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第5章 噂の真実味


 友人達の話によると、ロンバード子爵家のシャーロット嬢は、最近大分評判がいいらしい。

 

 元々彼女は兄のフィリップ=ロンバード子爵令息によく似た超絶美人だという噂があったが、学園には通っていなかったので、幼い頃の彼女しか皆知らなかった。

 

 ところが、私の従妹であるレイクレス伯爵令嬢キンバリーの親友になったらしく、近頃伯爵家が催すパーティーやお茶会によく参加していたらしい。

 ロンバード子爵家はあまり裕福ではないらしく、シャーロット嬢は豪華なドレスや装飾品などは身に付けてはいなかったが、清楚なその装いは却って高感を持たれたという。

 そして噂に違わぬその美貌にみんな驚いたそうだ。

 その上性格も明るく社交的でしかも気取らない、と男性のみならず、今では女性からの評判もいいらしい。

 そしてあっという間に人気者になり、今ではシャーロット嬢自身がお茶会を催しているらしいが、そちらも彼女のもてなし方がとても素晴らしいらしいと好評らしい。

 

 ただし、と友人が言った。

 

「たしかに私の妹も以前ロンバード子爵家に招待されたことがあって、とても素敵だったと言っていたわ。

 お金がかけられていなくて質素だったけれど、決して貧乏くさいというわけではなくて、むしろ洗練された上品さがあって、最先端を行く感じがしたと。すぐに真似をする者が出てくるのではないかと。

 そして実際、今、カスタリアブームが来ているでしょう?」

 

「カスタリアブーム?」 

 

「従来の型に嵌った在り方をから脱却して、新鮮なライフスタイルを模索しようという、隣国カスターリア国から生まれた考え方よ。

 私の妹は隣国へ旅行に行ったときに、それに触れて感動していたの。そしていつか自分も取り入れてみたいと考えていたらしいわ。

 だからロンバード子爵家でそれを上手く再現されていたことにとても嬉しくなって、同じ感性を持つシャーロット嬢と親しくなりたいと思ったらしいの。

 でも、すぐに妹はそのカスターリア風おもてなしは、彼女の主導ではないことに気付いたみたい。

 だって、妹がカスターリア国について質問しても、何一つまともな回答がなかったというのだから。きっとシャーロット嬢には誰か指南役がいるのだろうって言っていたわ」

 

「指南役ってまさかキンバリー嬢ってことなの?」

 

「そんなわけないじゃない。彼女こそ古臭い従来の豪華絢爛なおもてなしを好むタイプなのに」

 

「そうよね。大体彼女にカスターリア国の知識があるとは思えないわ。彼女勉強嫌いな上に読書嫌いで有名らしいもの」

 

 カスターリア国への造詣……指南役……読書……

 

 その単語を聞いて、ふとディアナ嬢の顔が頭に浮かんだ。

 

「ルシアン様、私はこの国を出ることは多分一生ないのでしょう。でも、色々な国のことを知るのはとても楽しいです。

 世界には見たことのないような景色があって、その風土や歴史によって、いろんな考え方や暮らしがあって」

 

 彼女はそう言って、他国の歴史や風土や文化に関する本を嬉々として読み、ガイドブックを眺めていた。

 彼女の屋敷ではもう農園は営んではおらず、家庭菜園程度の畑を耕しているらしい。

 しかしそれでもたまに屋敷の者だけではで食べきれない程豊作の時は市場へ持ち込むのだそうだが、そんな時そこで他国から来た商人や運搬業者から様々な話を聞くのがとても楽しい、と彼女はそう話していた。

 

 またディアナ嬢のことを考えてしまった。これはかなり重症だ。

 それにしても友人達の情報はかなり役に立った。シャーロット嬢の評判は作られたもので、真の評価とはかなり差がありそうだ。

 今までできるだけ関わらないようしてきたが、母が本気で彼女を私に近付けようとするならば、本格的に彼女のことを含めたロンバード子爵家について調べてみよう、そう私は思った。


読んでくださってありがとうございました。

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