#3
実況の飼育員が大きく手を上げて、子供達に呼びかけて集合を促す。
『さぁ、黒を予想した子は、お兄さんに券を渡してね? 外れた子達もおいでー』
「アヒルまんまるで可愛かったね!」
「お尻フリフリしながら走っててて可愛かった」
アヒルの競争を見ていた子供達は楽しそうにアヒル達の感想を言いながら、飼育員に予想の色が書かれた券を持って行っていた。これは一着を予想し、当たれば景品が貰え、外れても参加賞の駄菓子が貰えるのだ。
走り終えてケージに戻るアヒル達。彼女達はお互いが擬人化された姿に見えている。色付きのチョーカーを着けたアイドル衣装の美少女達が、お互いの健闘を称え合い、労っていた。
「ふぅ・・・・・・疲れたー。みんな、お疲れー! さぁ、この後は男子達のレースね」
ケージの中に置かれた食事に手を付つけるアヒルの美少女達。この後は男子達のレースが始まるようで、彼女達が視線をアヒル男子達の待機するスタートケージに目を向ける。
飼育員は次のレースの準備を始めていた。
『次のレースはアヒルのオス達が主役だよ! 十五分後に開始するからねー!』
そこにちょうど、いつき達の家族がアヒルの競争会場に到着する。
「さっきのは惜しかったな。スタミナゲージが切れなければ勝ってたな、いつき」
「うん・・・・・・やっぱりあの服がないとムリだよ」
「もう、せっかく楽園地来たんだから、ゲームの話はやめましょ」
「ごめんごめん、そうだね。おっ、ついたついた。懐かしいなぁ」
三人が会話しながら会場を見ると、そこにはU字型の長く広いトラックが見えた。
「へぇ~、最近はこんなに広いコースで走ってるのか。パパが子供の時は・・・・・・ほら、あれぐらいの直線コースでやっていたんだよ」
父親が現在のコースを見て時代を感じると同時に、昔を懐かしみながらU字コースの奥にある直線コースを指差した。直線コースは先程のメスのアヒル達が走っていたコースで、U字コースに比べて、かなり距離が短い。
「あの直線コースはメスのアヒル用で、オスのアヒルがこの障害物コースを走るんですよ」
いつきの父親の話が聞こえていたのか、先程まで実況をしていた飼育員が声を掛けてきた。
「ここのオスアヒル達はみんなガッツがあって、どんな困難な障害も越えてしまうスーパーヒーローみたいなアヒルなんだよぉ~」
飼育員がしゃがみこんで、子供の視線の高さに自身の視線を合わせて、いつきに声を掛ける。
「スーパーヒーロー⁉」
「そうだよ~、みんなスゴイ特技を持ってるんだ」
「かっこいい! 戦隊ヒーローみたい!」
飼育員のスーパーヒーローという言葉に、目をキラキラと輝かせるいつき。