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ウニ食べたい!  作者: ふくろう
5/6

5話

何時でも何処でも 導く手は見えていた

やっと気づいた やっと気づけた

今度はその手を離さない さぁ今日はどこに行こうか


前回のおさらい


もしかしてヤバイ?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「仕方ありませんね・・・」

室長は、何かを諦めたのか

魔法のアイテム鞄から、少し大きなタライを引っ張り出す



「キャハハハハハハハハ

 スゴいね マスター スゴいね頑張ってね」

先程までの泣き顔は何処に行ったのか

ランコは上機嫌に笑いまくっていた


「ちょっとランコちゃん

 今は あまり大声で笑うのは、良くない状況なの」

と言いつつも、室長も笑うのを堪えているのがバレバレだ


室長の解決策は実に単純なもので

ハルの「俺が 引っ張るんですか?」

この非難めいた質問に全てが詰まっていた


「3つ 立派な理由があるから、聞いてください

 まず 私はこのタライを浮遊させる魔法と

 バランスを維持する魔法を同時に

 発動し続けなければいけないの」

これが一つ目の理由ね?と、ここまでは室長も笑顔だったが

二つ目に・・・と続けるところで

笑顔のまま

「この私に引っ張れと言うつもりなのかしら?」

目力で、拒絶を握りつぶされてしまう


「あと杉流さん 貴方、彼女に引っ張らせるの?」

そう聞かれてハルは

大喜びで大笑いしながら無秩序に走りいく

ランコの姿を想像してしまい

「いえ 僕が引っ張ります」

単純な話、消去法な訳だった


そして今は 遠目から見れば

何か大きなオケのようなものに

身を寄せあうように立って、抱き合う二人の女の子と

それを引っ張る一人の青年という構図が出来ていた


「それにしても 室長

 これは何処に向かっているのですか?

 さっき行こうとしていたシカロって町とは

 方向が違いますよね」

町に向かおうとした瞬間移動の移動先から

ランコの元に走り戻ったハルは

今の進む方向に疑問を持っていた


「これも そのうち説明するつもりだったのですが

 瞬間移動は物凄い魔法量を使うのです。

 周りからも察知されやすく

 私たちの魔法力が欲しいなぁって

 シクスティアの悪い人たちに捕まると

 少し、面倒なことに・・・」

室長は言葉を濁しているが


「拉致監禁されて、魔法力を奪われ続けると」

ハルはハッキリと言葉に出す


「言葉さえ選ばずに説明すると、そうなりますね」

依然として、室長の言葉に勢いは戻らなかった


「そんな危険なところに

 旅したい人って居ますか? いますね・・・」

自問自答してしまうハルにも思い当たるフシがあり


「地球で言うところの

 サファリパークみたいな位置付けか」

最終的な危険からは守られているものの

日常生活では得られることの無い

スリリングな非日常を求める人の数は少なくない


「そう それは捕まっちゃった場合や

 騙されているパターンの時に

 魔法力を吸い上げられるって話ね」と言葉を切ってから


「もう一つは シクスティアに来て、遊びまくって

 ちょっとチートがお気に召したのか

 異世界の人達で徒党を組むことも有るのよ」

まだ それから・・・と続けようとしたところで


「すいません室長 女神様って一人ですよね?」

ハルは 揺らぐ前提を質問で固めようとしたが


「女神が クスティアだけだったら

 御しやすくて、助かったのですけれどね」

その目論みは失敗に終わり

複数の女神の存在が決定付けされる


「じゃあ 一体、何人ほど女神様っているんですか?」

ハルは恐る恐る質問をする


「確認できる範囲で6人と

 その旦那の1人ってところかしら」

室長の話し言葉が先程までとは代わり

明らかに軽蔑の意思が見られた


「人様、あっ いえ神様の家庭事情をとやかく

 言うつもりは無いんだけど

 一夫多妻制みたいなの、私は好きじゃないのよ」


これを聞いたハルも

「まぁ 聞く分には羨ましい話ですけど

 自分も勘弁願いたいですね」と言いつつ


内心で、一人目すら見つけられて無いですけどね

なんて自分を卑下する様な事を思っていたのだが。


「女神クスティアは、それを良しとしている訳ですね?」

室長に更なる説明を求めた


「一夫多妻制に関しての説得は、私はもう諦めたわ」

少し寂しそうな室長。


「本人が頑なにソレを良しとするのだから

 私は仕方がないと、気持ちを切り替えて

 商売に精を出すことに決めたのよ」

いろんな葛藤は見てとれたが

室長も固く決意しているようだった。


「それで クスティアとしては、私たち地球人に

 シクスティアで、出来るだけ多くの魔法力を

 使ってほしいって話に繋がってくるんだけど・・・」

「・・・ ・・・」室長の話を、ハルは頭で整理した


要約すると、6人の嫁の加護下にある生き物が

魔法力を使うことによって得られる

エネルギーの一種のようなものがポイントとして

嫁に付与され、どれだけ多くの貢献を見せたかによって

嫁同士の序列的な立場にも影響が出る・・・

と言うことだった


「なんだかスゴいゲームっぽいですね」

ハルが笑って感想を述べると


「女神ってキャバ嬢が、旦那っていうホストに

 どれだけ入れ込んでいるのかを見るってだけの

 下品なゲームでしょ?」

室長に実も蓋もないことを言われ

そうすね・・・とドン引きしながら

乾いた笑みを浮かべる事しか出来ないハルだった


「ところで 魔法力って回復するんですか?」

地球で魔法力を意識するのが

ゲームの中だけだったので、ハルは疑問をぶつけてみる


「すぐに回復するわよ」と答えてから


「そうね 限界まで魔法力を使っても

 普通の人なら、一日休めば元通りね」と付け加える


「それくらいで 良いんですか?」

案外大したことが無いと驚くハルだったが


「まぁ あくまでもそれは魔法力の話であって

 チートみたいな力が使えるのよ?

 こっちにいる間は、魔法力が体を支えてくれるけど

 地球に戻ったらどうなると思う?」

身振り手振りを交えての説明に

「筋肉痛・・・とか?」

今 この瞬間も、あり得ないほどの力を

行使していることに、恐れを感じ始めてしまうハル


「そゆこと」室長はイタズラっぽく笑うだけだった


「そもそもお客様は、人形転移で筋肉痛は関係無いし

 社員にはプロテインを配ってるから

 それ飲めば、かなり楽になるの補償付き。

 そんなに心配しなくても大丈夫よ」

室長曰く、プロテインの開発にも力を入れていて

なかなかに自信作なんだとか


「そうそう プロテインの話になった事だし

 ついでにもう一つ説明しておくと

 福利厚生的な一環で、ウチの社に入社したその日から

 当人と連れ一人、子供二人までは

 24時間365日いつでも

 レストランとサウナ付き大浴場が

 自由に使えるようになっているから

 是非是非使ってみてください」

怪しむ反応を見せるハルに


「細かい養分までは言いませんが

 プロテインも食事も、素材から選んで

 なるべく良いモノを選んでいる筈だから

 怪しいだなんて、不安にならないでね」

余程自信が有るらしく

室長は、狭いタライの上で胸を張ろうとして

よろけてランコにしがみついてしまう


「室長 危ないね

 遊ぶのはコレを降りた後にお願いするね」

ランコはバランスを維持するよう集中していたのか

室長の話を聞いていなかったらしく

勘違いしているようだった


「遊ぶのは 後にして下さすいませんでした」

ハルはソレが少し可笑しくって

室長をからかおうとしたが

既に複数魔法を発動させていても余力があるのか

刃のような物を顕現させ近づけられていた


「もう一度、同じセリフをお聞かせ願えるかしら?」

室長の声が、後ろから冷たくハルに突き刺さる


「すいませんでした」


もう一度ハルが謝罪した頃合いで

ハルの視界が大きく広がりを見せる


3人は目の前の草原に感嘆の息を洩らしていた


「これできっと大丈夫ね


 杉流さん 少し待っていただけますか?

 ここからは安全だと思うので、私たちも歩きます」


ようやく馬役の任を解かれたハルは

「すいません ちょっと休憩お願いしてもいいですか?」

疲れが押し寄せたのか、その場に座り込んでしまう


室長は、その様子を見て

「そうですね 休憩ではなく

 今日はこのまま、ここで野営をすることにしましょう」

室長は、タライを片付けながら

次に夜営の準備に取りかかろうとした


「んん? 終わりね? 次は何するね?」

ランコだけは、一人楽しそうだった


室長は、鞄から肉の挟まれたパンを出すと

「ここは沼地から程近い場所なので

 狩りをするにも、木の実を採るなどしても

 食べられるものか、判断に困る環境です。

 質素ですが、今日はコレだけにしておきましょう」


ハルに渡し

ランコにも渡そうとするが、そこで室長の手が止まる


「ランコちゃん 貴女、ご飯は何を食べるの?

 私たちと、同じもので大丈夫?」

一応 渡そうとしてみると、笑顔で受けとるランコ


「ありがとう 室長、でもコレ何をするね?」

しかし 干し肉バーガーをいろんな角度から見るだけだ


「こうやって 食べるのよ」

室長は、かじりついて食べて見せる

初めて見る動作に、不思議そうな顔をするランコ


「いただきます」

ハルも小声で呟いてから、ランコの前で

バーガーにかじりついて見せる


ランコもマネをするように

干し肉バーガーにかじりつくが

噛み千切る事はせず、ただ口を離すだけだった


「食べないって事なのかな?」

興味が無いのか

ランコは、歯形のついたバーガーをハルに手渡してしまう


無駄にする事も無いと、ハルがバーガーを食べる最中

「じゃあ お水でも飲む?」

室長は、ランコの前にコップを置き、水筒から水を注ぐ


ランコは注がれたコップを少し見てから

口元に持っていき一口飲んでみる

「んん?!!!!」

そっちは気に入ったのか、残りも一気に飲み干すと


「室長 これスゴいね

 なんだか ほんわかする暖かさね」

目を輝かせて、室長におかわりを要求していた


少し安心した室長は

もう一杯、水筒からコップに注いでランコに渡す


ランコは受け取ったコップを

少しユラユラとさせてから一気に飲み干すのだった


「このほんわか美味しいね マスターも飲むね」

もう一杯注いでもらったコップを

次はハルに差し出す


ハルは室長を見やると

「気にせず、飲んでみると良いわ」

室長は何事も無いかのように、促すだけだった

少し不安を感じながらも、ハルは一口飲んでみる


「白湯・・・ ただの白湯ですよね?」

確かに心地よい暖かさが、体を走っていくが

本当に、何の変哲もないお湯だった。


「だから さっきからずっと、そう言ってるじゃない」

ただのお湯を誉められても嬉しくない室長は

もう一つコップを簡易テーブルに置くと

そこにお湯を注いで、手を掲げる


室長の手から暖かい光がお湯に注がれると

少しだけ、お湯は赤くなる

「なんだか辛そうですね」

覗きこんでいたハルの反応に


「雪の降る地域では、絶対に必要な魔法の使い方なのよ

 杉流さんにも、なるべく早く習得してもらえると

 行動の幅が広がって助かるわね」

室長は満足そうに答えると

ランコに差し出して飲んでみる?と訪ねる


ランコは嬉しそうに受け取り、一気に飲み干す


「んんんんん~~~」

目を見開いて、口を押さえる様子が毒ではないようだが

少し辛味が強かったのだろうと、ハルは思っていると


「室長何だコレね? すんごい美味しいね

 それに、とってもポカポカするね」

興奮した様子のランコが、その場で両腕を激しく振り回す


「力の増強を促す魔法を飲み水に使うと

 程よい辛さで体がポカポカするし 

 直接 魔法を掛けるほどの威力は無いけれど

 少しは筋力アップも効果として現れるのよ

 ・・・って聞いちゃいないわね」

興奮したランコに振り回されて

まるで説明を聞けていないハルだった


「魔法による増強内容によって

 味が変わるから、いろいろ試してみるといいと思うけど

 やっぱり作り手の気持ちは反映するから

 愛って大事な調味料だと、私は思うわ」

ランコの反応に機嫌を良くしたのか、室長が一気に喋る

そして、ハルの視線に気付いた。


「な 何よ 何か言いたい事があるなら言いなさいよ」

赤面の室長がハルに詰め寄る。


「いや 別に何も言ってませんし 思ってませんて」

嫌な予感を覚え、ハルは必死に弁護を試みるが

「目は口ほどにモノを云うのよ?」

室長は、なかなかハルを許そうとはしない


「これって立派なパワハラだろ」

ハルは機嫌を直してくれない室長の

耳に入るか入らない程度の声でボソッと呟いていた


「何か 言いましたか?」

しっかりと聞こえていたのか

先程より顔に笑顔が広がった分

逆に、恐怖を覚え 震えるハルがいた


「と まぁ、オフザケはこれくらいにしておいて

 杉流さんに、強化系の魔法を覚えて貰いたいのは

 確かな話なのですよ」

突然 落ち着いたトーンに戻る室長に

ハルも姿勢を正す

「それと 杉流さんには

 長い棒か槍の戦闘スキルを習得することを

 強くお勧め致します」

室長は武器カタログを出して

槍のページを開いて見せる

「最終的には 仕込み杖や暗器まで使えるようになれば

 そこそこ戦えるようになると私は踏んでいます」


今 見せられているページには

デカデカと大きな文字で騙し討ちと書かれていた


「理由を聞いても良いですか?」

特に異論が有るわけではないが

この短時間で、なぜそこまで自分のゲームでの

好みの戦闘スタイルが浮き彫りにされているのか

ハルは、確かめずにはいられなかった


「簡単な話ですよ」

室長は、一言添えてから

「杉流さんの、トロフィー獲得履歴が大きな理由です」

宣告通り、内容は合理的で簡単なものだった


職業スキルや戦闘スキルをマスターすることで

トロフィーを手に入れられるソフトは無数に有って

ハルは大体どのソフトでも

キャラクターの初期装備をマスターした後か

その次で

長い獲物や暗器の類いを、確実に選んでいたらしく

室長いわく


「杉流さんは 隠密行動がお好きなようで

 光輝く勇者様の影となり

 ターゲットに気取られることなく近づき

 後ろからズブリ・・・と」

忍者が暗殺を行うような素振りをとって見せる


「いや まぁ嫌いではないですけど

 そんなにトロフィーの取り方、片寄ってましたか?」

誰に見せるわけでもないからと

ハルは無意識に無自覚に片寄っていたようだ


「片寄ってましたねぇ

 メインストーリーをクリアする前に

 1周目では、出来るだけサブクエストをクリアして

 レベルも上げつつ

 ラスボスはギリギリで倒すのではなく

 割りと余裕を持って倒したいタイプですね

 

 それと、これは確証を持っているわけではありませんが

 1周目は、自力攻略をしたい派なのでは?

 簡単に取れるのに

 ヒントが少なく気づきにくいトロフィーが

 メインストーリー攻略直後に

 短時間で、立て続けに取れていることから・・・」

もういいです・・・

ハルは自分のゲームスタイルを、遠慮も何も無く

素っ裸に剥かれているような気がして

恥ずかしくて、死にそうだった


そんなハルを見てか

「では最後に二つだけ

 アイテムコンプリートが、いつも最後になっているのは

 少し面倒臭がりな所があるのかもしれません

 ですが、とてもゲームを楽しんでいるのだろうなぁ

 と、言うのは伝わってくる気がしました」

なかばトロフィー獲得による性格診断は

悶え死にそうなハルへの室長からのフォローで

幕を閉じるのだった


「あらあらランコちゃんは

 いつの間にか、眠ってしまったようですね」

魔法が込められた水を沢山飲んで満足したのか

ランコは静かに寝ていた


「この子、どうしましょうか?」

自分で名前をつけて、従者にしておきながら

現実を知って戸惑うハルに


「貴方が、保護するしかないんじゃないですか?」

室長は、責任をとるようキッパリと言いつける


「保護って言ったって、俺 金無いですよ?

 この場合って経費とかで落ちたりしないんですか?」

日本人視点での、お金の考え方だった


「ハッキリと言いますが 落ちません


 と言うかですね、シクスティアの経済感は

 地球のソレとは、慣れればさほど差異は感じませんが

 私たちは、チートといっても過言ではないくらいの

 加護や能力を持っていますので

 シクスティアでの行動費位は、自分で稼いでもらいます

 そういう決まりになっているんです


 まずは 盗賊団の壊滅か、悪代官の摘発あたりが

 てっとり早くて良いと思いますよ?」

サラッと恐ろしいことを言ってのける室長に


「地球だったら、確実に逮捕案件ですよね」

念の為に確認を行うと


「郷に入っては郷に従えというヤツですし

 地球では出来ないことをやって

 その楽しさに、どはまりしても

 お仕事の方を問題なくこなしていただけるのであれば

 多少は目をつむる事になっていますので」


この言葉にハルは

どこまでもゲームっぽい世界のシクスティアを

楽しむと決めたのか

「とりあえず 最初の町っていうのに

 辿り着かなきゃ、準備も何もあったもんじゃないですね」

これまでの、どこかオドオドした様子が無くなる


「決心されたようで、なによりですわ」

室長も、それを感じ取ったのか

鞄から鉱石を一つ取り出して、ハルの前に置く


「これを1つ差し上げます

 シクスティアの経済感を肌で感じてもらうため

 ご自分で換金してみてください」

ハルは簡易テーブルに置かれた

微かに青く光るその石を眺めながら


「ありがとうございます

 これで、装備を整えるってヤツですね」

店の商品の売値がいまいち想像できなかったが

室長から貰ったこの鉱石を売って、買い物がしたい。

早く町に行きたい。

はやる思いがワクワクで溢れているのだった


「サマーサファイアというシクスティアの鉱石で

 青く光る感じが、とても綺麗ですよね」

ハルの石を眺める様子が嬉しかったのか

室長は、この鉱石の説明を加えた


「あっ すいません・・・

 良い年してるのに、リアクションがガキ臭くて」

ハルは情けないように、照れて笑う


「年齢なんて、どうでも良いじゃないですか

 この世界に初めて来たときは

 皆さん 同じような反応をされますし

 綺麗なものを綺麗と思える感性は

 いつまでも、失いたくはないですからね」

室長も、慣れた反応と気にしないことを伝え

フォローしてくれた


「何だか、スゴい美味しそうね」

そんな2人の空気をさっきまで寝ていたランコが

急に割って入ってくる


完全に穏やかな空気が流れていて

油断していた2人をよそに

ランコはサマーサファイアを持ち上げると

パクリと食べてしまうのだった


「「えっ?」」

室長とハルは目を見開いてランコを見る


「食べちゃった?」「食べてしまいましたね」

目の前でゴクリと飲み込んだランコを

2人は、呆然と見ていた


「おぉ この鼻から抜ける爽やかな香りが

 とても心地良いね」

ランコは満足そうに食レポを始めるが

「うっ・・・」

次の瞬間には驚いた表情で口を押さえていた


「ランコ それは食べ物じゃないんだ

 早く外に吐き出すんだ」

いち早く、我に戻ったハルがランコの肩を揺するが

ランコは口を押さえ、首を激しく左右に振り

吐き出すことを拒む


「イヤじゃなくて 早く吐き出すんだって えっ?」

拒み続け、座っていた椅子から離れて踞ると

ランコの体が、急に青く光始める


「ランコ?」

飲み込みきれない状況の変化が連続で起こりすぎて

見ていることしかできない2人の前で

ランコの体が最後に大きく青く光る。

次第に その光は収束を見せ


「何 何ね?すごいビックリね 何が起きたね?」

ランコは見回すが

ランコ自身に何か変化が、あると言うわけでは無さそうだ。


しかし、ランコを見る2人の表情は驚きに満ちていた


「んん? どこ・・・かで・・・」

記憶を探るような仕草をとる室長と

「夏兄ィ なんで、こんなところに居るんだよ」

家族がシクスティアに居る事実が受け入れられないハル。


室長側からでは

少し髪の毛が邪魔で女性にしか見えてないらしく

「はぁ?お兄さん?

 いや どこからどう見ても女性じゃないのよ

 あんまりいい加減なこと・・・」

ランコは急に伸びた髪の毛をかきあげる

そして、その瞬間 ハッキリと顔を見ることが出来た室長は

息を飲むことになる


「うそ なんでこんなところに

 私の大好きなサバゲーユーチューブチャンネルの

 チーム美酒のリーダー 夏夢クンが居るのよ

 えっ? ちょっと待って

 今あなた 夏兄って言ったわよね?

 じゃあ何 兄弟なの?どうしてこんな大切な事言わないの」 

ハルは シクスティアに来てから

一番物凄い圧で室長に迫られていた


「いやだって ゲームの話しかしてなかったし」

そういう活動をしているのは知っていたし

ごく一部にコアなファンが居るのも知ってはいたが

目の前にいるとは知らなかったのだ


「マスター コレ何ね?」

夏夢の姿形に変わり、カクテルドレスに隠されるように

太もも辺りにくくりつけてあった拳銃を取りだし

当然 ソレを知らないランコは笑顔で拳銃をハルに向ける


突然すぎる夏夢の出現に浮き足立つ室長だったが

本物か偽物か、判別のつかない拳銃を

笑顔のまま向ける夏夢の姿に一気に緊張感が増す


「ランコ それは危険だし、使い方教えるから

 一度 こっちに渡してくれるか?」

ハルは急かさないようにゆっくりと話しかけた

「はーい わかったね」

銃口をハルに向けたまま、拳銃を素直に渡そうとするランコ


「ちょ ねぇ大丈夫なの?」

動くことの出来ない室長がハルに声をかける


「た 多分大丈夫ですよ

 あの持ち方だったら、引き金は引けないはずですから」

頭では分かっているものの

少しずつしか、ランコの持つ拳銃に手を伸ばせない


「マスター? コレ危ないものね?

 私 持っていない方が良いね?」

ようやく2人の緊張感が伝わり始めたのか

ランコは、拳銃を繁々と見つめる


「ランコ 大丈夫 俺に渡せば大丈夫だから

 ゆっくりとコッチに渡そう な?」

あと、もう少しのところまでハルが近づいたときだった


「危ないものは 

 私が持ってても、マスターが持ってても危ないね

 そんなモノはいらないね」

そう言って、ランコは草原に向かって拳銃を投げた


外は十分に暗く

3人のまわりにはランタンが灯してあったので

お互いを確認することはできていたが

さすがにランコの投げた拳銃までは見ることが出来ない


・・・が、次の瞬間

光輝くレーザーが上空に向かって

乾いた音ともに打ち上げられる


「私さぁ あんまり拳銃の事は知らないんだけど

 あのタイプって弾丸よね? なんでレーザー?」

室長は、打ち上げられた光線が

徐々に闇にのみ込まれていくのを見ながら呟く


「いや オレ、今日初めてシクスティアに来たわけだし

 室長が分からなかったら、誰にも分からないでしょ」

ハルも、どこか呆けた感じで相づちを打つ


「マスターと室長が近寄って、とても仲良し嬉しいね

 私も近づくね」

夏夢の姿をしたランコが、2人の間に割って入る


「えっ? そんな夏夢クン 待って 心の準備が」

言葉とは裏腹に、夏夢(の姿をしたランコ)に

大手を開けて抱きつく室長


「おぉ室長 とっても激しいハグね、嬉しいね」

本当の処の事情を分かっていないランコも嬉しそうだ

「室長の頭もスリスリするね」

上から抱きつく夏夢(の姿をしたランコ)は

室長の頭に頬擦りをする


一度だけ体を大きく震わせた後、室長は

「お願い 今だけはヒミコって呼んで」と囁いていた


「いいよ ヒミコ」

室長の耳元で、囁くように甘く言うランコ


「何 やってんだか」

2人の世界?を少し離れた所から

呆れた眼差しで見ていたハルは

室長の次なる暴挙を見逃さなかった


「夏夢・・・ ここ少し歩きづらいわ」

いや いつから呼び捨てになったんだよ。とか

それだけ抱きついていたら当たり前だろ。とか

脳内で散々突っ込んでいたハルだったが


「きゃあ 足元が」

最小限の動きで、ランコの足を刈り払い

大きな木の根に抱きついたまま座らせた室長の技術は

目を見張るものがあった


「さすが室長」

思わず誉め言葉がハルの口を出たが

2人には、まるで届いていないようだった


「大丈夫ね ヒミコ」

ランコとしては、転んでしまったことより

室長に痛い思いをさせない為にという事情があって

転んでしまった瞬間、少し力強く抱き締めたが


「あぁ そんな 力強い・・・」

足を引っ掻けて、転ばした本人としては

更に夢の奥に迷い来んで行くようだった


「あのー 室長?」

所在の無いハルが情けない声で訪ねるが反応は無い


「もしも~し 室長、聞こえていますか?」

次に、少し回り込んで聞いてみた


「ぅるっさい ちょっと休憩中だ」

夏夢の胸に顔を埋めたまま、少しくぐもった声で返してくる


「じゃあ ちょっと席、外しますね?」

ハルとのやり取りの全てが煩わしかったのか

片手だけハルに向けると、追い払うような仕草を見せる


「ランコ すぐ戻ってくるから」

一応 心配しないようにと、ランコに呟いておく


「わかったね」

この状態では動けないと悟ってくれたのか

ランコは、素直に受け入れてくれたようだった


そして、ハルは2人の元を離れるのだが

目的は、レーザーを放つ拳銃だ。


「ランコがコッチの方に全力で投げ飛ばした筈なんだけど

 暗くて、判りづれぇ・・・」

ハルは先程、肉体強化で感じることの出来た魔法力を

今度は暗視ゴーグル代わりに

代用出来ないか考えていたのだが


「少し甘いような焦げたニオイがするし

 多分、アレだよな」

月明かりが反射してか、すぐに拳銃は見つかった


そっと拾い上げてみると、暴発した形になったからか

拳銃全体が今もほんのり暖かく熱をもっている

「まぁ 回収はしておいた方が良いよな?」

暴発しないように、引き金の部分には指をかけず

慎重に拳銃を持つと

正直、戻りたくないあの場所へトボトボと戻るハル。


拳銃を拾いに出てから、数分と経っているわけではないので

室長は休憩中のままだろう


ハルは少し離れたところに腰を下ろした

「こんな会社で大丈夫か?

 ・・・じゃねぇ 家はどうすんだよ」

夏夢の顔を見た瞬間

冬香が今夜家に来るって話をしていたことを思い出して

ハルは少し焦っていた


「あぁ もう夜だし 絶対怒っているよな」

ハルは冬香が怒っている姿を想像する


「いや くそ 怒った姿も可愛いけれども」

就職活動を始めると言った、その日の夜から

どれだけ待っても帰ってこないハルを

冬香はとても心配するだろう。


仕事を探して見たものの、現実を思い知らされて

旅に出てしまったんじゃないか

・・・なんて、ちょっと早とちりな心配をするかもだし


会社見学に 初日からこぎ着けて、いざ現場に辿り着くと

怪しげな宗教に捕まってしまい

帰るに帰れなくなってしまっているとか・・・


自分で 冬香が

どう自分を心配しているのかを妄想しているわりに

なんだか的を得た心配をしている気がして

ハルは、身震いをしていた


「冬香 ゴメン

 お兄ちゃんは冬香に連絡も入れることが出来ないまま

 夜を明かすことになりそうです」

室長が1人で?イチャイチャする、その少し離れたところで

シクスティア初日の夜は、泣きながら更けていくのだった


そして 翌朝

「杉流さん 起きてください 杉流さんってば」

ハルは視界がボヤけて何も見えないわりに

室長の声はハッキリと認識できていた


「えっと・・・ もう朝ですよね?

 って ちょっと待った、何事ですか?」

室長の声だけは優しかったので

良い目覚めとハルは勘違いしてしまったが

視界が定まるにつれて

室長に突きつけられている刃先に、恐怖の表情を見せる


「現状を説明できますか?」

ハルに向けた刃先を、ゆっくりと下にスライドさせると

そこには、一番最初に沼で出会ったときの

幼い女の子の姿をしたランコが

縮んだ分だけブカブカになった服を着たまま

ハルにしがみつくように寝ているのだった


「ランコ? ってなんで縮んでるんだよ

 ストップ 起きるな 動くな 脱ごうとするな」

ハルはまだ、まどろみの中にいるランコに

上から布団代わりにした布ベースのものを掛けて

押さえ込もうとする


「ちょっと待ってねマスター

 私、コレどういう遊びか分からないね」

ランコは必死に布切れからの脱出を試みているが

自分の命の危機を感じているハルは

ソレを命を懸けて阻止せんとするしかなく

「だから止まれって 動くなよ

 頼むから、ストップだランコ」

剣の切っ先が再びハルに向けられてからは

一層 ランコを羽交い締めにする力が強くなっていた


「マスター 私、ちょっと痛いね

 もう少しだけ 優しくしてほしいね お願いね」

少し剣先が揺れた気がしたが、それどころではないので


「ジッとしてくれるなら、緩めるから

 頼むからジッとしてくれよ?」

ハルの願いは通じたのか

布越しに首を上下?にしていると信じて緩める


「それで?現状を説明出来るのかしら?」

未だ剣先を向けられたままに

若干の諦めは見てとれるものの、室長の質問が繰り返された


「室長 僕が言いたいのは一つだけです」

ハルは、決意の眼差しを室長に向けた


「分からないけど、殺さないで・・・」

ハルはとても真剣な眼差しで

どこか諦めを感じるが、文字通り 命を懸けて懇願した


「おぉ 私背が縮んだね マスターどうしてね」

ようやく自分の異変に気付いたランコが

布切れの中から、フゴフゴとハルに説明を求める


室長は、もう何度ついたか分からない大きなため息をつく

ソレと共に剣も下げるしかなかった


「ランコちゃん用の服は

 ちょっと別のものを考えないといけないわね」

室長が、ランコの服を考え始めたところで

「室長 すいません、一度地球に帰りたいのですが」

ハルは自分の命の危機も去ったと見て

とりあえずの帰還を要請していた


「一応 昨日の夜に、妹が訪ねてくる予定だったんですが

 なんだか連絡しそびれてしまいまして」

ゴタゴタが続いて忘れていたのも正直有るが

家を無人のまま放っておくのも嫌だということもあり

ハルは帰宅の許可を求めたのだが


「何言っているの? 今は新人研修中よ?

 コッチでも2週間くらいは滞在してもらう予定だし

 簡単に帰れるなんて思わないことね」

室長の更なる爆弾発言と共に

ハルは絶望に落とされてしまうのだった。


「はぁ 2週間? いや おいちょっと待てよ

 何考えてんだよ 働かせすぎだろ

 なぁ 初日から2週間休み無しでぶっ通しなんて

 あり得ねぇだろ どんなブラック企業だよ

 頼むから 帰してくれって言ってんの」

よく分からない状況とストレスと混乱で

ハルは内心で自分に驚きつつも怒声をあげていた


しかし、室長はハルを見たまま口を開こうとはしない。


普段怒ることのあまり無いハルは

激しい口調など一瞬しか持たず

すぐ下手の口調になってしまうところが

自分でも情けないと思っていたが

本当に必要に迫られれば俺だって・・・

と、微かに思ったいたりした


「昨日だって

 何回か女神と連絡を取っていたじゃないですか

 その延長線上で、ちょっと帰りたいってだけなんですよ」

すでにランコの事など意識にも無い状態で

室長に詰め寄り続けるハルに


「貴方の感情の起伏は大体それくらいが

 目安になるわけですね 分かりました」

とハルの人間性チェックをしていたと

告白する室長は続けて

「これは意図的に言わないでいたことなのですが

 その時の魔力磁場の影響で、僅かな誤差はあるものの

 おおよそ平均的な数値を説明しますと

 シクスティアと地球とでは

 時間の流れに大きな隔たりがあり

 地球で一日、時を過ごしたら

 シクスティアではおおよそ70日ほど

 経過していると、覚えておいてもらいたいのです」


「お~・・・?」

意図的に言われなかったこと

こちらでの約70日が地球での1日に相当すると言う

時間の流れに関する説明等

ハルは、頭の中で噛み砕いて考えてみた


「と言うことは・・・

 シクスティアに来てから

 地球の時間って、20分から30分程度しか

 経過していないってぇ・・・」

「ことになります」

室長の計算と、修正可能な誤差の範囲であると

ここにきて、ようやくハルも認識に至るのだった


「あ~・・・さご飯の準備でも始めましょうか」

ハルは、気まずい空気を何とかしようと試みる

「杉流さん」

室長に、どういう意図で呼ばれているのかを

ハルは計り知ることが出来なかったが

「先程は勢いに任せて

 相応しくない言動をとってしまい

 申し訳ありませんでした」

変に引っ張るよりは謝ってしまおうと

室長はハルに頭を下げた


「杉流さん 杉流さん 杉流さん」

室長は、繰り返しハルの名前を呼んでから

「ハルトさんと、呼んでも宜しいですか?」

自分の中で、しっくりくる呼び名が無かったのか

今度はハルトさん ハルトさん ハルトさんと呟く


「何でも良いですよ お任せします」

少し穏やかな空気が流れる。

ハルは、簡易机に携帯食を2人分並べると

「ランコが 昨日食べた石って

 また貰えたりするんですか?」

たしか旅の準備資金用にと貰った筈なのだが

ランコが食べて 変身して、大騒ぎして

そこらへんの確認が取れていなかったと思い出す


「貰えたりは しませんね」

室長は、ハルの置いた朝御飯を食べながら

キッパリと答える


「えっ? じゃあ旅の資金はどうなるんですか?」

ハルは、所持金0からの旅に不安を覚えていた


「まぁ 私がいるので

 簡単で、この世界に馴染みやすそうな

 クエストを幾つか挑戦してみましょうか」

室長は、付け入る隙もない位の答えを出してくる


「ランコは どうやって夏夢兄に変身したのでしょうか」

ハルの、単純に疑問に思っていたことへの問い掛けに

「それは 脅迫と、捉えて宜しいですか?」

素に戻った室長が

実は恥ずかしさで死んでしまいそうになるのを

堪えているのだということを、ハルは知らなかったのだ


そして布切れに包まれてもがいていたランコは

いつのまにか、再び眠りに落ちているのだった


「いや 違いますって、誰も脅迫なんてしてませんて」

ハルは全力でその事実を否定するが

「まぁ~・・・ すんごい楽しそうではありましたけど」

悪気無しに、ボソッと呟いていしまう


室長が、目に見えて動揺を表すと

ハルは次の瞬間、自分の命の危機を察知する

「いや だから違うって」そして謝りに入るが


「もう 遅いです」

目の前にいたはずの室長を見失うと

体から急激に力が抜け

視界が赤いドクロに満たされていく光景が拡がっていた


「もう 殺さないで」

ハルは力の限り声を出して跳ね起きる


その時すでに、辺りは茜色に染まり始めていた

「結局 もう一泊、此処に夜営することになりました

 動けるようになりましたら、食事の準備に入りましょう」


室長が簡易テーブルの上で何か書き物をしながら

ハルに指示を出してきた


ハルの体は、まだ動かなかったが

視線を動かすと

ハルを心配そうに見守るランコの姿があった

「おぉ マスター気付いたね 良かった良かったね」


倒れたままのハルにも見えるように、ランコが離れると

「それよりコレ見てほしいね

 この服、室長に買って貰ったね スゴい嬉しいね」

服をヒラヒラと全体が見えるように回って見せる

僅かながらに、体が動くようになったハルは

座ったままではあるが、体を起こして

「ありがとうございます」

室長に頭を下げた


「い 一応私も悪いとは思っているのよ?

 でも この子の服が脱げてしまう度に

 貴方を殺していては話が進まないでしょ」


少し他所を向いていたが

室長はランコの服の説明をしてくれた

「この世界シクスティアでは

 状態変化や魔法効果が付与される度に

 姿を変化させる種族もいるの

 変化に合わせて、何着も服を持っている人も居るけれど

 私たちのように 移動することが多いと

 それだけで、荷物が溢れてしまうなんてことに

 なってしまうのはツライわよね?って作られたのが

 形態変化に合わせて

 服装も変化してくれるマジックアイテム」


室長はここで一度間を開けて、咳払いをする


「カメレオンチョーカー(普及版)」

と、誰もが知るであろう某青ダヌキの声マネをして

ランコの首に巻かれたチョーカーを指差した


「カメレオンチョーカー(普及版)」

ランコも室長に続いて声マネをして笑いころげる


「えっと・・・

 これはどこからツッコめば良いか悩みますな」

ハルはどうせなら首を跳ねて貰えれば楽になれるのに・・・

などと考えながら

「まぁ 面倒臭いし、気になったところだけ

 聞いておくか」なんとか方針を決めて


「普及版ってどういうことなんですか?」

ランコの大笑いに満足気な室長に質問をぶつけた


「文字通りの意味って・・・

 どうしたのですか?なんだか疲れてるみたいですよ?」

こういうボケも挟んでくるのか・・・と

室長の内面にゲンナリしているハルに

心配の眼差しを向けてきてはくれるのだが


「気にしないで 説明をお願いします」

ハルは続きを催促した


「そうですか では・・・」

あまり気にもしていないようで、室長は直ぐに説明に戻る


「カメレオンチョーカーそのものは

 結構なお値段なのですが

 技術改新が成功したとかで

 3つまでなら、個人の魔力にも影響がほぼ無しで

 実装されるようになったらしいの

 

 もちろん それ以上の数を実装可能とする

 カメレオンチョーカーもあるのですが

 4つ目以上は更に値段が跳ね上がるのよ」

室長が、何事も無かったように説明をするその横で


「カメレオンチョーカー(普及版)」

元ネタも知らないままに

ランコは大笑いしながら連呼し続けていた


「ランコ ちょっと静かにしようか」

何の気なしにボケたらしい室長は顔を紅潮させ

ハルはいたたまれ無かった


「ところでランコ1つ聞いて良いか?」

このままでは埒があかないと

なかば無理矢理にハルはランコに話を振った


「何ね マスター」ランコは素直に答えてくれそうだ


「ちょっと予想外に動きを止めている気がするんだが

 ランコはこの沼の森を出て、付いて来てもいいのか?

 せめて明日くらいには

 人の住むところに辿り着きたいはずだし」

ランコにも、室長にも訪ねるようにハルは話していた


「そうですね 町には辿り着きたいところですが

 急とはいえ、ご家族には挨拶はするべきだと思います」

室長もランコの意見を待った


「そうね・・・」

ずっと笑顔だったランコが少し考える素振りを見せる


「私 近くの町しか知らないね

 もっとイッパイいろんな事知りたいし

 何よりマスターと離れたくないね

 だから行ってきても良いかな?

 ねぇパパお願いね」


  (終わり)



_________________________


じゃんじゃかじゃ~~ん

今からはランコちゃんのお時間ね


今回も、私 大活躍だったね

もう一度思い返して、ランコを誉めるね

そしたら私 スッゴク嬉しいね


でも その前に少しだけ

マスターたちの話も思い返してみるね


なんでも聞いたところによると

女神様って言うのは6人居て

旦那様のために、イロイロ頑張ってるって話ね


マスターは、まだ独り身?らしいから

いつか私が支える日が来るかもしれないね

それはきっと、女神様にだって判らない未来ね


あとマスターのいた世界と時間の流れが違うらしくて

こっちで一日過ごしても

マスターたちの世界では、ちょっとしか時間が過ぎてないね


すごいね 私 マスターたちの世界行ってみたいね

時間がゆっくりって話だから

皆、動きもゆっくりなのかな?だとしたら私笑っちゃうね


それでね私の話もしたいんだけど

室長が出したあの青い石

とっても綺麗で、とっても美味しそうで

私 思わず食べちゃったね


そしたらビックリ

なんと なんと なんと 私変身しちゃったね

しかもマスターのお兄さんね

私 マスターのお兄さん知らないのに凄いね


そしたら室長・・・違うね

そしたらヒミコがメロメロになったね

私、転んでしまって

ヒミコに痛い思いさせたか心配だったけど

本当に、それ以上にメロメロだったね


でも朝になって、気づいたら元に戻ってたね

また室長はマスターの首をはねたけど

心配しなくて大丈夫ってマジックアイテムくれたね


「カメレオンチョーカー(普及版)」アハハハハハ

室長 面白いね

「カメレオンチョ~カ~~~~(普及版)」アハハハ


私 まだまだマスター達と一緒に居たいね

だから一緒に行きたいね    お願いパパ


次回はマスターがパパに

私を下さいって挨拶するお話ね


次も見に来てくれると嬉しいね

バイバ~~イ



お話といたしましては、まだまだ未完結ですが

5話という区切りとしては

手書き段階は出来上がっています

精進いたしますので、また見に来て頂けると幸いです



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