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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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33/114

032 逮捕効率検査箱

 受験番号の若い順にというのは、番号が高齢となると退屈だ。

 それを感じさせまいとしてなのか、マイク越しに実況する人がいた。


「どうも、わたくし、名前はテフォーシェ・ウィアハイトンといいまして」


 テーブルと白い教壇の両方の向こうにスクリーンが現れて、今や逮捕効率検査箱、通称アレスト()アビリティ()チェック()ボックス()の中の出来事を、ツツラさんやリミィさんたちと一緒に受験生みんなが見ている。

 テフォーシェさんが、同じ映像を見ながら解説していった。


「中に入ると見えるのは十五個の大倉庫。まずは記録係から言い渡されてチェックリングというリストバンドを装着します。その手で指示された番号のソウルボールに触れると、対応する大倉庫へ礎力(そりょく)の塊が飛び、その倉庫にソウルパペットが出現します、それを捕らえていく……というのがこの試験の内容となります。さあ最初の一組はどうなるでしょうか。ちなみにこの試験の審査はここにいるヒッツモー・シュレイクス、ツツラ・プエンタガイス、コハク・ヘイマーバイス、リミィ・アーガー、ツァーレ・テイカン、スレク・ツネーイが担当致します」


 テフォーシェさんは、手でそれぞれを示しながら名前を羅列した。

 なるほど審査官として並んでいたのかと思うのと同時に、スーツ姿の監督官はスレク・ツネーイという名前なのかと知ることとなった。

 大倉庫の中は、撮影のセットみたく土があり木が生えていたり建物があったりしている。番号によっては機械工場の中のようになっているものも。そこで逮捕劇が展開していく。

 それを、アレスト()アビリティ()チェック()ボックス()という名の箱の外にいる僕らは、スクリーンに映った十五画面を通して見ている。それができるほどにスクリーンは巨大。


「素晴らしいですね」テフォーシェさんが言う。「十一番倉庫の彼、対象を一度別の場所に置き、そこから飛ばして自分のいる位置を誤解させ、ソウルパペットに背を向けさせました。動きもなめらかで非常にいい!」


 ソウルパペットというのは平均的な大人の人間の大きさらしい。真っ白で表情はない。非常口から飛び出た感じの人形だというのが映像からも解る。近付かれると逃げ、押し倒されたり危機に(ひん)したりするとジタバタし、遠くにいて見付かるとたまに礎力(そりょく)(だん)を撃ってくる、そういう訓練用人形らしい。


「五番、捕まえましたね、そうすると、同一倉庫の真ん中を中心にして点対称の方向――の最も遠くに新たなソウルパペットが現れます、常に二体が一つの倉庫にいることになります。さあ捕まえたら探すところから! 何体捕まえることができるのか。おーっと坂を転げ落ちてしまった、落ちてしまったのは縁起が悪い、折角なんで落ちないで頂きたい」


 そんな実況が続き、僕らを飽きさせない。

 そしてある時。


「2の1の15が別のチームの人とタッグなんですね、2の2の15と2の3の15は今回の試験で唯一の双子姉妹、美しいタッグです。さあいったいどんな逮捕劇を見せるのか」


 2の2の15はゾーニャさんだ。地下でジャンプ力を評価されていた。2の3の15の女性とそっくりだ。どこかに配属されたあと、名物姉妹としても人気になりそうだ。

 それにしても。


 ――別のチームの誰かとタッグ? それもありうるのか。まぁうちは五人だし、四人のチームもあるし……どう組んでもうまくやれるように落ち着いておかないとな。


 またある時は。


「おっと、ここから面白いチームですよ、15の1の48からはリプトラン家がずらっと並んでいます。家族でジオガードというのは意外とありますがそれでも珍しい、しかも二家族です。総勢八人! 今回タッグはあぶれていません。非常に解説しやすい。ちなみに! 彼らの名前もまた面白いんですが……第一試験場の資料によると……頭に必ず『フェ』が付くんですよね、ふぇ~って感じです」


 笑い声が上がった。「これで笑ってしまうとは」という声も。

 ただ反応などお構いなしに、テフォーシェさんは続けた。


「15の1の48から順に、フェルヴィーン、フェセルグス、フェガ、フェテリオル、フェネリー、フェキディア、フェオジー、フェマルツ……フェを抜いた方がそれぞれ呼びやすいのではと思ったんですが、そうすると、ルヴィーン、セルグス、ガ、テリオル、ネリー、キディア、オジー、マルツ。フェガさんだけ虫になってしまうんですよね」


 ふぇぇ~っと思いながら観戦。フェガさんはそのまま呼ばれたりガッチーだとかあだ名を付けられたりしそう――だなんて思いつつ、彼らは全員植物を操るんだな、というのが見ていて解った。花や草、果物なんかを操っている。何だか虫と繋がりがあって奇妙なマッチ感を覚えた。

 制限時間は三十分。その後半になるとある程度コツを掴む者ばかりだ。

 審査項目に関しては、テフォーシェさんは詳細まで教えてくれたりはしなかった。ただ退屈にならないよう面白く中継しているだけに見える。

 直接コハクさんにコツを聞く人がいたが、答えは――


「それはちょっと。とにかく試行錯誤してみて。私たちそれを見るから。頑張ってね」


 ということだった。

 言われた方は「はいっ」と頭を下げて振り向いてから「ちぇ~」なんて言っていた。

 そうこうして、とうとう自分たちの番が来た。

 灰色の箱、アレスト()アビリティ()チェック()ボックス()に礎力を込め、番号を呼ばれた順にとりあえず入っていく。

 箱の中に入ると、イルークさんと、とある男性の姿が。


「俺はグルーシュ。グルーシュ・フェイツって名前です。よろしく。さて皆さん、まずは本人確認です。いい返事をしてくださいねー」


 バインダーを見ながら、グルーシュさんがまあまあ声を張り上げた。


「6の1の74、ジンフィナー・キケ!」

「はい!」

「6の2の74、テイン・プルーベ!」

「はい!」

「6の3の74、セドック・ソロセフェ!」

「はい!」

「6の4の74、ヤツロ・ヤーヌィ・ルドヴァリ!」

「ほいっす!」

「9の1の75、コーベン・トバ!」

「あい!」

「9の2の75、ラメカ・ルタジーデ!」

「はい!」

「9の3の75、パイラー・フーノ!」

「はい!」

「9の4の75、ロウ・ジョー!」

「あいっす!」

「9の5の75、リーキ・ズミー・リラトカ!」

「はい!」

「11の1の74、テイバー・キャジプル!」

「はいっす!」

「11の2の74、フィンブリィ・アウスイット!」

「はい!」

「11の3の74、ミミカ・ガンドハーテラ!」

「はい!」

「11の4の74、ジッケス・ルギヨール!」

「おいっす!」

「12の1の74、オーダン・サルタビー!」

「はい!」

「12の2の74、スー・ハート!」

「はい!」

「12の3の74、ロドシャ・ドーホス!」

「ひゃ、はい!」

「12の4の74、エンルーカ・ケイ・タンダボーツ!」

「はいっ!」

「13の1の75、ベレス・エイスティー!」

「はい!」

「13の2の75、レケメラウガー・ペスターライン!」

「はい!」

「13の3の75、ジリアン・フォスターパック!」

「はいっ!」

「13の4の75、ユズト・ゼフロメイカ!」

「はい!」

「13の5の75、ケナ・イース・ペスターライン!」

「はぁい!」

「15の1の74、ラープ・プツコー!」

「あいっす!」

「15の2の74、ラーロウ・ルタモーン!」

「ほい!」

「15の3の74、グントー・イセックモー!」

「はい!」

「15の4の74、リトーザ・ラッカー!」

「はぁいっ」

「18の1の74、デッカー・ベイナード!」

「ほーい!」

「18の2の74、ザラザ・ルァデアッラメ!」

「はい」

「18の3の74、ピニ・ルドヴァリ!」

「はい!」

「18の4の74、ウイノ・キイサコ・ケペルマン!」

「はいっ!」

「……よし、ちゃんといますね。最初のジンフィナーから順に、番号順に綺麗に並んでください」


 言われて並び終える。と、またグルーシュさんが。


「これより二人一組で大倉庫一つに入ってもらいます。そこでソウルパペットを捕まえます。そのためにまずこのチェックリングを手首に付けてもらいます。……ちなみにこれを付けているだけで礎術を使えます」


 渡されたのはまたリストバンドみたいなもの。『使える』ということは許可カードのような物が中に入っているのか、それともそもそも同じ性質か。

 全員がそれを付け終わるとまたグルーシュさんの声が。


「倉庫に入ってソウルパペットを捕まえると、チェックリングをした方の腕にリングのマークが現れその度に増えていきます。その数や様々な様子が審査対象となりますので、まあ頑張ってください。では皆さん、こちらのテーブルの前に」


 こちらのテーブルというのは、十五個の水晶玉みたいなものが綺麗に並べられ、はめ込まれた、深い茶色の、木目のテーブルだった。まず十二個が三角形に並び、残り三つがそれぞれの辺の外側に。どうやったのか、それぞれの中に、一から十五までの漢数字の白い文字が入れ込まれているように見える。

 その前に集まると、またグルーシュさんが。


「この十五個の水晶玉のほかにも……そちらから見えない所に開始と停止の水晶玉もあります、今それでこの礎術道具の使用開始スイッチを入れました。最初の二人、まず来て」


 ジンフィナーという名前の人ともう一人が前に進み出た。そしてまたグルーシュさんが。


「一人ずつ、一番の文字が刻まれている水晶玉に触れてください」


 二人がそうすると。


「ではこちらのイルークから拘束パーカーを受け取って一番の大倉庫へ向かってください」


 イルークさんの足元には黒くて大きなスポーティな旅行鞄みたいなものが置かれている。恐らく礎術道具の――

 Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)か、Lサイズ(ラージ)容量拡大バッグ(ブリンガー)

 その横に拘束パーカーが既に置かれている。


「入ったらまだ待機でお願いしますよ?」

「了解っす」


 拘束パーカーは一人一着らしい。そこにあるのも、あと十三着なんだろう。

 二人がナイフ状のものに乗って速やかに向かうと、次の二人が二番の文字を――そしてイルークさんから拘束パーカーを受け取り向かう――というのが続き、ベレスはエンルーカさんという女性とタッグになった。レケはジリアン、僕はケナとだ。

 ケナと十一番の大倉庫に向かい始めるという時、振り返って見てみた。テーブルの裏の水晶の中には『始』と『止』の白文字。『始』に礎力を込めて動かし、制限時間が過ぎると『止』の方で止めるんだろう。

 なるほどなぁと思いつつ適当にビーズを出した。青だった。大きな浮遊物にしてそれにケナと二人で乗り向かう。

 目の前には十五までの漢数字が書かれた丸屋根の大倉庫の数々。横に一列でずらっと並んでいる。

 その十一番の前で止まり、降りると、ビーズを小さくして瓶に戻し、シャッターを開けて入った。

 中は明るい。そしてほぼ森だ。

 少し経つとシャッターの下の方から音がした。多分固定されて開かなくなったんだろう。

 そして倉庫内にスピーカーがあるようで、それから声が。


「ではあと五秒で始める」イルークさんの声だろう、多分。「……三、二、一、始め!」


 ■■□□■■□□■■□□■■


「ついにあの子たちね」


 と、リミィが言った。私も正直、どんな逮捕劇が目に飛び込んでくるのかとワクワクしている。

 テフォーシェはあの地下の一番の礎力計測槽を担当していて、彼らの実力を知る機会はあったけれど、アレは四番の槽でのことだ、この様子からすると……きっと気付いていなかったんだろう。

 テフォーシェの実況が響く。


「さあ始まった。今試験最後から二番目のグループ。スピルウッドはチームが多いですよね今年、まだ丸々一グループあります、ちょっとびっくりです。いやはや、さてさて。気になるのは別チームと組むことになってしまった人ですが――リーキとテイバーの組、五番なんかがそうですね、ちゃんと連携が取れるのか」


 私なら九番倉庫が気になる。エンルーカとベレスの組だ。とイメージが湧くのと同時に、ユズト、ケナの組も気になった。あの子たちの成績は尋常じゃない。きっとアレ(・・)を知っている。どうやって知ったのかさえ気になるけれど――

 とにかく。

 実況を、唾を飲み込んでしまいながら聞いた。


「おーっと早い、レケメラウガーとジリアンの組、ジリアンが……口紅の(ふた)でしょうか? それをソウルパペットの顔に被せて視界を奪った! 逃げても押さえ付ける! 難なく身動きを封じるぅ!」


 ――セドックは蝋燭(ろうそく)……ヤツロは――あれは縫い針なのか……


 彼らもうまく戦う。溶かした蝋を手に絡めて固めてしまえばソウルパペットは腕をうまく使えないまま逃げなければならない。蝋燭として機能するならそのまま硬度を操れるのか……どうもそうらしい。

 そしてヤツロの縫い針で刺した場所と場所の間には、透明な壁を一時的に張れるようだ。


 ――有望ね。


 パイラーがフライパンで衝撃を与えた直後、体勢を整えようとしたソウルパペットの視界を――ロウがじょうろを被せ真っ暗にする。このコンビも強い。


「リーキとテイバーはチームが違うものの意外といいコンビネーションを発揮しています。水切り用箸立てですかね、リーキはそれでソウルパペットの足止め。テイバーは隙間から下敷きを放って腹や背に攻撃。ソウルパペットを気絶に追い込み、拘束パーカーを着せていきます」


 テフォーシェが言うからそちらの状況も見たくなる。まあ公平に目を向けてはいるけれども――


「フィンブリィはフリスビー、奇抜な桃色髪のミミカは手鏡を操るようです、隙を突きやすい礎術を扱えそうですね。ジッケスは定規、オーダンは……これは何と言えばいいんでしょう……何か工事現場なんかでありそうな機械を……大きな機械をそのまま操っています。……あ、なるほど、ツァーレさんによるとオービタルサンダーという、板なんかの研磨用の機械……らしいです、普通にぶっ叩く使い方以外に滑らせる……という使い道もあるんでしょうかね、意外と面白い力です」


 皆かなり優秀だ。スーとロドシャは二人共ホースを操っていて、身動きを封じることに関してはかなりのレベルの者同士。


 ――さて、エンルーカとベレスは……


「おーっとエンルーカとベレスも違うチームです、コンビネーションは果たして……おっと? エンルーカが丸い……これは……カッターですか? 持ち手の丸いカッターを蓋をした状態で操ってますね、撃たれた礎力弾を切り裂くのに刃を出しています、いい対象ですね、武器無力化にも扱えそうです。対してベレスは……結束バンドですか! これはもう動きを封じる礎術としては間違いなく有能でしょう! お、行き先をカッターで塞いだ! 結束バンドで足を縛った! 別チームとは思えないコンビネーションです! 注目タッグはまだまだございますが、少々飛ばしまして……十二番倉庫、ラープとラーロウの組! アウトドアで使いそうなプラスチックのコップとウールローラーでソウルパペットを追い詰めます、ウールローラーで一時的に染めた部分に足を踏み入れたソウルパペットは動けなくなっていますね、張り付いたように動けなくさせる能力でしょうか、コップも使い勝手がいい――」


 恐らくテフォーシェは、礎力や操作速度で一番優秀と出ているユズトを最後に実況したいのだろう、その組の十一番倉庫を飛ばされてしまった。

 だが私は見ていた――


 ■■□□■■□□■■□□■■


 走り出して最初にソウルパペットの姿を捉えてすぐ、ケナに言った。


「ケナ、一人でやってみてよ、あまりできてないからねケナの特訓は。これも特訓ってことで」

「ん、解った」


 礎力弾をケナは消しゴムの盾で防ぐ。そして放つ。足を吹き飛ばす勢いで転がすと、その足を地面に押さえ付けて身動きを封じた。

 頭も押さえ付ける。その背に拘束パーカーを被せて抵抗したら逆向きになったソウルパペットを同じように押さえ付け、拘束パーカーに腕を通していく……そのあいだに礎力弾を撃たれそうなら、消しゴムの盾で防ぐ。ジッパーを上げた。となると、もう弾も飛んでこない。

 そしてソウルパペットが消えた。ここから反対側に出現したはず。

 すると、ケナが左腕を掲げ、袖をめくり上げ、注目させた。チェックリングをしたその腕に、腕を一周する黒いリングのマークが一つ出現した。


「じゃあユズトも。ねえ一回一人でやってみて」

「ああ、いいよ」


 駆け出してすぐ見付けると、礎物(そぶつ)として白いビーズを出現させた。無から現れたそれをソウルパペットの首から上にセット。全てが円滑で、隙など与えなかった。


 ――ゼロビジビリティ・ホワイト!


 発動したあとビーズを消しても、ソウルパペットは、自分が何か被らされていないか確かめる動きをしたり辺りを見ようとしたりするだけで、足をほぼ動かさない。実際、視野が真っ白になったソウルパペットは辺りを見ることも一定時間不可能。ほかのどんなこともし辛いはず。

 そこで近付き、ソウルパペットを倒して足を押さえ付けると、上体だけ上げて逃げようとするソウルパペットの背に大きくしたビーズを一枚の板のように設置。ソウルパペットの腕にビーズをはめ込み、さっき設置した背のビーズに向けて腕を無理やり動かし、そこに腕を固定。

 こうすると拘束パーカーに腕を通しやすい。一瞬力を抜いた時に背とビーズの間に入れ込み、上から……という時に腕を通せばいいだけ。通ってしまえば、ジッパーを上げるだけだ。

 難なく着せて終わり。

 そのソウルパペットは霧散した。そして僕の腕に、腕をぐるりと一周するリングの印が、一つ現れた。


「そっか、そうすれば――」

「まあ集中が続けばね。強度的にも拮抗する念動的にも、操る数も多いから」

「頑張る」ケナの目はきりっとしている。

「うん、じゃあとは連携練習ってことにするか」


 ケナはこくりと(うなず)いた。


 ■■□□■■□□■■□□■■


 見てしまった。彼らは一人ひとりですら凄いということを。


 ――なんてことなの。これが受験生? あ、ユズトは色でビーズの力を使い分けてる……? 黒いビーズで遠くまで一瞬で。白いビーズでまた……あれは目を見えなくさせてる? ケナの防御も押さえ付けも的確……。え! あの大きさの壁をケナがッ? あの歳で……。ちょっと待って。嘘でしょ。ユズトは一体()()()使えるっていうのッ? 火で行き場を……ッ? ここまでだなんて。鳥肌が止まらない……なんて子たちなの。


 数秒間、テフォーシェの声が遠のいた気さえした。

 集中して聞いてみると……


「十四番倉庫では、デッカーとザラザ。土鍋で押さえ付けたり大ダメージを与えて、スポンジで目隠し。まあ中々のコンビですよこれも。十五番はピニとウイノ。ピニはヤツロと苗字が一緒ですが、まあ同姓なだけらしいです。ウイノは先の丸い蛍光ペンでソウルパペットにマーキング……探知機能でもあるようですぐ見付けていますね、そこへピニが待ち針で腕にグサッと。するとソウルパペットの腕はそこから動かなくなっていますね、空間に固定する力ですか、なるほど面白いですね」


 そして、テフォーシェがついにユズトのことに触れた。


「私が一番興味を持っていたタッグチームですが……何と速い速い! ユズトとケナはビーズと消しゴム! ユズトは派生技が多いようですしケナはこう見えて大胆な攻撃も的確に行えて今なんと袋小路を自分たちで作り出し追い詰めました、そして……? おや? これは視野を……視力を奪っている? どうなのかよく解りませんが無力化が速い、着せるのも速い! おーっと今度はソウルパペットと一対一かける2の状態に! 何ということだ!」


 私はふと、レケメラウガーとジリアンの組が気になった。同じような現象が起こってはいないかと。


 ――ジリアンはしびれさせて……レケメラウガーは目をクリームで見えなくして……やっぱりこのチームは、協力しても凄い……一人ひとりでさえも……!


 バインダーを持つ手に、思わず力が入った。


「コハク、あのユズトとケナ、リング数、幾つだと思う?」


 言われて、あまりにも考えてしまった。

 かなり時間が経ってからリミィに返事をした。


「じゅ、十……いや、十一個ずつ」


 ■■□□■■□□■■□□■■


「終了! 三十分が過ぎたので出てきてくださーい!」


 イルークさんの声だ。声の瞬間、目の前のソウルパペットが霧のように散ってそれが入口の方へと向かった。恐らくこの倉庫を出てあの机へと向かったんだろう。

 出てイルークさんとグルーシュさんの前に戻る。と――


「一番から順番に出てきてください」


 前に進み出た二人ずつが、腕に黒く刻まれたリングのマークの数を記録された。そして。


「じゃあ一番に触れてください」


 最初の二人がソウルボールだったか……そんな名の水晶に触れたら、二人の腕に出た輪のマークが消えた。


「チェックリングはこっち、拘束パーカーはこっちに返却してください」


 返却する際の汚れが気になった。


「あの。チェックリングはまだしも……拘束パーカーの汚れ、消しましょうか? みんなかなり汚れてそうだし」

「あたしもそれ消せます」とはケナが。

「ケナだと時間掛かるかもだし、僕がやるよ」

「あー……そっか」


 するとイルークさんが何やら悩んだようだった。


「いや、まあ、洗うからいいんだが……いややってもらおうか、その方が汚れを溜めることもないんだもんな」


 みんなの拘束パーカーを受け取ると、念じた。


 ――クリーン・グリーン。


 緑のビーズを礎物化(そぶつか)させた。それに更に念じた。通すものを綺麗にしろと。それからぽいぽいぽいっと通していった――それを、幾つかに分けて持っていく。


「ありがとな」

「いえいえ」


 イルークさんは三十着の綺麗になった拘束パーカーのうち少量を抱えると、Mサイズ(ミドル)容量拡大バッグ(ブリンガー)だかLサイズ(ラージ)容量拡大バッグ(ブリンガー)だか、そんな名前の中身の広いバッグを立て、グルーシュさんが上方を持って固定し、それから開け、入っていった。出てきたイルークさんがまた使った拘束パーカーを持って入っていく。

 最後の幾つかを運び終えたイルークさんが出てきた時にはその手に新しい拘束パーカーが。それがまた恐らく十五着分、目の前に置かれた。そしてそれからバッグが閉じられ、旅行鞄に似合う横向きの置き方で置かれた。


「じゃあほら、次はユズトとケナ」


 グルーシュさんに呼ばれた。腕の黒い輪っかの数を記録され、指示に従い十一番のソウルボールに触れる。

 チェックリングも返す。全員がその手順を終え、言い渡される。


「では試験は終わりです、外へどうぞ」


 出てから次のグループの三十分が終わったあとで、監督官たちは話し合った。そして何やら書いている瞬間もあった。

 数分後、ツツラさんがテフォーシェさんからマイクを譲られると、それを通して――


「ではまず、成績上位を発表する! リング数、すなわち逮捕数の五位は、八個、2の5の15、カービティ・アレステス! 四位は十一個、同率三人、12の4の74、エンルーカ・ケイ・タンダボーツ! 13の1の75、ベレス・エイスティー! 13の3の75、ジリアン・フォスターパック! リング数三位は十二個で、13の5の75、ケナ・イース・ペスターライン! リング数二位は十三個で、13の2の75、レケメラウガー・ペスターライン! そしてリング数一位は十五個! 13の4の75、ユズト・ゼフロメイカ!」


 拍手が響き渡った。


 ――よし! やった! こんな成績を残せるなんて! となると、きっとB型免許のあるジオガードになれる、きっとなれる!


 嬉しさの中で、それでも落ち着こうとした。まだまだ発表は続きそうだ。

 ツツラさんは続けた。


「続いて身体能力についての審査結果、上位五名! 五位は2の4の15、ヴィスリー・ロックバーグ! 四位は同率で二人、6の1の74ジンフィナー・キケ! 10の4の64、ハイデリン・エイクエイチェス! 三位も同率で二名、13の1の75、ベレス・エイスティー! 10の2の64、ナッカー・マッコーダー! 二位は10の3の64、ミッツ・エイクエイチェス! 一位は10の1の64、ノヴニール・マッコーダー!」


 また拍手が上がった。

 ノヴニールさんという人がいるチームの人が全員選ばれている。体格的にもかなり違う。


 ――こんな人たちがいるんだな……うあぁ、マジ尊敬。


 素直に拍手を送った。

 すると、またツツラさんが。


「次は連携力についての審査結果! 上位五組! 五位は、6の3の74のセドックと6の4の74のヤツロの組! 四位は、15の5の48のフェネリーと15の6の48のフェキディアの組! 三位は、13の2の75のレケメラウガーと13の3の75のジリアンの組! 二位は、13の5の75のケナと13の4の75のユズトの組! 一位は、15の1の48のフェルヴィーンと15の2の48のフェセルグスの組!」


 やっぱり連携力は、家族で長いこと互いを知っていそうな、リプ……何とかという家族チームが強い。


「あの家族チーム、苗字は何て言うんだっけ」


 ベレスやレケに聞くと、ざわついた声の中から「リプトランファミリーはやっぱり凄いな」という男性の声が聞こえた。


「リプトラン、だな」


 レケに言われて「だね」と返した。

 いやぁ凄いなあ。と僕が思ったあとすぐ、またツツラさんが。


「あとは……最短時間上位五名を発表する。五位、13の2の75、レケメラウガー・ペスターライン! 四位、18の3の74、ピニ・ルドヴァリ! 三位、15の1の48、フェルヴィーン・リプトラン! 二位、13の3の75、ジリアン・フォスターパック! 一位、13の4の75、ユズト・ゼフロメイカ!」


 発表後はいつも拍手が。それはみんな紳士だからで。

 二度も一位に選ばれたが、もっと何かできたんじゃないかと思う自分もいた。自分が知っているコツを人が知れば、その差が埋まるのは速いかもしれない。連携力や手際、絶対的な筋肉量、体の動かし方からして、やれることはまだまだありそうだ。

 周りにどう言われようと、自分に足りない部分はある。周りの人にも、自分にない部分がある。

 自分は何から取り掛かればいいか。そのことが頭に浮かんだ。

 それからまたツツラさんが。


「B型免許用試験の結果を発表する! 呼ばれた者のチームはこの上の階へ行くこと!」


 そして中々呼ばれなかった。若い番号からだから当然ではあるが……次第にドキドキしてくる、これだけ結果が出ていて一度は『きっと受かる』なんて思ったが、それでも、致命的な部分があると判断されてしまうこともあるのではと……

 手をぐっと組んで祈ってしまう。

 その姿勢でいると、ツツラさんの声が――


「13の1の75、ベレスのチーム!」


 ――呼ばれた! やった! やった……ッ!


 想いの強さのせいか、拳を握っていた。

 嬉しくなるのと同時に、ベレスはどう思ったんだろうと気になった。そちらを見てみた。


「……っ……!」


 念願のジオガードに、しかもB型免許の方にまで受かった……兄への想いも抱えたベレスにとって、これは、一つの夢をかなえた瞬間――


「よかったね、ベレス」


 そしてふと思った。もしかしたら、その名を呼ばれたこと自体にも、ベレスの胸に来るものがあったのかもしれない。


「よし、行こう、みんなで」

「さあほら、ベレス、行くよ?」とはジリアンが言った。


 ケナもレケも嬉しそうだ。ただ、レケはどこか遠くを見る感じもあった。が、口角は上がっていた。そしてこれからへの決意も感じた気がした。やっと酷い奴らを捕まえる仕事ができる……と意識しているのかも。

 僕もだ。気を引き締めよう。これからは本物が相手だ。

 思いながら階段を上がっていった――その時その瞬間にしかない一歩一歩を踏み締めながら。

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