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4.魔物退治

 東門から街を出て草原を歩く。疎らに木が生えたこの草原には魔物がぽつぽつ存在している。街道を外れれば襲われるのは時間の問題だ。

 魔物に遭遇する前に俺の能力を整理しておこう。


 《職権濫用》。《職業》に合わせた《装備品》を召喚する。《竜騎兵》が召喚できる武器は魔導銃、魔力を打ち出す銃だ。《レベル1》では一種類しか呼び出せない。

 《双竜召喚》。二匹のドラゴンを召喚できる。魔力消費が激しい上、ドラゴン達の戦闘力がわからないため頼りづらい《スキル》だ。

 《竜の血》。《魔力量》を底上げし魔力の回復も早める。《職権濫用》と《双竜召喚》の召喚、召喚維持、更には魔弾の発射にも魔力は消費するので《竜の血》がなければ俺の魔力はすぐに枯れてしまう。


 この際なので明かしておくと《スキル》の詳細を確認できているのは《竜の体現者(ザ・ドラゴン)》の効果だ。《レベル1》では生物・物品の鑑定が可能となりさらに視力系統を強化する。今ならエースピッチャーの球も容易に打ち返せるだろう。

 もう一つの《称号》である《竜骨》は今は関係ないので置いておこう。

 そして最後の《砲術》は……と、魔物を見つけた。説明は後にしよう。


「ブヒヒッ!」


 棍棒を構えた二足歩行の豚、オークだ。

 《竜の体現者(ザ・ドラゴン)》の鑑定によると《レベル》は十二。俺より上だが《竜騎兵》の補正もあって《パラメータ》に大きな隔たりは無い。万が一の場合は《双竜召喚》で足止めして逃げられるがそんな事態にはならないだろう。

 オークが棍棒を振り上げこちらに駆けてくる。俺は銃を召喚し構えた。構え方は我流だが炎銃の反動は非常に小さいので体を痛める心配はない。

 まだ距離はある。落ち着いて銃口を水平よりやや下に向け引き金に指を掛ける。

 小さく息を吸って、吐いて、《砲術》を発動させる。


「〈スプレッドショット〉」

「ブギョォ!?」


 幾つもの炎弾が同時に放たれた。〈砲術中級:スプレッドショット〉は弾丸がショットガンさながらに散らばるため俺の射撃精度でも難なく命中させられる。

 炎の弾丸は当たると小さな爆発を起こしオークを焦がして吹き飛ばす。

 せっかく走って来たというのに後ろに押し戻されるオーク。瀕死だがまだ息はあることが鑑定でわかった。

 油断なく銃を構え、立ち上がる様子のないオークに向ける。最初よりは随分近づかれたがまだピッチャーとバッターくらいの距離がある。

 静かに狙いを定めて発砲。一発目はやや右下に、二発目は左にずれ三発目でようやく命中。その感覚を忘れないよう繰り返し照準して引き金を引いた。


 そのままオークが息絶えるまで狙撃を続けた。

 練習の甲斐あって射撃精度はそれなりに向上できたし確認したかったことも試せた。苦しんでいたオークのことを思うと胸が苦しいが襲ってきたのはあちらだし俺も生きるために必死なのだ。恨みっこなしで願いたい。


 討伐証明になる耳を切り取ってポーチに仕舞い、次の獲物を求め徘徊する。

 今の内に《砲術》の説明をしておく。

 《砲術》は銃を使って特別な技、〈術技〉が使えるようになる《スキル》だ。前方に弾丸をばら撒く〈スプレッドショット〉を始め、様々な〈砲術〉が使える。

 発動するには集中しなければならず、使用後は一瞬体が硬直し、さらに体力も余計に消耗するがそれだけ〈術技〉は強力だ。先程のように一撃で大勢を決することもできる。

 また〈砲術〉のリーチは長いので適正な距離で使えばデメリットにもある程度目を瞑れる。


「ピェァ!」


 歩いていると新たな魔物と目が合った。ザクロみたいな赤い目だ。

 鑑定したところ四角鹿(フォーホーンディア)と言う種族らしい。確かに角が四本ある。

 だが鹿かと言われると首を傾げざるをえない。修学旅行で煎餅をあげた鹿達はもっと可愛らしかった。

 目はこんなギョロついてなかったし赤く充血してもなかった、そして何より草食動物だった。角を血に濡らし死体に食らいつく恐ろしい化け物ではなかったはずだ。

 その四角鹿が全部で五体。《レベル》は十を超えたくらい。これを一人では厳しいな。


「丁度いい、《双竜召喚》」


 こいつらで小竜の戦闘力を測らせてもらおう。


『鹿の群れを倒してくれ』


 目に見えない繋がりを介して思念で指示を出し鹿達にけしかける。低空飛行で突っ込む小竜達と鹿が激突した。ドラゴン達は振り上げられた鹿の角をひらりと躱し牙や爪で攻撃している。

 ドラゴンの方が体は小さいがそれ故に翻弄できている。《パラメータ》は互角だが素の身体能力や戦闘技術の差が出ているのだ。


「グラゥ!」


 二匹の小竜がタイミングを合わせて距離を取り、一拍の溜めの後、口から魔力を放出する。《スキル:ドラゴンブレス》だ。

 魔力の奔流が鹿達を襲う。悲鳴を上げ一匹、また一匹と倒れていく。

 《ドラゴンブレス》が切れた頃には鹿達は全て倒れ伏していた。ドラゴン達はすかさず近づき有無を言わせず首を掻っ切っていった。


 おお、強いな。逆らわれたら負けるかもしれない。

 境界で、召喚した生物が裏切ったりしないことは確認したので心配は無用だが。


「……ん? 食いたいなら食っていいぞ。必要なのは角だけだからな」


 鹿を食べたいという思念が伝わって来たので許可する。召喚生物に食事は不要らしいが食べたいのならそれでいい。命を奪った以上、その場に捨てていくのも気が引けるしな。

 ドラゴン達が食べている間に耳と角を取ってしまおう。オークと違い鹿系魔物は角が武器や薬の素材になると冒険者ギルドで聞いていた。

 ナイフの柄で枝角を折りロープで纏めて縛る。ナイフもロープも冒険者入門セットに入っていた。


 作業は終わったが食事はもう少しかかりそうだったので《ステータス》を確認する。

 俺の《レベル》は十一になっていた。オークを倒した後にも確認したがその時よりも高い。どうやらドラゴンに任せきりでも《レベル》は上がるようだ。


 ……よし、ドラゴン達の食事も終わったようだな。検証は済んだし素材も沢山手に入った。ここから先は木が多く見通しが悪い、そろそろ引き返すとしよう。そう思った時、遠くから声がした。


「おい! そこのお前逃げろ!」


 声の方を振り向いて目を見開く。心臓が飛び跳ねる。森から逃げ出す数人の冒険者。その奥からソイツは現れた。

 森の(ふち)の木が一撃で薙ぎ倒され、追跡者の全貌が露わになる。牛の頭に人の体。平野の草を踏みしめるのは土管じみた太さの両足。

 涼やかなマリンブルーの皮膚を隆々とした筋肉が押し上げる。その手に握られているのは《スキル》で作ったと(おぼ)しき氷の大斧。

 俺よりバット一本分以上デカイその怪物の名は──。


「──ミノタウロス」


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牛鬼種―フロストミノタウロス Lv40


スキル 剣術(中級)Lv5 体術(中級)Lv2 牛鬼の膂力Lv4 気配察知Lv3 コールドフィールドLv2 自動治癒Lv5 雪中潜伏Lv1 潜伏Lv2 体力節約Lv4 突進Lv6 氷斧生成Lv3

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