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それではお楽しみ下さい。
大分県大分市の閑静な住宅地、中島にある一戸建ての家。一階が整形外科の個人病院になっており、二階が居住スペースとなっている。
そこに住む小学一年生の男の子、いつきが朝からリビングのソファーで、母親のスマホを使ってアプリゲームをしていた。画面の中では、アヒルを擬人化した美少女達が競争をしている。
いつきはスマホをタイミングよくタップ。タップによってアヒル美少女のアクションが変わる。
「本当、そのゲーム好きねぇ。目を悪くしちゃうから、ほどほどにしときなさいよ」
いつきの母親がキッチンで朝食の支度をしながら、息子に声を掛ける。
「このアヒル♀(ガールズ)レース面白いんだもん」
母親がテーブルに朝食のヨーグルトとサラダ、それとふない焼きを並べる。そこにちょうど父親も起床して、寝間着のままリビングにやってきた。
「ふあぁ・・・・・・おはよう、ママ、いつき。おや、今日の朝はふない焼きかい?」
ふない焼きとは大分県民のソウルフード的な食べ物で、外見は回転焼き、中身がもんじゃ焼きみたいになっている。チーズが大量に入った物もあり、一つ食べるだけでも、だいぶ腹持ちが良い。
一個百円から購入する事が出来て、大分の若者にも人気のあるおやつだ。
二人に朝の挨拶を済ませると、いつきの隣に座って、テレビの電源を入れる。
「お、可愛い女の子がいっぱい出てるんだな。それはどんなゲームなんだ?」
「パパ、アヒル♀レース知らないの? これはね」
いつきはスマホの画面を覗き込んできた父親に、ゲームの説明を始めた。
『アヒル♀レース』とは、白や黄色、羽根、水掻き等を連想させるような可愛い衣装を纏ったアヒル少女達をトレーニングやスイーツで育成してレベルや能力を上げ、全国のユーザーやCPUと競争させる。衣装の装備アイテムがあり、着せ替える事で見た目と性能が変わる仕様だ。
「へぇ、今はそんなものがあるのか」
「必殺技もあるんだ」
いつきは画面の必殺技アイコンをタップすると、いつきが使っているアヒル美少女が隣のアヒル美少女にタックルを使って一定時間行動不能にさせていた。
「周りの子達にも人気で流行っているみたいよ」
「アヒルのレースと言えば、パパが子供の頃に別府の楽園地ってとこでやってたぞ」
父親が朝食を食べながら、二人に自分が子供の頃に行った『別府楽園地』の話を始めた。
「えぇっ⁉ ほんとのアヒルが、かけっこするの?」
「そんなのがあるのね。私も知らなかったわ」
父親のアヒルレースの話は、二人には新鮮に感じたのか、彼に色々と質問をしていた。