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星のバラスト  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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013 安静と激動

 一週間安静というのは中々に退屈だ。

 自分が今横たわるベッドの右横には台があって、その台には洗面器が置かれている。

 その中にはタオルがある。同じ台には替えのガーゼや包帯も――しかもきちんと畳まれた状態で置かれている。

 台の隣には丸椅子が。

 そこに座っているベレスさんが、七回指を折り曲げてこう言った。


「約束だと次の火曜日までですね、安静にするのは」


 被弾したお腹が突っ張っていて、しかも弾は貫通していた訳で。これから一か月間は激しい運動もしない方がいいんだろう。

 ただ、言葉を聞いて気になった。


 ――曜日って礎球(そきゅう)と地球で違うのかな。


 そういえば日曜日に向こうに行ってレジリア礎術(そじゅつ)大会当日が日曜日だという表現を耳にした気がする。

 もしかしたら意味なんかが少し違うかもしれない。

 それを聞いてみた。すると。


「曜日は日月火水木金土と同じですが、意味は違いますよ」

「え、違うの?」

「はい。地球と合致した方が便利ではあるんですが、礎球からでは見える星も違いますしね」

「あー、そっか、そうですよね」

「ええ。礎球でも太陽は太陽と呼ばれますが、それ以前はテヌートという呼び名だけでした。二つの月はそれぞれ、メレナとニノク。近くの惑星も火星や水星とは存在自体違います」

「だろうなあとは思ったんですよ。昔はそれこそもっと違った――んだろうなぁ……。でもそれでよく同じ曜日にしましたよね、先人も」

「意味付けがなされたんです。『この星から見て始めに日の光あり、そして月と火があり、星の上に水生まれ、緑なるものが生まれ木となり、金の形変えて道具とすれば、土がよく解される』……つまり、星の歴史と人の営みを当てはめたんです。ゆえにこの曜日がすんなりと受け入れられました」

「ほぇえ……! なんか、凄くいいな、いい響き。好きだなあ」

「私も好きです。個人的には、自然への感謝がこの形になったと思っています」

「そっか……」


 ――本当にいい意味だ。

 そういえばと思った。そもそも日本語が当たり前に使われているのはなぜ――

 と、聞いてみると。


「大陸七つがそれぞれ国だったんですが、それらが一つの国に統一されてすぐの頃、とある事が起こったのが発端なんです。標準語を広める必要がありましたが、世を統一した国がその国の言語だけを広めると角が立つと当時の王が言ったらしいのです。幾つかの州にリンクゲート設置を試み、スピルウッドで……あの地で成功したため、そこから地球の、特に日本の――平安時代からの――言語を取り入れることで、上も下もない平等の学びを分かち合うことにしたのです。それが共通語になった、と――」

「というか平安時代、解るんだ」

「ええ。地球ミュージアムもありますよ」

「へえ~」

「そしてですね、その学びは言語のみではなかったんです。技術も広まって、生活水準も向上しました。このことを受け継続的に取り入れることになり、そのため地球文化調査団が作られ、調査をするのであれば言葉の変遷さえも理解する必要があり、常に日本語の変化さえも学ぶことになりました。なので、現代の日本語よりも少し古めの日本語が広まっている段階なのです、今は」

「ほへぇ……はぁぁぁ……なるほどなぁ。……え、それって凄いな! もしかしてその措置を取った王って、ゆくゆくは技術を学ぶつもりで、今みたいになるって解ってて狙ってやったんじゃ」

「かもしれません、実はその説は濃厚なんです。そういった技術を大陸の端々に伝え、生活がままならない地域を減らせればと……統一王にその想いもあったためにリンクゲートの設置が試みられたのではと考えられています、水準の偏り方がその証拠として挙げられているんです、広まるのは早かったそうです」

「ほへぇぇ、マジか。凄く民衆のことを考えてる王様だったんですね」

「そうですね、私も同じ印象です」


 ――だから日本語がこんなにも通じてるのか。深い関係があったんだな、元々。


 それにしても。自分たちで革新していく技術はあるんだろうか。それはあってほしい。そうでなければ自分たちの技術に落とし込めているとは思えないからだ。

 もし地球がなくなったら礎球(そきゅう)の人たちはどうするのか。――まあそこまで考えるのは極端かもしれないけど。

 そのことを僕が言うと、ベレスは頷いた。


「最近は文化研究と言っても観光のような雰囲気で、本格的な工場視察なんかはめっきり減っているそうです。それでも減らない視察もあります。医学や薬学に関してです」

「そっか。まあそれは解るなぁ、大事な人が若くして死ぬとか、嫌だしね」

「……ええ」


 ――医術関係以外なら、もう独自に進歩していきそう……なのかな。それができそうだ。そうだといいな。新技術を見付ける喜びとかを礎球の人たちが知らないのも何となくヤだしな、それに自らの手で生み出したっていう感じを……まあ、知らないこともないんだろうけど。


 話が尽きたら軽い運動やゲームをしたくなる。

 過度な運動は駄目だから本当に軽いものしかできず、それが飽きたら本を読む。僕の場合漫画だ。

 ベレスさんは――ゲームに参加することもあったけど――今は、背筋を伸ばして黙々とある本を読んでいる。

 気になって聞いた。すると。


「ああ、これは……ジオガードの組織内にだけ発行される雑誌――社内雑誌のようなものです」

「ふうん? ジオガードって何? 警備会社か何か?」

「ジオガードというのは、治安維持に関わる団体の一つです。ほぼ礎術(そじゅつ)を使える者だけで構成されています。警備会社とも警察とも違います」

「ふんぇ? 警察とも違うんだ?」

「そうですね、別です、協力することはあります。ええと……まずですね……市警、州警の上に州を越えて捜査できる越州警察がありまして。それでもどうしても現行犯の団体や指名手配犯を捜査するのに警察だけでは足りないことがあります、その協力をジオガードがしたりします。いわば特殊部隊です」

「へえぇ」

「読んでみますか?」

「え、いいなら読んでみたい」

「いいですよ」


 渡されて、最初のページから目を通してみた。

 ざっと見る限り、どんな事件が解決したか、それはどう解決したか……ということが多く書かれていた。途中に『あのメンバーはこんな髪型にしていた』であったり『あの人とあの人が実は? 突撃取材!』であったり、写真集になっている部分があったりと、かなり賑やかだったりもする。

 あるページには成績ランキングというのがあった。

 一位は『銀の弾丸』で、一年で四十件解決、と書かれていた。


「チーム……で動くっぽいね、ジオガードって」

「そうですね」

「何人くらい必要なの? チームになるのには」

「四人以上であればいいはずですよ。面白いことに、二十人以上のチームもあるんです」

「ほへえー、多いな。ふうん、そっか、それだと、ひとり一人が休みやすそうでいい形なのか」

「そうですね。誰かが休んでもその代わりを誰かができるので、穴が生じない……まあ、それでも五人のチームが多いですよ、人数が欲しければ合同任務になりますし」

「そうなのか、なるほどぉ」


 警察やジオガードが様々な事件を解決していく、犯人を追跡していく――そういうイメージが脳内を巡った。


 ――あ。じゃあ、そっか、警察だけじゃなくそのジオガードとやらも、もしかしたら、お母さんの件を調査してるのかな。もしそうなら、ただ待つだけでもその犯人たちは、きっと、いつかは……。なら、僕の出る幕も無いかもな、僕にできることがあるかもと思ったけど。……それにもう十何年も前だし。……ただ、まあ……既に捕まっているかどうかについては、どうしても気になる。


 聞いてみた。するとベレスさんは少し考えてから言葉にした。


「秘境の七民族という話がありまして。秘境民族同士では繋がりがあるらしいんですが……覚えてますかね、お母様の話の中に入出の宝石(アクセスストーン)という言葉があったでしょう」

「ああ、うん、そういえば聞いた」

「それを使って秘密の民族同士は互いに出入りをしていたそうです。ですが、お母様の事件を知った別の一族が、入出の宝石(アクセスストーン)を誰にも渡さない形で国へ報告し、事件の現場を見せたおかげで、明るみに出て調査はされています。が、まだ捕まってはいないという話です」


 ――え、そうなのか、捕まってない……――でもまあ、礎球(そきゅう)の問題だよな。警察やそのジオガードとやらが、やっぱり何とかやるだろうし。僕らは地球で暮らすんだし……それもこの先ずっと。礎球の治安は守られていくけど、そうするのは僕じゃない。まあドナさんは別かもしれないけど。……印、消えないのかな、どうなんだろう。


 ただ――礎術(そじゅつ)を使うほどの緊急事態に陥らないとも限らない。

 礎術の仕組みを聞いておきたくなった。


「あの。ベレスさん」

「何でしょう」

「礎術って、属性とか分類とかあるの? というかあるよね?」

「まあ――」


 それはこういう事だった。


 礎術というのは、対象に特別に作用し維持すること、もしくは、現象を起こすということ、この二種類。



 ◎対象への変化による礎術・維持タイプ


 対象に『どんな変化を与えるか』――その変化には、速度、色、味、におい、温度、大きさ、長さ、重さ、硬さ、粘性、弾力、透明度、更にはゲート化などが挙げられる。これらを維持するのに礎力(そりょく)を消耗する。存在そのものを操るという意味で対象物を出現させることもあるが、念じ続けなければならず、その場合途絶えると消える。鏡型のゲートを出すのはこういうタイプらしい。

 これを維持タイプ、維持型などと呼ぶ。



 ◎対象物や手、視線の先などに念じて物事を起こす・瞬間発動タイプ


 瞬間発動タイプは、瞬間脱着、火を起こす、爆発が起こる、乾く、セメントなどが固まる、凍る、電池が復活、水などが溜まる、空になる、新品に近付いた状態になる、強風が起こる、割る・ヒビを走らせる、割れを直す・ヒビがない状態にする、(切り傷などが)ない状態に戻す、眠らせる、眠りから覚ます、操作対象を(素材となるものから)捻出する……といったものが挙げられる。これらは瞬間に礎力を消耗する。程度や量が関わるものは礎力の消耗量で効果が変わる。燃え広がった火は消火剤や酸素量によって消されなければそのままだ。



 ◎対象不定維持タイプ


 とにかく速さだけを操る、何でも重さだけを操る、どんな対象でも温度だけ操る、とにかく糖度だけを操る、何のでも固さだけを操る、何のでも大きさだけを操る、環状の物であればどんな物の性質も輪ゴムの性質にする等々、派生技のない維持型の礎術。



「テレパシーを行うために誰かをそれが可能な状態に一時的にする…ダイアン様のこの力は瞬間発動タイプです、変化が大事で、維持に礎力を使っていません。丸鏡のゲートに関しては維持タイプです」

「ほうほう。じゃあ、この、探し物に目印をつけるやつは?」


 こちらの左手のひらを示すと、ベレスさんが。


「ドナ様の礎術は…ちょっと待ってください、頭の中で整理させて頂きます」


 何やら考えたあとで、ベレスさんがまた。


「ドナ様の場合は、『礎力を込めたら目印が立ち昇るマークを探し物に付ける光を飛ばす』という礎術……少し難しいですがこういう言い方になるかと思います。そしてこれは瞬間発動タイプですね、更に、対象が人間であればその者からも目印を立ち昇らせることができるので、付与に少し近いですね、これも変化が『起こる』のが大事で、立ち昇らせられる状態の維持に礎力を使っていません、瞬間発動タイプの特徴です」

「あー……ふうん……」


 ――これ、ちゃんと消えるんだよな? いつ消えるんだろう……


 そう思いながら、また手のひらを見た。


「あれ? 確か……タミラさんも鏡のゲートを使えた……ってことは遺伝してますよね? 多分」

「あー、そうですね……それが何か?」

「あ、いやぁ、ドナさんにもその可能性があるんだろうけど……」

「そうですね、ドナ様も鏡のゲートを生み出せる可能性はあります」

「やっぱり! この前もう一つ言ってたよね、状況打開を望んで覚えるっぽい話を――」

「ああ、専心礎術(せんしんそじゅつ)ですね。その望みが心に強くあるほど目覚めやすいですが、必要なほど差し迫っていなければ覚えにくいという一面も」

「ってことはですよ、目印を付けるのは何か強い想いがあって覚えたんでしょう? ドナさんの身に……もしかして何かあったんですか? 覚えた当時」

「……実は」


 ベレスさんは、神妙な面持ちで言葉を紡いだ。


「切っ掛けは、ドナ様が中学生の頃です。行事でスキー場へ行った先で、ご友人の一人が、いつまで経っても帰ってこなかったそうです。救助隊を呼ぼうという話になって、心配でいても立ってもいられなくなったドナ様から光が飛び……もしやと念じて螺旋の光が立ち昇るのを見て――」

「そっか……その、ドナさんの友達は」

「無事見付かりましたよ」

「そっか、よかった」


 友人が無事に見つかったこともそうだが、この話を聞けてよかった。

 礎術は恐ろしいものじゃない。

 恐ろしいと思う時があれば――それはきっと人間のせいだ。


 一週間が過ぎるのは早かった。

 南萌鳴(なもなき)高校に通うのはそれから再開した。

 特に心配されなかった。入院していた、安静にしていたという話は先生から聞いて皆知っていたらしく、触れてもこない。

 僕と話した場合のデメリット。皆の脳内にそれが浮かんで警告となっているのかもしれない。

 まあいい。そう思うのは、筋を通さない人との繋がりなど、僕にはどうでもいいから。

 今日も壁に叩き付けられ、金をせびられた。

 断ると殴られ、立場を理解しろウジ虫と(ののし)られる。


 ――どうでもいい。こんな人らとの関係なんてどうでもいいから、やっぱり抵抗すべきか?


 礎球で色々とできてしまってから、よく考えるようになった。正せるんじゃないかと。

 でも、抵抗すれば、彼らに正当性を持たせてしまう気がした。暴力で訴えたから立場がよくなった、と。そうなってしまえば――その行為は、彼らがしたのと同じだ。ただ、正当防衛なら? とも思った。


 ――だったら僕は。


 ビーズの瓶を持ち歩いていた。何かあった時用に。

 その『何かあった時』に自分の事を含める気はなかった。が、含めた方がいいかもしれない。自分を守れたら誰かを守れるのかもしれない。そんな気がして――

 だから放った。強烈な一打。念のため肌色のビーズにして拳大に。

 くの時に曲がって相手が倒れる。

 そして瞬時に最小化してから礎力を込めるのをやめた。


「ふざけた事ばっかりしてんじゃねえよ、僕はお前らに何もしてないだろうが。ったく。クズがもっとクズになりたきゃ殴ってきなよ、グレードが下がるけどね。ほら、来てみろよ、どうした? ん?」


 舐められないためにはここまでしなきゃいけないんだろうか。……少し自己嫌悪してしまう。こうやって殴ったりしたい人って、何がしたいんだ?

 さっきのビーズで、何人かが倒れて動かない。

 それを見たからか、彼らはビクビクと怯えて去った。


 ――はは、そんな程度だったのかよ、あほらし。


 さて。

 今後は人のためになることをできればいい。そのためにどうするか。そのために何をしようか。


 ――こういうことにも邪魔する奴がいないといいけどな。


 ……数日が経った。

 時が経てば経つほど彼らとは関わらなくなっていった。が、彼らは別の誰かをターゲットにし始めただけだった。と思ったら、そいつは僕が前にかばったことがある人だった。同じ一年の男子。前から何度も似たような事をされていた。

 それを考えるとまた怒りが湧いた。


「いい加減そういうのやめたら?」

「お前には関係ないだろ」

「こいつが何をしたんだよ、言えよそれを」


 暴行の主犯は相手の胸ぐらをつかんだまましばらく無言だった。


「言えないのかよ。何か理由があるんなら言えばいいだろ」

「実はよ、こいつがある女に気持ち悪い目線を送ってるみたいなんだよ」

「はあ?」


『こいつ』がそう言って表情を歪ませた。

 主犯が睨みを利かせて――


「しかもちょっと前にその女の胸を揉んだんだと!」

「違う! そんなことしてない! 心当たりはあるけど」

「あるんじゃねえか!」主犯がそう言ったけど。

「だから違うんだって! 聞いてよ! 帯を持って振り回してた道着が偶然当たっただけなの!」

「んだとッ? ふざけた嘘ぬかしてんじゃねえ!」


 そこで、唐突に女の声が聞こえた。


「それは本当なの! ちょっと誇張したら変な噂流れるし、もうなんなの! 私はされてないから!」


 必死な声だった。真剣で、嘘なんてなさそうで。歩きながら訴えてきていた。


「だってさ」


 僕がそう言うと、主犯が胸ぐらから手を放した。


「お前もそうだったんだぞ」

「え、何が」

「お前も、似たような話をされてた」

「あ? どんな」

「年上の女に手を出したって」

「はあ? そもそもデートの経験もないしだな」

「そういうのじゃねえ」

「は? いや、だから、どういうのでも手を出すって事自体したことないんだって」

「でも! その噂があったからだからな、この前までのも!」

「いや、そこ叫ぶトコかよ。噂信じ切ってやり過ぎたの誰だよ、自分のせいだろ? 確かめもしないし。それにパシっていい理由にはなんねえだろクソがよぉ」――ああもう、僕も怒りだだ漏れだよ。

「ぐっ……そ、それは……そっ、そうだな、悪かったよ」


 これで解決はしたのかもしれない。

 翌日。

 胸ぐらを掴まれていた男子ももう関わってはいないらしい。今まで本当に色々あったからやっと清々した。

 でも、クラスの知人が話し掛けにくることはなかった。

 そんな感じだから、こちらから声を掛ける気もない。


 ――僕が欲しいのは、そういうことで変わる友達じゃない。ちゃんと中身を見る友達……の方がいいのは、誰だってそうだろうな。まぁいい方に変わることはいいコトなんだけど。


 その日の放課後、すれ違うと、舌打ちをされたが、凄まれたりはしなかった。

 代わりに彼はこう言った。


「噂流してたのはあの女とは違う――別の女なんだけどよ。俺はどっちもそいつから聞いたんだよ。よく解んねえけど、俺は体よく使われただけっぽいな。腹ァ立つぜ、ったくよ」


 そして去っていった。


 ――何をしたかったんだ、噂流した奴も。


 数日後。噂を流した女が誰なのかをあの男から詳しく聞いて、その女(上級生)の言うことを陰で聞いた。


「あのストーカー二人はまだ学校から消えないの?」


 つまりはその女の思い込みで、僕らはこの学校から消されかけた。――もうあほかと。手段がおかしい。話し合えば誤解だけでも解けたのに。

 ということを話してみたら、言われた。


「絶対それ嘘」

「絶対ってなんでやねん」


 ついツッコんでしまう。

 やれやれと、そんな事を思う日々。

 音声は録音しておいたので、それをあの男子の教室と僕の教室で流し、釘を刺しておいた。


「どんな噂を聞いても無責任に広めるなよ。言葉に、っていうか言動に責任を持て。本人に確認とかもしろよ、嘘を広めるかもしれなくて怖いだろうが」


 本当に腹が立つ。

 それぞれの教室でそんな風に言って、教室で一人ポツンとしていても、話し掛けられはしなかった。怖がられてしまった?

 もう、信じられる人とだけ、いられればいい。まっすぐ向き合える人とだけ。嘘はあってもいい、白い嘘は、ね。傷つけないようにと相手を考える人と一緒にいたい。度を越さない程度にはっちゃける分には別にいい。

 人の気持ちを大事にしたい、守りたいと思ったから、ゆくゆくは――警察もいいな、と思った。

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