 という会話があってからベレスが運転。

 ニ十二分で株式会社オウルライトマンの地下駐車場入口に到着。坂を一回下った先には停めずにぐるりと回って更に坂を下ると、その先に、ETCカードがあれば開きそうなバーと小部屋があった。

 小部屋には小窓がある。覗いて見える――警備員らしき制服を着た男性の姿が。

 ベレスが車の窓を開けると。


「この先は関係者以外使えませんよ」


 そう言われ、ベレスが率先して証明手帳を開き、印刷されたバッジの絵の方を恐らく見せた――のだと思う、番号はあまり見せるべきではないらしいから。

 すると、警備員の男性がそれをじっと見てから。


「そちらも。全員そうでなければ通せません」


 全員が見せると。


「ではどうぞ」


 バーが上がって通れるようになった。手前の方に空きがなさ過ぎたためにまた一周し坂を下った。

 ようやく空き場所を見付け、車を停めることができた。

 降りてすぐ辺りを見てエレベーターを見付けた。それに乗る際、降りる五人とすれ違いになる。


「あ、どうも、お疲れ様です」

「おお、頑張ってー」


 言われて乗り、まずは三階へ。

 降りてすぐ右後ろには階段があって、前にはいくつかのテーブルと椅子が、右手には事務員用の部屋みたいなものがあるようで、窓口が三つある。

 テーブルの方には数チームだけ人がいる。

 そういったことが解るくらいには蛍光灯が全体を照らしている。

 右を向いて正面からしっかり観察してみた。

 向かって左から順に、任務受付、報告所、報酬受取所――その案内板の下に窓口という形。

 まず任務受付の前に立った。

 ただ流れをあまり解っていないので、聞いてみた。


「初任務なんですがどうやって請け負えば」


 受付にいたのは女性、彼女が言う。


「条件を言って頂ければ絞り込みますし、全リストを見ていただいても構いません、そちらに出ています」


 手で示された『そちら』を見てみた――任務受付の窓口カウンターの左隅に、モニターがあると解った。


 幾つかの任務が見えてはいる。が、ふとジリアンが。


「最初だし少し簡単そうなものにしてみる?」

「そうだな」とはレケが言った。


 じゃあ……と思い、聞いてみる。


使術動物(ジオアニ)に関する仕事だけ見せてもらってもいいですか?」


 カチカチと音がした。


「どうぞ」


 モニターから指名手配犯の情報や警察からの依頼内容が消えた。ただ、これ以上選ぶことに少し気が引けたので、まあ適当に、退治さえすればいいという内容を選んだ。


「じゃあこの『ジャント村の使術動物(ジオアニ)対策』にします」

「では初任務ということで、念のため、使術動物(ジオアニ)関連の注意点を説明致します。人を襲い殺した使術動物(ジオアニ)のうち、人を食べたものは殺処分が基本です。緊急時も殺処分は認められます。対応策がある場合は認められません。使術植物(ジオベジ)だともっと特殊です、特に要望がなければ手を加えないようにしてください、これは自然の仕組みを大きく守ることに繋がっています」

「解りました」

「……では処理ができました、この書類を持って現地に向かってください。それと、こういった任務の場合、しっかり準備してくださいね、捜索リング、リングサーチャー、サバイバルに必要な品など持っていなければ取り返しのつかないことになりえます」

「わざわざありがとうございます」

「いえ。では行ってらっしゃいませ」

「はい、行ってきますっ」


 いいことを聞いた。

 ジャント村の情報として写真も添えられていて、その写真の大半は森だった。山村での仕事になりそう――なので、もしものためには確かに色々な物が必要だと感じた。そんな時に礎術道具の名前を聞けば、買うか借りるかせざるを得ない。その名前を聞けたのはデカい。


「じゃあ必要な礎術道具を借りに行きましょ、さっき言われたリングサーチャーとか」

「そうだね、じゃあえっと……」


 ジリアンに言われて案内板を見に行った。

 そして七階へ。

 礎術道具販売店。家具店とスポーツ品店が合わさったような雰囲気の店だ。


「何をお探しで?」


 男性店員に聞かれて、まずは。


Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を五つ。あと捜索リングとリングサーチャーというのを」

「捜索リングとリングサーチャーは貸与コーナーで借りられますよ、山での任務になりそうなんですか?」

「まあ、そうです」とは僕が。

「もし山に入るのなら、借りる際、携帯トイレと風呂ボックスも借りるといいでしょう」


 ――なるほどそういうものも。


「ありがとうございます、わざわざ丁寧に」


 とジリアンが言うと、店員は奥へ行きながら。


「いえいえ! Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を持ってきますので少々お待ちを!」


 そして、戻ってきた店員がカウンターにドンと置いたMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を五つ買うと、その五つをそれぞれが持っているバッグに入れ、見た目では各々携帯していることが判らないようにし、今度は貸与コーナーへ。

 詳しく話すと――


「だったらまあ…三組くらいでいいかなぁ、ちょっと待っててね」


 と言った店員がカウンターの向こうでこちらに背を向け、そこにある棚を漁り、複数の物を取り出した。

 それらがカウンターに置かれていく。

 光沢を持つ三色の輪っか。

 棒の先と紐が接続され、紐の先には金属のビーズ、ビーズに繋がった鎖、鎖と繋がった先が円錐形の金属――それら全てで一つの道具なのであろうものが三つ。

 四角柱の白いミニチュアらしき物が一つ。

 白いそれは高さがあるが、クリーム色の奥行きと幅のある物もあって、それが一つ。

 それらを出し終わると店員が解説を始めた。


「この赤と青と緑の輪が捜索リングです。探したい場所に置くか人に持たせます。こちらのプラプラ動くものがリングサーチャーです、同じ色の捜索リング……且つ、礎力を込められサーチャーとセットになったリングのある方向を示します。白いのが携帯トイレ、クリーム色が風呂ボックス。一つ三百リギー、全部で千五百リギーになります」


 僕が払うためカードを出すと、店員がまた。


「では手続き終了まで少々お待ちください」


 待っている間に――何か話したくて思い付いたのか、ケナが「ねえ」と。


「あたしのゲート作る奴に、技名、付けてよ」

「あー……どういうのがいいのかなぁ……」


 ジリアンが悩んでいる。僕もだ。こういう名前はどんな技かによるし、そうでなくても迷う。


「技の詳細はどんな感じなの?」


 と僕が聞くと、ケナは「んーと」と前置きした。


「薄い消しゴムのね、片面をゲート化させる……っていう。片面だけ」

「片面……ゲート……ゲーティングなんとか、ゲートなんとか……」


 僕も悩んでいると、ベレスが言った。


「特にこだわらずに、ゲーテッドイレイサーなんてどうですか?」

「ん! じゃあそれで」


 ケナは案外即決。

 そこでベレスが咳払いした。


「私もですね……ナイロン製のものから結束バンドを生成できるようになったんです、瞬間発動タイプです」

「え、マジ?」

「マジです」


 ――じゃあナイロンの板とかを持ち歩いてもいいし近くにそういうゴミでもあればそこから補充もできる。


 それには名前は別に要らないという話になって、互いの礎術把握のため、メモだけはした。これで、ケナとベレスの増えた技を全員が知ったし忘れても思い起こせる……それに、戦術に楽に組み込める。

 と、そこで店員が。


「任務が終わったら返却してください、二日過ぎると罰金ですよ」

「了解です」

「終わりました。ではカードを」


 コバルトカードを返されると。


「ではご武運を」

「どうも」


 ひとまず自分が手に持っているMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を縦にして開け、五品全部を突っ込んだ。そして山へ行くかもということが気がかりになっていたので、提案した。


「今回だけとは限らないし、サバイバル用品、全員分買っておこうか」


 ジリアンの「賛成」を受けて、九階へ。

 この本部施設の八階から九階は、礎術師が武器に使いそうなものが大半売られている。が、大型家具や電子機器はそこまで置かれていない。サバイバルでも使える電子機器があれば最高だが望み薄なようで……さっきの携帯トイレや風呂ボックスは、その肩代わりみたいな礎術道具と言えるんだろう。

 と、歩いて探すと、サバイバル用品のセットを発見。五個全員分を買った。ついでにかなり日持ちする食品も。

 それぞれがMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)に入れて持ち、Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を各々バッグに入れる。やはり大荷物を持っていないような状態でどこへでも行けるのはかなりのメリットだ。

 ジリアンの銀髪と水色系の服装に合う青くておしゃれな小さいバッグにこれらが入っているとは思われ難いだろう。レケとベレスはシックな黒のハンドバッグに畳んだMサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)を入れている。ケナの場合はオレンジのリュック。自分のは茶色のショルダーバッグ。

 そこで、ズボンのポケットがビーズの入った瓶で膨れているのが気になった。

 ジリアンとケナが操るのは小さいが、レケのは金具付きの絞り袋。ベレスは内ポケットやらジャケットのポケットまで活用している――暑い季節だとジャケットを着ないだろうから所持数がきっと減る。


 ――みんなが武器を持ち運びやすい何かがここにあるといいんだけどなぁ。今持っているバッグに入れていたらバッグを持ち運ばなきゃいけないけど、バッグを預けて身軽に人や使術動物(ジオアニ)を追えるような……両手が開くような……そんな時に武器携帯に役立つもの……


「ねえ、ポーチ買わない? 武器入れとして」

「なるほど……それは助かりますね」


 ベレスがそう言って、置いてある場所を探した。

「お、あった」と見付けて選ぶ。


「私は水色」

「好きだよね」

「綺麗でしょ?」

「うん、相当似合ってる」

「ありがと」

「僕は白にしようかな」

「俺は茶色で」

「私は黒にします」

「あたしはこれにする」ケナが選んだのは薄いレモン色。


 みんな個性が出ていて面白い。

 これで残金が約384万リギーとなった。

 これからは収入が入って増えていく。任務を月に幾つもこなせばやっていけるだろう。


「さて行こう」


 駐車場に行き車に乗ると、空港へ向かった。

 飛行機でまずアンクウィット市からコロモア市へ。コロモア市から電車、バス経由で、セオン市の山奥に到着。

 バスを降りて眺めたのは、畑と点在する青瓦の家々。青い屋根に白い壁がいいコントラストを生んでいる。

 両脇に畑が広がる道を進む。

 途中、レケが言った。


「ムラサキクダイモの畑だ、綺麗な葉がついてて、圧巻だな」


 それを聞いてふと――もやっとした。


「あれ?」

「どうした?」

「あの……ムラサキクダイモって、礎力素(そりょくそ)が多く摂れる食材だよね。地球にないけど、僕が地球で礎力を回復できたのは……なんでなんだろう。てっきり、自分の中のものが増幅でもされてゆっくり回復したんだろうなって思ってた……けど……こういうのがないとダメだったりしない? でも地球にはないよね? もしあれば……。地球の文化調査隊みたいな人たちも困ったんだとしたら……そっちでの解決もできたはずで……」


 僕がブツブツと言っていると、レケが。


「んー……コレと同様に礎力素を多く摂れるものが実は地球で作られてて売られてるはずだぞ」

「え! そうなの?」

「ん、ああ。主なものはアイレンコンっていったはずだが」

「……! それなら食べたことある。だからなのかな」

「かもな。知らず知らずのうちに食べてたんだろ多分。地球の調査をする礎球人にいいってことで始まったらしいぞ。今や結構広まってるんじゃないか?」

「あー……だと思う。そうだったんだね……」


 身に覚えがある、名前からして藍色のレンコン。たまに食べた。そうだったのか。

 納得してから、ふと思った。


「なんかさ」

「ん?」


 みんなで歩きながら、繰り返し促すのはレケだった。


「地球人に、礎術が発現したりしない? 遺伝に影響を与えるとか……ないのかな……地球に、礎球の……礎力素が摂れるものがあることで――」

「いや~それはないって話だぞ?」


 レケがそう言ったのを、ベレスが解説していく。


「元々影響があるのは『礎根元素(そこんげんそ)』というものだけです、が、それは古代の物質で、今はもう存在しません、今の礎力素(そりょくそ)というものに変遷してきて落ち着いた……という話です」


 なるほどそうなのか、と思っていると、そこへレケが。


「研究者の話は時折よく解らんが、まぁそんな訳で、遺伝に何も影響を及ぼさず、急な発現もさせず、礎力素は消えるだけ。つまり! 地球でも大丈夫、その確信があって売ってある、それだけ知ってればいい」

「なるほど――」

「あ! 見て」


 ジリアンに促されて視線を前にやる。と、建てられた石に掘られた『ジャント村役場』という文字が目に映った。

 もらった書類を確認してみると、そこには――


『依頼:ジャント村役場一同』


 と書かれていた。その下に『ジオガード本部相談番号』というものも書かれていたので、それをメモしておいた。

 入ってみる。

 辺りを眺めていると――年配の女性の役所員みたいな人が、デスクからこちらへと声を。


「あらこんな所までわざわざ。温泉旅行ですか? 宿ならあちらに――」


 手で示された。とりあえずこちらからは身分を示す。


「ジオガードです。依頼を受けて参りました」


 バッグに入れていた証明手帳を取り出し見せた。すると女性が、ほんのりピンクがかった色の手を自身の口元へとやった。


「あらまあ、ジオガード?」叫ぶ時の手にすると。「村長さーん!」


 そして奥の部屋から還暦くらいの男性が出てきた。

 呼んだ女性も呼ばれた男性も、肌がほんの微かにピンクがかっている。


 ――礎球ならではの肌色? なんか嬉しいな、新鮮だ。今までもほんのちょっとそういう要素のある人はいたんだろうな、DNA的に。


 この地域には多いのかなと思っていると、男性が。


「はいはい。おや、どちら様……ん? え! ジオガードですか、どうもどうも、村長のマサ・サオラムです。いやぁ、ささ、こちらへどうぞ」


 全く仕切りのない所に置かれた向かい合ったソファーに誘われた。村長は奥に、こちらは入口に近い方に座って話を始めようとした。その時、村長がいたのと同じ部屋から松葉杖を突く男性が出てきた。彼はこちらに近付いて――


「おい、待てよ、こんな奴らに務まるのか?」

「こ、こら! 何を馬鹿なこと言ってるんだ!」

「ハッ! 追い返せよ」

「コミスィ! 折角来てくれたのに失礼なことを言うな!」


 直後、舌打ちが聞こえた。

 村長に怒られたコミスィという名前であろう男性は、ギプスをした脚を松葉杖で庇いながら歩いて去っていった。


「いやぁすみません、うちの息子なんですが、全く……失礼で申し訳ない」


 ――息子だったのか。それがあんな怪我を……


 僕が思ってすぐ、ベレスが率先した。


「いえ。それで依頼内容なんですが。使術動物(ジオアニ)に困っているということで――」

「はい、ちょっと森に入ればもう。襲われてしまって。こんなことは今までなかったんですが、最近はずっとこうで」

「それはつまり、人里に下りてきている、という――」とベレスが聞くと。

「それが判らないんです」

「判らない?」レケが聞き返した。

「連日違う種類に襲われるんですよ」

「え?」


 と、不思議に思った。チームのみんなも不思議に思っていそうだ。

 こちらの声と間が疑問の投げ掛けと感じたんだろう、村長のマサさんは続けた。


「変な熊のようだと思ったら、また別の日は鹿だったりムササビだったり。もう数日被害が出続けてるんです。見たと思いますがうちの息子も足を折ってしまったし、手を失った者さえいるんです」


 手を失った? そんな……という感想と共に、謎を突き止めようと思った。


「もしそれがただの捕食のための行動でしかないとしたら……」


 僕の言葉に続き、レケが聞いた。


「現場では、その……グロい話になりますが……誰かの肉片が、食べられているという感じでしたか?」

「思い返したくはありませんが、それはもうガッツリと」


 村長は口を押さえながらそう言った。

 相当なものを見たのか。この分だと後味悪い仕事になりそうだ。

 と、そこで村長がまた。


「でも退治というか……その……殺処分? 調べたんですが、人が食べられたならそうせねばならん、と。できるんですか? どの個体が食べたかも調査しなければ……」

「それもそうなんですが」


 ベレスがそう言って、先の言葉を中々出さなかった。

 だから、代わりのように言ってみた。


「この状況、ほかに原因がありそうなんで、それをどうにかしないといけない気がします」

「え……? 原因? って、何が起こってるの?」


 ケナが聞いてきた。それに僕自ら返事を。


「生態系というか、生息域をここまでずらしてる何かがあるというか……そういう何かが起こってそうだなって」


 そこで村長は。


「原因への対処をするにしても……じゃあ、この状況への対策は? どうするんです? もしや何もしないんですか?」

「いえ」僕が率先した。「ちょっと調べさせてもらって……その間何かあればその都度……当面の対処はします、追い払うとかそういう……必要なら殺処分も。でも必要なければ殺処分したくありません。ただ別の方向からの調査が必要そうなので、そっちをメインに、どうして急に出没するようになったかを調べます」


 ――そうじゃないといけない気がする。


「いやぁ……大掛かりになるぞこれは、どうやって調べる?」


 と、レケが聞いてきた。ジリアンからも声が。


「この近くで何か起こった……のを調べるのよね? あ、近くじゃない可能性もあるのか」

「ん、まあ、そうだね」肯いた。「近くじゃないかも」


 ――くぅ……まさかこんな任務とは。ジオガードは大抵調査しないのに。


「とにかく」知らなきゃいけないことがある。だから聞いた。「どういう被害の出方をしているのか。まずよく出没する場所を教えてください。あー……まずはこの辺の地図を描いていただいて――」


 描いてもらった地図に、目撃情報の出た場所や被害のあった場所として印を付けてもらった。それをみんなで見る。

 まずレケが見た通りを口にした。


「なるほど、北はほぼなし、南が多くて西は少し……」


 そこで僕は。


「南に何かあるんですね、行ってみよう、被害の中心地から南に行く。そういう所に何かありそう」


 見やると、チームのみんなが、ふむ……とか、うむ……という風に頷いた。

 そして被害の範囲の中央――複雑な形をした松みたいな一本の大樹の所に来た。マサさんも一緒だ。


「まずは僕一人で行ってみるよ」

「え」レケが言った。

「ああ――上から見るだけだよ」

「ああ、そうか。いや、でも」

「ん? まぁ……そうだね、方向は判らなくなりそうだから、捜索リング、持ってもらっとくよ」


 三つの捜索リング全部をとりあえず出し、不安そうに話していたレケに持たせた。そしてリングサーチャーのうち赤だけを僕が持つ。

 レケの持った赤いリングとこの手にある赤いリングサーチャーに念じ、セットとして認識される。認識された証としてサーチャーの先とリングが淡く光った。そしてその光はすぐに消えた。

 これで、迷ってもレケの所へは戻れる。

 ポーチからは既に小瓶を出していた。それに念じてビーズを出し、穴を小さくしながら大きさを変え、相撲の土俵くらいの大きさにした。

 偶然だが緑の半透明なのが出た。森の上からだと見辛い。それを色変えの能力でほぼ透明にして、乗ると――


「じゃ、ちょっと見てくる」


 森の上空を南下。ずっと見ていても、上から見て異質だと思える物はないように見える。

 これだけじゃダメだったか……とリングサーチャーに礎力を込めると、その先がコンパスのように動き、紐や鎖と共に水平になった。

 示された方向に戻って報告した。

 どう考えても森に入って調べるべきだという結論になると、ジリアンが聞いてきた。


「じゃあどうする? 村のこともあるしチームを分けて調べないと。どう分ける?」


 重要な問題だ。人数は欲しい。ただ、よく解らない原因の場所へケナを……しかも初任務でというのも何となく嫌だ。

 その考えから決めた。


「ケナは残って。レケがケナに付いて。ベレスと僕とジリアンが森に」

「オッケ」とはジリアンが了承。

「ケナ、簡単だとは思わないでね。追い返すだけなのも重労働――同時に別の場所で目撃したらもっと大変なことになる。村は二人に掛かってる」

「任せろ。絶対やり切る」


 レケの返事は自信に満ちている。


「大丈夫」


 ケナはきりっとした目でそう言った――大丈夫そうだ。

 ほかのリングサーチャーも出し、青のそれをちょうどジリアンに、緑のそれをベレスに渡した。それぞれ発動できるよう礎力を込める。淡く光り、そしてその光が消えた。

 ついでに、自分たちだけでは心配なので、さっきメモした相談番号から本部へ連絡してみた。


「――応援を要請したいんですが」

「応援要請ですねー、チーム名をどうぞ」

「月下の水です」

「んー……ええと……あー、ジャント村ですか。ふむふむ……でしたら、手続きや準備その他諸々……ほかチームの任務状況もありますので、二日以上、早くても一日は掛かりますがよろしいですか?」

「はい」


 話はついた。少々時間との勝負とも思ってしまうが。

 当たり障りなく切ってからは――


「じゃあ行ってくる。一日、二日、掛かるかもしれないからそのつもりでね」

「ん、うん」


 ケナの返事を最後に、森へと足を踏み入れた。


 ■■□□■■□□■■□□■■


「アラームの位置がアオオオマツの前だったら無視してよ、ジオガードさんたちが今調査に入ったから」


 村長が誰かにそう伝えた。ケータイを使ったのでもないようだ――よく見るとバッジ型のマイクを服の襟に付けているのが解った。今付けたのか、さっきはなかったイヤーカフが村長の耳にある。確か、それは礎術道具の受信機。


「アラームというのはどういう」


 と俺が聞くと、村長のマサさんは言った。


「村の周りに生体感知器を置いたんです。隙のないように設置して、大きな動物を感知すると村役場でアラームが鳴ります」


 数日前から対策のためにそうしているんだろう。――どんな風に設置したかは想像に難くないな。


「そのアラームが鳴れば俺やケナに連絡してください、すぐに」

「じゃああなた方にも渡しましょう。ケータイでの連絡よりこの通信の方が速いですから」


 役所に戻り、イヤーカフ型受信機とバッジ型マイクを渡された。


「最初に念じてチャンネルは設定済みです」


 そう言ってから、マサさんは声のトーンを落とした。


「息子と……亡くなった村人に渡していたものです」


 ……それを、ケナと一緒に装着した。そして告げた。


「じゃあ……念のため被害のある範囲を実際に見ておきます」


※この回に登場する『アイレンコン』は実際の地球には存在しません。

※この世界観の、このファンタジーの、この物語の中の地球にしか存在しません。

※そういった物を多く描いていると思いますのでご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ