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1.プロローグ

「ん、うぅ……」


 背中に固い感触。どうやら眠っていたらしい。

 身を起こしながら寝ぼけ(まなこ)で辺りを見る。


「……何だここ?」


 俺が目覚めた場所はどうやら教会のようだった。しかし壁には大小様々な鏡がこれでもかと飾られている。こんな場所は知識に無い。

 本当に何だ、ここ?


「ようこそいらっしゃいました」

「うぅおぅ!?」


 背後から突然かけられた声に思わず声を上げる。立ち上がりつつ振り返ってみるとそこには美しい女性が居た。

 外国の人だろうか。瞳はos1のパッケージのように青く、髪は黄金のような金色。背丈も高く平均的な男子高校生である俺と同じくらいある。


「ああ、すみません、驚かせてしまいましたね」

「あぁ、いえいえ。それよりここがどこだか分かります?」

「はい。ここは境界。地球と異世界の中間に位置する狭く小さな世界です。あなたは死亡したためここにやって来たのです」

「……え、俺、死んだんすかっ?」

「はい、交通事故で」


 言われて記憶をたどってみる。平日の部活帰り、歩道に突っ込んで来たトラック、咄嗟に隣を歩いていた友人を突き飛ばしたところでぷっつり記憶が途切れている。おそらく死んだのはその後だろう。

 自分でも意外なほど冷静にそう分析できた。


「とはいえ死んだ人間全てがこの境界に来るわけではありません。今回はいくつもの偶然が重なった結果ですね。そしてあなたには今、二つの選択肢があります。このまま消滅するか、私の世界に転生するかです」

「転生、ですか。……転生先の世界はどのような世界なんですか?」

「難しい質問ですね。魔物が存在する剣と魔法のファンタジー世界、で伝わるでしょうか」

「まあ、はい、なんとなくは」

「それからもう一つ、転生とは言っても孤児として赤子から生まれ直すコースと地球での肉体を修復して使うコースがあります。お好きな方を選んでください。現代の日本ほど戸籍管理は徹底されていないのでその点は考慮せずとも大丈夫です」


 もちろん消滅したくはないので転生はする。

 問題はどちらのコースにするかだが……。


「それじゃあこの体のままで転生します」


 魔物なんてものがいる世界だ、できることは多い方がいいだろう。


「分かりました。ではこちらに必要事項を入力してください」


 そう言って差し出されたのは一枚の鏡。スマホくらいの大きさだ。受け取ると鏡に映った光景が歪んで行き文が浮かび上がった。


『名前を入力してください【   】』


 訳も分からず空欄に触れるとキーボードが表示された。本当にスマホみたいだ。

 鏡面をタップして入力していく。


眼竜(がんりゅう) 龍治(りゅうじ)


 その後もいくつかの質問に答えた。どうやら次が最後の質問のようだ。


『境界に流れ着いたことを祝福し力を授けます。望むものを選んでください』


・武の道を究めよう 武術セット

・魔の深淵を目指そう 魔術セット

・索敵も隠密もお手の物 斥候セット

・あなたに合わせた特別仕様 竜セット


 どうやら特典を貰えるようだ。各項目に触れると詳しい説明を確認できる。

 ここが最も重要そうだ。それぞれの説明文を注意深く吟味していく。結果、候補は二つに絞られた。


 武器や肉体関連の《スキル》がウリの武術セットと竜の名を持つ力が得られる竜セットだ。

 総合力では竜セットが上回る印象を受けるが武術セットには《ウェポンマスター》というカッコいい《職業》に加え《自動治癒》という《スキル》もある。効果は確認できないが名前から回復能力なのは想像がつく。魔物の居る物騒な世界らしいので傷を治せる力は便利そうだ。

 だが竜セットならばイカした《竜騎兵(ドラグーン)》の《職業》に就ける上|《スキル:双竜召喚》が手に入る。竜を呼べるのは頼もしいしもしもの時の囮にも使える。特別仕様という売り文句も魅力的だ。


 悩みに悩み抜き、結局竜セットを選ぶことにした。武術セットには多種の《武術スキル》があったがそんなにたくさん持ち歩けないし使いこなせる気もしない。ならば力を十全に活かせそうな竜セットの方がいいだろうという考えだ。

 回復能力も魔法があるのなら何らかの手段で補えるかもしれないしな。

 回答を終えると鏡がふっと消え去った。


「ありがとうございました。作業は以上です。あとは転生するのみとなりますが何か他に確認したいことはありますか?」

「そうですね、じゃあ──」


 それからいくつか質問をした。転生先の国の文化や言語、そしてこの女性の立場などについてだ。

 取りあえずその場で思いついたことは全て聞き尽くした。それなりに知識は得られたので転生しても上手くやって行けるだろう、多分。


「それではこれより転生開始します。よい一生をお過ごしください:


 その言葉を最後に、俺の視界は白い光に塗りつぶされた。

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