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62.海星王

最終守護者の《ステータス》再掲です。


===============

海星種―海星王ネプチューンフィッシュ Lv60

職業 最終守護者

職業スキル 守護者の妙技 守護者の偉容 守護者の矜持


スキル 体術(特奥級)Lv6 風魔術(上級)Lv6 土魔術(上級)Lv6 火魔術(中級)Lv6 光魔術(上級)Lv6 水魔術(特奥級)Lv6 闇魔術(上級)Lv6 暗視Lv6 海王統水Lv6 空中回遊Lv6 激流噴射Lv6 気配察知Lv6 海星屑スターダストフィッシュ召喚Lv6 自動再生Lv6 高速自動治癒Lv6 状態異常耐性Lv6 潜伏Lv6 毒ガス噴霧Lv6 魔力自動回復Lv6 湧水の魔Lv6

===============

 氷刃の猛吹雪が収まり次第、即座に駆け出した。

 目指すは前方の岩山の陰。とりあえずそこまで行ければ当面の間は〈魔術〉を凌げる。

 守護者の大ヒトデも〈魔術〉を散発的に撃ってきたが、距離があるため回避はさして難しくない。

 氷刃と吹雪の冷気に晒され氷漬けとなった地面を《防御力》の滑り止め効果を頼りに踏破し、無事、岩山の麓に辿り着いた。


「よし、順調だね」

「ああ、このまま手はず通り進めて行こう」


 そこで息を整えてから、乱雑に並ぶ岩山の合間を縫うようにしてさらに接近して行く。

 大ヒトデが居るのはまだまだ先なので、攻撃するにはもっと近づかなくてはならない。


「来るよっ」

「〈スチールシールド〉」


 しかし近づけば当然、敵の攻撃も激しくなる。

 発射から着弾までの時間が縮まるのはもちろんのこと、射程の問題で使えなかった〈魔術〉も使って来だすからだ。

 まあそれでも、通常の〈魔術〉なら防御系〈魔術〉で普通に防げる。

 先刻の〈儀式魔術〉を凌ぎ切ったという事実が自信となり、冷静な対処を可能にしている。


「この山とか登りやすそうじゃない?」

「そうだな、ここにするか」


 接近を一時中断し、目前の岩山へ登山を開始する。登山と言っても俺は《称号》の飛行能力を使うが。

 大ヒトデは《空中回遊》で宙に浮いている。それなりの高度であり、マロンが山頂からジャンプしても届かない。

 そこでマロン随伴の元、俺が山頂まで行って〈魔術〉で撃ち落とす算段だ。


 岩山の陰であることもあり、登山は順調に進んでいた。〈ドロップニードル〉のような変則軌道の〈魔術〉は、特に水系には多く存在しているが、かなりの速度で移動する俺達にはなかなか当たらない。当たる軌道でも俺が防ぐ。

 そうして、なかなか仕留められないことに豪を煮やしたのか、大ヒトデが新たな《スキル》を発動させたらしい。


「あ、召喚来た。全部呼んでる」


 《海星屑スターダストフィッシュ召喚》。最終守護者が持ちがちな《召喚系スキル》の一つだ。

 小さな、と言っても全長約一メートルだが、大ヒトデよりは比較的小さな小ヒトデを召喚できる。

 数は最大十六体。俺の《双竜召喚》と同じく倒せばしばらく復活しないが、二十近い数の小ヒトデ達を倒すのは一苦労だ。

 そんな小ヒトデが、八体ずつに分かれて岩山を回り込んで来るのを《気配察知》で捉える。


「《双竜召喚》、《若竜化》、全力で暴れて来い」


 なのでこちらも召喚生物を差し向ける。二体同時の《若竜化》も今の俺の魔力回復量ならば平気だ。

 〈ウィンドアシスト〉を受けた若竜達は二手に別れて飛んで行った。一対八の物量差も物ともせず突撃し、奮闘している。

 若竜は以前から変異種並の戦闘力を持っていた。あれから《双竜召喚》の《スキルレベル》が上がり、バフも加わった。取り巻き程度、ものの数ではない。

 それでも、小ヒトデ達が俺とマロンへの攻撃を優先していたらさすがに数体は漏れて来ただろう。だがどうやら奴らは若竜討伐を優先するようで、進行は完全に停止している。大ヒトデも援護射撃しているようだが手下を気にしてか威力は抑え目である。

 好都合なのでこのまま一気に登り切ってしまおう。


 そうして俺達は山頂に辿り着いた。

 とはいえ本当にてっぺんに立っては即座に〈魔術〉が飛んで来るため、山頂よりちょっと下くらいの位置に居るのだが。


「反撃があったら頼んだぞ」

「準備はバッチシだよ、安心して」


 そんなやり取りの後、軽く息を整えて山の頂に飛び上がる。


「〈スノーストームストリーム〉」


 間髪入れずに〈魔術〉を発動。若竜を倒すのに躍起になっていた大ヒトデは反応が遅れ、純白の奔流を五つある触腕の一本へモロに食らった。

 家屋サイズの大ヒトデはかつての鳥人のように一撃で氷漬けにはならなかったものの、奔流が直撃した触腕の大部分が凍結している。


「〈ブライトスナイプ〉、〈ゲイルジャベリン〉」


 さらに〈上級魔術〉を二連発。光輝の弾丸と突風の槍が大ヒトデを貫いた。

 打たれ弱いという前情報に偽りはなかったようで、《空中回遊》を維持できなくなりひゅるひゅると墜落する。


(さき)行ってる」

「任せた」


 敵の反撃に備え待機してくれていたマロンが墜落地点へ疾走して行った。

 小ヒトデを全て倒した若竜達と合流し、俺も飛行能力を使って後を追う。


 大ヒトデは再生力が高い。そのため撃ち落とした後も継続的に攻撃し続けなければ再び空に逃げられてしまう。

 マロンを先に向かわせたのはそういう訳であり、俺達も急行して加勢しなくてはならない。

 そんな思いから全速力で下山を果たし墜落地点に着いた俺達が見たのは、いいように翻弄される最終守護者の姿だった。

 山の斜面と崖に挟まれたそこで暴れる大ヒトデを、崖や岩を利用して縦横無尽に跳び回るマロンが蹂躙していた。

 触腕や水が四方八方を掘削するが、マロンにはかすりもしない。


「ほっ、ふっ、〈下武〉っ、やぁっ! リュウジ君っ、私のことは気にせずっ、〈魔術〉を撃ち込んでっ!」

「お、おう!」


 取りあえずチョコを加勢に向かわせ、俺は指示通り〈魔術〉の構築に取り掛かった。

 彼女の身体能力が抜きん出ていることは分かっていたし、だからこそ一対一で最終守護者と対峙させたのだが、どうやら俺の理解は充分ではなかったようである。

 そのスピードは十五階層の区間守護者と戦った時よりもなお一層増しており、大ヒトデの巨体を相手に一歩も引かない戦いぶりを見せている。

 しかし相手は最終守護者、いつまでもやられっぱなしではない。触腕の先端から轟音を伴う水流がマロン目掛けて迸った。

 彼女は気配を読んで易々と躱したが、過ぎ去った水流は蛇のようにのたうち、カーブし、背後から再度牙を剥く。《激流噴射》と《海王統水》の合わせ技だ。


「〈ガストブレード〉、〈エアボム〉」


 用意していた〈魔術〉をそちらに宛てる。水流の蛇は両断され、続く空気の爆弾に吹き散らされてしまった。

 《海王統水》による液体操作はある程度の衝撃で解除されるのでこれでもう安心だ。

 その間にもマロンの猛攻は続いており、チョコも加わったことで大ヒトデの負う傷は目に見えて増えていた。

 《海王統水》による奇襲に失敗した大ヒトデは、今度は《毒ガス噴霧》による一発逆転を図ったようだ。体中から毒々しい色の霧が噴き出す。


「毒はあんま意味ないんだけどな」


 チョコはドラゴン生来の免疫機能でほぼほぼ防げるし、マロンは《ビーストボースト》に毒耐性が含まれていると言っていた。

 実際、紫に霞む前線では今も変わらず大ヒトデが押されている。万が一のため持たせた《中級解毒ポーション》は不要になりそうだ。

 このままでは不利と見たのか、それとも思ったような成果が出ずに焦ったのか。大ヒトデは大きな隙を晒しつつも、二本の触腕で地面を蹴り、崖の上へと跳躍した。


「〈ゲイルジャベリン〉」


 突風の槍を大ヒトデの中心、《魔核》の埋まる位置に向けて放つ。傍らのミルクも〈上級魔術:フリッカーエッジ〉で追い打ちをかける。

 空中では避けられないだろうと踏んでの攻撃だったが、それらは分厚い氷の盾に阻まれ失敗に終わった。盾の厚さからして、ピンチになると使うと言う〈シールドオブパーマフロスト〉だろう。

 最終守護者を追い詰めたということだが、あの高さまで逃げられるとマロンでも一跳びでは追いつけない。

 飛行能力で追うか逡巡したところがマロンが叫んだ。


「小竜に戻して!」

「! ああ!」

「ていやっ!」


 チョコをむんずと掴んだ彼女の指示に、俺が反射的に従うのと、小竜に戻ったばかりのチョコがブン投げられるのに、時間差はほぼ存在しなかった。


「っ、《若竜化》」


 遅れて意図を理解し、《若竜化》を再発動させる。

 エースピッチャー顔負けの剛腕で投げ飛ばされた小竜は、その豪速を維持したまま若竜となり、氷盾の脇をすり抜けて大ヒトデに接触した。

 咄嗟に張られた水の膜を体当たりで突き破り、近距離で放たれた《激流噴射》を羽ばたき一つでひらりと躱し、その爪牙でガシリと組み付いて谷底にまで引きずり落とす。


「《職権濫用》、〈シュート〉」

「〈大鋒槊(だいほうさく)〉」


 そこで待ち受けるのはマロン。〈下級砲術〉が氷盾に開けた穴を通って、彼女は高く跳び上がる。

 跳躍と落下、相反する運動が生む相対速度が〈槍術〉の威力を跳ね上げる。足場のない空中で、それでも彼女の一撃は、《魔核》のある中心部を(しか)と穿ち抜いたのだった。

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