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あの日、キミを助けたのはオレでした  作者: 心音ゆるり
最終章 振り返れば、すべて必要なことだった
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第119話 熱海の誕生日は?





 どちらから告白をして、どちらが告白を受け入れたのか。


 そのことに関しては、俺たち自身もよくわからなくなっていた。だってお互い告白のようなものをしているし、お互いが受け入れたような形だし。


 間違いないのは、熱海が俺の恋人となったという事実。彼女にとっても俺にとっても、人生で初めての交際となるわけだ。


 あの日公園で熱海と話してから数日が立ち、蓮や由布、もちろん黒川も交えて、俺たちは夏休みの宿題を一気につぶした。彼女たちには俺と熱海の関係の変化についてすでに話をしているため、いつも通りというわけにはいかなかったが、悪い雰囲気になることはなかった。


 宿題の進み具合に関してだが、相変わらずというか予想通りというか……由布はほとんど進捗が見られない状態だったので、蓮が笑顔で怒るはめに。


 まぁそれはいい。自業自得ってもんだ。


 で、俺を含む残り三人はというと、得意科目の違いから、熱海が俺と黒川に教え、そして俺と黒川が熱海に教える――という体制をとっていた。


 とはいっても、この三人中で一番学年順位の低い俺でさえ学校では上位に位置しているので、そうそう困ることなどない。半ばじゃれあいのようなものだった。



 そして、夏休みも終盤に差し掛かった夜。


 ベッドで横になってスマホを見ていると、黒川からチャットが届いた。


『こんばんは! 有馬くんまだ起きてる~』


 いつもと変わらない、元気があふれているような文面。


 彼女は俺や熱海の件でいろいろ複雑な想いを抱えている――もしくは抱えていただろうが、チャットでは本当にいつもの黒川といった感じだった。俺を含め、五人全員が平穏を取り戻すために気を遣っているようにも思える。


『俺は十時過ぎに寝るからな、まだ起きてるよ。それで、どうしたんだ?』


『そう言えばそれぐらいだったね~。そう! 道夏ちゃんの誕生日プレゼントって有馬くんはもう何か買った?』


 誕生日……プレゼント? あれ、そう言えば熱海の誕生日って知らないな。


『もしかして、近い感じですか?』


『あはは……知らなかったんだね。しあさって、八月二十五日だよ』


 思わずスマホ手からポトリと落とした。ベッドの上だから、落下距離は短いけれど。衝撃が大きい。


「マジかよ……熱海のやつ、ちょっとぐらい匂わせてくれたらいいのに……」


 まぁ性格的に自分から言い出す奴じゃないよなぁ。むしろ、熱海の名前に『夏』の字が入っているのにも関わらず、いままで気にかけていなかった俺がバカすぎる。


『やばいな。黒川はもう何か買ったのか?』


『んーん! 私もまだだよ! それでもしよかったらさ、明日か明後日一緒に道夏ちゃんのプレゼント買いに行かない? 由布さんたちも一緒にさ!』


『それは助かる。蓮には俺から連絡しておくから、由布のほうは頼んでいいか?』


『もちろんだよ~! みんなの空いている日をすり合わせよう!』


 熱海を仲間外れにしているようで申し訳ないが、出かける目的が彼女へのプレゼントなのだから仕方がない。できれば黒川たちの意見は参考程度にしておいて、出かけるまでにある程度自分で目星をつけておきたいところだ。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 熱海に怒られやしないだろうか……。初めての彼女なので、この辺りがよくわからない。


 ま、まぁ俺はともかく、熱海は黒川の性格をしっかり把握しているだろうし、変に疑うことはないと思うが――。


 そんな風に俺が頭を悩ませている理由は、蓮と由布の都合がつかず、俺が黒川と二人で誕生日プレゼントを買いに出かけることになったからだった。


 いちおう俺の間違いだったらいけないので由布に聞いてみたのだけど『誕プレ&ヒナノンなら大丈夫じゃない?』との回答をいただいた。


 一人で買いに行くという選択肢もあったのだけど、なんだかここを気にしすぎすると逆に黒川を意識してしまっているようだし、むしろ堂々としたほうがいいのかもしれない。


 そんなことを色々考えた結果、あとで正直に熱海に説明しようという結論を出して、お出掛けを決行することになった。


 黒川とは昼過ぎに駅前で待ち合わせをしてから、以前ゴールデンウィークにも行ったデパートに向かった。彼女たちがナンパされたり、俺のピエロスマイルのプリクラを撮ったあのデパートである。


「有馬くんはもう目星はつけてるの? 私はね~、リップクリームとハンドクリームにしようと思ってるよ!」


 デパートのエスカレータを昇っていると、上段にいる黒川がこちらを振り返って話しかけて来る。リップクリームとハンドクリームかぁ。


「なるほど……その辺りは俺にはわからない分野だな」


 乾燥なんて気にしたこともない。洗顔だって、顔を洗ったらそのまんまだ。乳液とか化粧水みたいなものは付けたことがない。


 俺も黒川と連絡を取り合ってからネットでいろいろ調べてみたのだけど、たしかに彼女の言う通り、コスメ関係――と言っていいのかはわからないけど、それらの商品はプレゼントのランキング上位だった気がする。


「最初のお祝いだし、なにか形に残るものがいいかなって思ったんだけど、これってちょっと重いのかな?」


「んーん! 私もそっちのほうがいいと思うよ! でも、できれば壊れにくいものがいいかも? 大事な思い出だから、マグカップとか割れちゃったりしたらショックだし」


「あー……そのことは考えてなかったな」


「絶対に割れない素材とかだったらいいと思うんだけどね~。道夏ちゃん、意外とおっちょこちょいだったりするからなぁ」


 そうだったのか。


 俺の中での熱海はわりとしっかり者のイメージだったけど……まぁ時々気が抜けちゃってる部分とかはあるか。もしかしたら、もっと俺に対して気を許してくれたら、そういう部分がもっと見えてくるのかもしれないな。


 さてさて……熱海はどんなプレゼントだったら喜んでくれるんだろう。





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