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33/108

33.VSトカゲ

 家を買って二日が経った。順調に《中型迷宮》を攻略していった俺達は第十階層を訪れていた。

 相対するは砂漠エリアの区間守護者、目にも鮮やかな赤き鱗を持つトカゲ、《フレイムサラマンダー》である。


===============

蜥蜴種―フレイムサラマンダー Lv40

職業 区間守護者

職業スキル 守護者の妙技 守護者の偉容


スキル 爪牙術(上級)Lv4 体術(中級)Lv4 風魔術(中級)Lv4 土魔術(中級)Lv4 火魔術(上級)Lv4 水魔術(中級)Lv4 暗視Lv4 炎纏(えんてん)v4 壁這いLv4 気配察知Lv4 自動治癒Lv4 自動再生Lv4 潜伏Lv4 耐熱Lv4 蜥蜴の尻尾Lv4 毒牙Lv4 突進Lv4 ハードスケイルLv4 バーナーレーザーLv4 火精霊の加護Lv-- 魔力自動回復Lv4

===============


「〈ストーンアロー〉」


 駆け出すマロンの脇をすり抜け石の矢が飛んで行く。

 手始めに放った〈魔術〉をトカゲは軽々と躱した。短いトカゲの足からは考えられない瞬発力だ。

 反撃とばかりに炎の矢を撃ってくるトカゲ。狙いはマロンではなく俺のようだ。


「〈アイスシールド〉」


 待ってましたとばかりにこの部屋に入ったときから維持していた〈魔術〉を発動させる。昨日の練習の成果だ。氷の盾は一発で砕かれたが相手の攻撃も相殺できた。


 その間にトカゲを間合いに捉えたマロンが槍を突き出す。トカゲの頭は人間の肘くらいの高さにあるので突きやすそうだ。

 だがトカゲも守護者、簡単には食らってくれない。前脚を上げ弾いてしまった。すかさず次の攻撃を繰り出そうとするマロンを見止めて小竜に指示を出す。


『今だ!』


 俺の護衛をしているのとは別に、上空で待機していた小竜が急降下する。

 トカゲはマロンの攻撃から逃げるように飛び退いたが小竜に軌道修正させたので問題ない。直撃コースだ。


「キュゥ!」

「やべっ」


 衝突の直前、トカゲの上に炎の盾が現れた。小竜が止まれず炎に突っ込む──間一髪で召喚を解除。危うくドラゴンの丸焼きになるところだった

 すぐに再召喚してマロンの援護に向かわせる。

 そのマロンはトカゲに連撃を浴びせている。トカゲの反撃に備えて槍のリーチギリギリまで距離を取ってだ。硬直を嫌ってか〈術技〉も使っていない。


 いつにも増して慎重なのは敵が炎の使い手だからだ。

 炎は卓抜した殺傷力を秘めている。

 触れるだけで怪我をするモノなどこの世にそうそう無い。

 炎とは、大概の生物にとっての天敵なのだ。


「〈ウィンドアロー〉」


 マロンの攻撃に合わせて〈魔術〉を使う。首の付け根辺りに命中したが傷は浅い。このレベルの敵になるとアロー系では荷が重いか。

 ここで小竜が合流した。

 攻め手が増えたことでマロンには余裕が生まれ、反対にトカゲの被弾が増える。所々鱗が剥がれ血を流したトカゲは、攻撃の隙を見て大きく飛び退いた。

 マロン達は追おうとするも炎の壁に阻まれる。〈中級魔術:フレイムウォール〉だ。

 ややあって火勢が弱まり出し、攻撃のタイミングを計り始めたその時──。


「しゃがんで!」


 ──強い攻撃の気配を感じた。

 作りかけの〈魔術〉を放棄し反射的に横っ飛び。数秒前まで俺の頭があった空間をオレンジの光線が貫いた。

 危ねぇ。


 光線は炎の壁の向こうから来た。《スキル:バーナーレーザー》だろう。

 威力も速度も高く戦う際には要注意と資料にあった。発動にはタメが必要なはずだが炎の壁の向こうで準備をしていたのだろう。

 強力な《スキル》だが再発動にはかなり間を開けなければならない、なのでこの戦闘中はもう警戒しなくていい。これでまた少し攻めやすくなった。


 炎の壁が消え奥にトカゲが見えてくる。その姿にはこれまでとは違う点が一つ。

 それは火炎。元から炎のように赤かった体が今は本物の炎に包まれている。


《炎纏》ランク3:魔力を消費して炎を纏い《攻撃力》と《敏捷性》を少し引き上げる。


「チッ、使って来たか」

「いーじゃんいーじゃん! 追い詰めてるってことだよ!」


 俺のぼやきにマロンが応じる。

 トカゲの誇る強力な《スキル:炎纏》。体が冷えた時か強い危機感を覚えた時に使うとのことなので、発動を出来る限り遅らせるため水系の〈魔術〉は控えて来た。

 発動したらしたで炎の鎧に阻まれて〈フリーズブリーズ〉などの低威力〈魔術〉は効かなくなるのだが。

 その炎上トカゲが砂を巻き上げながら駆けて来る。


「〈ガストブレード〉」


 マロン達とトカゲの間合いが五メートル程となったところで最高威力の〈魔術〉をお見舞いする。

 《風魔術(中級)》が《レベル10》になって初めて使用可能となるこの〈魔術〉は、まだ発動までに時間がかかりコントロールにも不慣れだが、相手の動きが直線的であれば当てるのはそう難しくない。

 大の大人ですら一撃で両断する大きさの疾風の刃が、文字通り風のような速さでトカゲに迫り、次の瞬間トカゲが横に逸れたため砂地に切れ目を作った。

 俺がレンにしたように、《気配察知》で読んでいたのだろう。計画通りだ。


「〈大鋒槊(だいほうさく)〉!」


 マロンが鋭く踏み込み刺突を放つ。

 溜めの長い〈ガストブレード〉が避けられるのは百も承知、それを囮にマロンの攻撃を当てる作戦だった。

 トカゲの走る速度が上乗せされた一撃はその顔面をしかと捉えた。拡張された穂先が鼻先に沈み込む。


「ギィアっ!」


 だが仕留めきれていない。〈大鋒槊〉の効果が切れ穂先が抜けるとトカゲはすぐさま走り出す。

 小竜の《ドラゴンブレス》も意に介さず一心不乱に突き進む。


《蜥蜴の尻尾》ランク3:発動後、次に受けた攻撃を無効化する。二十四時間に一度だけ使える。


 マロンとの間にあった距離を瞬く間に消化したトカゲは〈術技〉を使ったばかりの彼女へと牙を剥き、槍の柄で顎をかち上げられた。


「ギィィ!?」


 〈大鋒槊〉は〈下級槍術〉、当然硬直が解けるのも早い。


「〈アイスパイル〉」


 マロンの背より高く上がったトカゲの頭に氷の杭を飛ばす。杭は見事にトカゲの頭を撃ち抜き、その胴体にマロンが横薙ぎを加え弾き飛ばす。

 それがトドメとなりトカゲは《ドロップアイテム》へと変わった。

 部屋の奥に宝箱が現れる。

 俺は宝箱に近づきながら、槍の素振(すぶ)りしているマロンに声をかけた。


「お疲れマロン」

「あぁ、うん、お疲れ。早くアイテム回収しよっか」

「そうだな」


 ふむふむ、ドロップも宝箱の中身も俺達が使える物ではなかったが売ればそれなりの値になる。家具を買ったりして金欠気味の俺にはありがたい物だ。


「そんじゃ帰るか」

「うん。それと、良かったらでいいんだけど、明後日からさ──」

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