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あの日、キミを助けたのはオレでした  作者: 心音ゆるり
第一章 熱海道夏は知ってしまう
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第27話 運命の二択




 無事、熱海と仲直りすることができた木曜日を経て、金曜日。

 彼女が朝チャットで『いつもの時間に行く』と送ってきたので、俺もそれに合わせて学校に行く準備を進めた。

 そして、玄関で対面。


「……なんかさらに目が赤くなってないか?」


「気のせいよ――それより、はいこれ」


 熱海はあきらかに気のせいではない目でそう言って、俺に四角い包みを差し出してくる。勘違いでなければ、弁当箱だと思うのだけど。


「……え? まさか俺の分も用意してくれたのか?」


 疑問符を浮かべながらも俺は弁当箱を受け取――ろうとしたのだけど、熱海が「片手じゃ難しいでしょ」といって、俺の通学バッグに入れてくれた。


「ちゃんと左手だけで食べられるようなメニューにしたから安心しなさい。食べたくなかったら捨ててもいいから」


「捨てるわけないだろ!? あ、ありがとな」


「気にしないで。これは―そう、王子様に食べてもらう実験台みたいなものよ」


「その言葉が無かったら素直に喜べたんだけどなぁ」


「あたしの手料理が嬉しくないって言いたいのかしら?」


 そうニヤついた顔で言いながら、熱海はぐりぐりと俺のわきばらを親指で押してくる。

 くすぐったいのと照れくさい気持ちが同時に襲ってきたので、反射的に「ウレシイデス」と棒読みの返事をした。


「じゃ、行きましょう。手、繋ぐ?」


「俺は子供か。あんまりからかわないでくれ……耐性ないんだから」


「あははっ、ごめんごめん」


 クスクスと口に手を当てて熱海が笑う。仕返しに本当に手を握ってやろうかと思ったけど、恥ずかしさが邪魔をして結局ダメだった。

 いつか実行して熱海を驚かせてやろうと思いつつ、二人並んで駅を目指した。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 駅に付くと、そこにはいつもの三人が俺たちを待っていた。

 まだ待ち合わせ時間までには少し時間があるけど、全員集合だ。


「「おはよー」」


 俺と熱海が同時に挨拶をすると、三人もそれぞれ挨拶を返してくれる。

 蓮と黒川さんは嬉しそうに、そして由布は俺と熱海を交互にじろじろ見ていた。

 それから由布は難しい顔をして、


「……気付いたの?」


 そんな短い言葉を、俺と熱海に投げかけてきた。

 気付くって――なにを?

 意味が分からずポカンとしていると、熱海が物凄いスピードで由布の手を引いてどこかに行ってしまった。さっぱり意味がわからないんですけど。


「あれ、どういう意味?」


 なにやらコソコソと話をしている由布と熱海を指さしつつ、蓮に聞いてみる。

 すると蓮は、肩をすくめて「どうしたんだろうね」と口にしながら、なぜか悲し気な表情を浮かべた。


「それよりもさ、仲直りできたようで良かったね。僕も(つむぎ)も心配していたんだよ」


「本当だよ~。みんな仲良くしようよ~」


 蓮に続き、黒川さんも眉をハの字にしてそう言ってきた。そして彼女は、俺の左手を握って上下にブンブンと振る。

 ……昨日の件があったあとで良かったな。これを熱海が目にしていたら『言いなさい!』と詰められていただろうし。


 黒川さんの手を解きつつ、二人に「心配かけて悪かったな」と口にしていると、熱海と由布が帰ってきた。というか、そろそろ電車が来る時間だぞ。

 改札に向けて足を進めながら、「何の話をしてたんだ?」と熱海に聞いてみることに。


「へ? あ、あのね、えっと――」


 すると、熱海はしどろもどろになって口をあわあわとさせ始めた。どうしたんだコイツ。


「お互いの良い部分に気付けたのかなーって意味だよ? ね? みっちゃん」


「そう! そうよ!」


「……なるほど?」


 釈然としないが、意味としては合っている……のか?

 誤魔化されているような気がしなくもないけど、別になにか悪いことが起こっているわけでもないだろうし、気にしなくてもいいか。


 首を傾げながら歩いていると、由布に手招きをされて、集団から引きはがされる。

 前方を歩く熱海がこちらをチラチラと見ていた。前にもこんな状況があった気がするけど、チラ見の頻度が前の五倍ぐらいになっている。


「ねぇねぇアリマン、ちょっと質問なんだけど」


 由布は、そんな風に話しかけてきた。「なんだ?」と聞き返すと、


「『手を伸ばせば手に入る恋』と『地獄の向こうにある真実の愛』、アリマンが選ぶとしたらどっち?」


 由布はそんな二択を提示してきた。

 恋愛を知らない俺に恋だの愛だの聞かれても困るんだが。わからないと答えようと思ったところで、「真剣に考えて」と真面目な表情で追撃されたので、頭を働かせてみることにした。

 ふむ……恋とか愛とかってことは、相手が必要不可欠だよなぁ。


「その地獄とかって、俺だけ? それとも二人とも?」


「みんなだよ」


 俺からこの質問がくることを予期していたように、由布は即答する。二人と言わずにみんなと言ったことに少し違和感を覚えたが、たぶん大した意味はないだろうと判断して、二択を考える。

 両者とも地獄を見るのかぁ。これは判断が難しくなってきたぞ。

 うーん……でもやっぱり、


「恋愛はまだよくわかんないけどさ、お互いに強く想いあっていたほうが幸せだろうし、選ぶなら『地獄の向こうにある真実の愛』かなぁ――ところで、この質問になんの意味があるんだ? 心理テストとかそういう感じ?」


「あははっ、アリマンならそう言うと思ったよ! これはちょっとうちのクラスで流行ってた質問だから、深く気にしないでいいよ~」


 そういうことか。男子の意見として参考にしたいとかそんな感じだろう、たぶん。

 朝の一幕――他愛のないやり取りだったのだけど、のちに俺は思い知る。


 この選択は、俺の将来に――人生に大きな影響を与える、とても大事な選択だったのだと。





ここまでで第一章です!

お読みいただきありがとうございます!


このあとSSを一話上げまして、それで本日の更新は終わりとなりますが

明日からは午前八時から午後七時まで、一時間に一話、合計12話アップする予定です~!

(もしかしたら、更新頻度は変更するかもしれません。ご了承ください)


この物語を『面白い』、『続きが読みたい』と思っていただけましたら、

なにとぞ評価やブックマークをよろしくお願いいたします!!



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