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48.加勢

 探索を続けた俺達は巨大樹の幹に辿り着いた。

 幹には大きな溝が刻まれ通路のようになっており、ここを通ることで他の枝に移動することが出来る。


「ひえー、怖い怖い。落ちたら大変だねぇ」


 溝の道は枝に比べて狭い。道の端から下を覗き、身震いしたマロンが壁沿いまで下がった。

 軽い口調ではあるがケモ耳をペタンとさせているのを見るに実は割と怖いのかもしれない。

 この高さから落ちればいくら彼女の身体能力でも無事では済まないだろう。


「そんときはすぐに若竜を向かわせるから安心しろ」

「頼むよぉ」


 緊張から動きが鈍ってもいけないのでフォローしておく。若竜ならば人ひとり抱えて飛ぶくらい訳ない。

 その気になれば《階層石》の場所まで真っ直ぐ飛んで行くこともできる。二人で乗ると不安定になるし空中戦は避けたいのでやらないが。


 そうして上り坂になっている溝の道を歩いていると、


「──ァっ!」


 遠くから悲鳴が聞こえた。

 マロンと顔を見合わせる。


「行く?」

「あぁ」


 短いやり取りで互いの意思は確認できた。すぐに走り出す。

 奇襲への警戒が保てるギリギリの速度で溝の道を駆け上がり、見えて来たのは三人組の冒険者。

 魔術師と思しき女性と肩口を深く斬り裂かれ倒れた少年、その二人を守るように壮年の男性剣士が前線にて奮闘している。

 しかし戦況は芳しくない。なにせ敵の鳥人は七体もいるのだ。

 敵が回り込もうとしても女性が〈魔術〉で阻止するため辛うじて戦線を保てているが、男性の体には刻一刻と傷が増えている。


「助けようかっ?」

「ああっ、頼むよ!」


 マロンの問いに女性が応じ俺達も参戦することが決まった。

 グン、と加速するマロンが前線に着く前に〈魔術〉をかましてやる。


「〈ガストブレード〉」


 大振りの突風の刃がマロンの頭上を通り過ぎて鳥人達を襲う。各々の方法で防御されたものの攻撃の手を止めさせられた。


「ハッ!」


 そこにマロンが到着する。

 手にした槍が霞み、かと思えば鳥人の胸に穴が空いていた。突き、引き戻す速度が尋常でない。

 周りの鳥人達が仲間の仇を取ろうと動き出したが彼女は既に後退しており間合いの外だ。その隙に男性剣士も飛び退いた。


「ヒュー、嬢ちゃんやるねぇ。その若さで大したもんだ」

「おじさんも一人で持ち堪えるとか凄いじゃん」

「お、おじさん……」


 何やらショックを受けた様子の男性剣士だが、その手はベルトの瓶に伸びている。目線は鳥人達に向けたまま素早く瓶を取ると、蓋を指で砕き中身を自身にぶっかけた。

 瓶の中身は《薬品(ポーション)》だったようで傷がみるみる塞がって行く。


「俺ぁ見ての通り剣士だ。無事な方の仲間は魔術師兼治癒師だが魔力にあんま余裕がねぇ。そっちは?」

「私は槍使い、後ろのリュウジ君は魔術師で──」


 二人の情報交換を妨害するように鳥人達が動き出した。

 六体に減った鳥人達が殺到するが、前衛が増えたことでその守りは安定感を増している。徐々に戦線を下げつつも攻撃を凌ぎ、また着実にダメージを与えている。

 向こうに遠距離攻撃持ちが居ないのも幸いした。


「〈ウィンドアロー〉」


 二人の守備の隙間を埋めるように〈魔術〉を放つ。僅かな差だが、速度に優れた風の〈魔術〉は前衛の補助に使いやすい。

 そのまま適宜、支援しながらマロンの言いかけた言葉を引き継ぐ。


「俺は召喚系の《ユニークスキル》を持ってる! 今からドラゴンを呼ぶが攻撃しないでくれ! 《双竜召喚》」


 混乱を避けるために送還していた小竜を再度呼び出した。

 《若竜化》を施し、溝道の外から回り込むようにして鳥人達を襲わせた。

 拮抗していたところにそんなことをされては襲われる側は堪らない。


 そちらの対応へ意識が割かれた鳥人が、すかさず放たれたマロンの刺突により絶命。その奥にいた鳥人達に若竜が突撃し撹乱。

 暴れ回る若竜に気を取られれば前衛に殺され、前衛にばかり構っていれば若竜に殺される。そうしてどんどんと数を減らしていった。


「〈ウィンドカッター〉」


 距離を取って立て直そうとした鳥人を風の刃で斬り裂き、それで戦闘は終了となる。


「いやー、助かったよ。ありがとう。ドロップは半々でいいかな?」

「うん、それでいいよ。でも七個だけどどうする?」


 マロンが報酬の配分を話し合ってくれているので俺は倒れている少年の方を見よう。

 戦闘が終わったことで魔術師の女性の手が空き、治癒の〈魔術〉を掛けている。そこそこ強力な〈魔術〉のようで、深い傷がどんどんと癒えて行く。

 回復系〈魔術〉は水と光の属性を組み合わせて発動させるため、最もグレードの低い〈ヒール〉なら俺にも使える。だがそれでは掠り傷を治すのが関の山、これほどの効果は見込めないだろう。

 本職の治癒師の実力に感心していると、完治したらしい少年が身を起こす。


「ごめんなさい、僕がやられたせいで……」

「気にすんじゃないよ、あの数じゃあ仕方ないさ。それよりお礼、助けてくれたお兄さん達がいるんだからさ」

「あ、うん。さっきはありがとう」

「アタシからも礼を言わせてもらうよ。ありがとね」

「たまたま通りがかっただけなのでお気になさらず。それより無事でよかったですよ」


 鑑定で致命傷ではないのは分かっていたが、かなりの重症に見えたからな。無事で本当になによりだ。

 そんなことを話しているとマロン達が戻って来た。《ドロップアイテム》の配分は俺達が四つ貰ったらしい。


「今回は本当に助かったぜ。まっさかあんな《レベル》高いやつらに挟まれるたぁな」


 《迷宮》の魔物の《レベル》帯は階層が上になるほど広くなる。この第十一階層では《レベル31~42》だ。

 加えて、《迷宮》の魔物は原則として五体以上では群れないが、戦闘中に他の群れがやって来たらそいつらも普通に参戦する。

 普段は問題ない階層でも、運悪く高《レベル》個体と遭遇し、そこへ増援まで加わるとピンチに陥ってしまうこともあるそうだ。


「俺ぁネグアってんだ。しがないC級冒険者だが何かあれば遠慮なく頼ってくれ。今日の恩は忘れねえ」


 男性剣士に続き、少年と女性も自己紹介をしてくれた。

 俺達も改めて自己紹介し、これから帰還するらしい彼らとはそこで別れた。

 溝の道を再び歩き出す。


「ふぅ。にしてもレギオンじゃなくて良かったね。数も少ないし統率も取れてなかったから楽勝だったよ」

「レギオンってーとあれか。魔物がめっちゃ群れるっていう」


 《迷宮》には指揮能力を持つリーダー的な魔物が稀に現れる。そのような魔物を指揮個体と呼ぶ。

 《ジェネラルヘルム》を落とした《リビングアーマージェネラル》などはその一種だ。

 通常、指揮される魔物は三、四体だが、指揮下に置かれた魔物同士は連携してくるため、同規模の群れと比べても厄介さが一段階上がると本にあった。


 そしてさらに希少な事例だが、指揮個体が大量の魔物を同時に指揮し軍団(レギオン)を形成することもあるらしい。

 その現象の名がレギオン。

 レギオンの群れは最大で百体弱にまで膨れ上がり、魔物ごとの得意分野を活かして協力するため非常に危険なのだそうだ。


「そうだね。まあ私とリュウジ君ならレギオンにだって負けないだろうけど」

「俺は空まで飛んで来る魔物を何十体も同時に相手取りたかねーぞ。まあ勝てるってのには同意だけどな」


 ウォルターの配下軍団を倒せたが故の自信だ。最大でも百体に届かない群れに負ける気はしない。

 とはいえ、レギオンなどそうそう起こるものではない。気にすることもないだろう。

 大丈夫大丈夫。

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