#8
「ボルトも行くよーーーーーーー‼」
ヒステリックスノーが滑った後に、後ろから勢いよく走ってきたイエローボルトが、彼の真似で慣性を利用して滑る。ヒステリックスノーの時より強い回転に、転んでひっくり返っていた者や悶絶していた者諸共、工場のコンベアの様に流されていった。
ローラーを流れるアヒル漢達は、中に入りやすいように少し捲り上げられた大きな布の下に次々と流され放り込まれていくが、急に周りが見えなくなり方向感覚を失う。
『この先は恐怖の真っ暗布潜り! ヒステリックスノーと続いて、イエローボルト、レッドフレイム、桃次郎、ホワイトマリンと続いた!』
「暗くて何も見えない!」
ホワイトマリンはモゾモゾと左右に逸れたり逆走したりで、なかなか先へ進めないでいる。
「ぎゃああああああ‼ 狭いよぉおおおお‼ 暗いよぉおおおおお‼」
ヒステリックスノーは閉所恐怖症らしく、布の中で暴れて前にも後ろにも進めずにいた。
『さてさて、レースの終盤、最後の障害物。心臓破りの地獄坂に最初に辿りつくのは・・・・・・・・・レッドフレイムと桃次郎とイエローボルトだ!』
いち早く布エリアを抜けた三羽がゴールに向けた直線をひたすら走る。しかし彼らの前に立ち塞がる最後の障害は、あまりにも急斜面な坂道。今までの長距離障害物コースで蓄積した疲労も加わり、坂の前で思わず立ち止まる三羽。
「クソがー‼ この先のゴールに飯があるんだ。行くしかねぇ!」
腹の虫が鳴くのが辛いのか、レッドフレイムがキッと坂を睨みつけて走り出す。
「くぅ~! アタイだって負けてらんないわ! そこの食いしん坊のせいでまだ一口も食べてないんだもの!」
「早いもの勝ちだろー?」
イエローボルトのせいでコース途中の餌を食べれず、桃次郎は彼を睨みつける。イエローボルトは自身の尻を叩き、桃次郎を煽って坂を駆け上がる。
「キィーーーーーーーーーーーーーー‼ 待ちなさい!」
挑発するイエローボルトに腹を立てた桃次郎が彼を捕まえようと追い掛け始める。
それから坂の中盤に差し掛かると、鬼の形相で桃次郎がイエローボルトを追い掛けていた。荒い息遣いが彼の怖さを引き立たせる。
「ゼィ・・・・・・はぁ・・・・・・に、逃がさないわよーーーー‼」
「げえっ! もう来た! 頑張れボルトの脚! ふっ、ふおぉおおおおおおっ‼」
ガクガクしている脚の筋肉に鞭打って、必死に足を前に出す。しかしもう限界だ。いつしか走る余裕は無くなり、一歩ずつ確実に前に進む。
「何よ、この坂! こんなドギツイ坂・・・・・・でも勝つのはアタイよぉ」
「ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・今回・・・・・・こそは・・・・・オレが勝つ‼」
桃次郎とレッドフレイムも地獄の坂道で限界を迎えていた。肩で息をしながらゆっくりと登っていく。