71 頼れる相棒
探索を続けることしばらく。
副産物として様々なものが手に入るここは、冒険者からしたら宝の山なのかもしれないと思いながら、約1000本目の栄養ドリンクを空間魔法でしまう。
「でも、シリウス空間魔法まで使えるんだね」
「一応ね。便利で助かるよ」
「いいなぁ、私は使えないから素直に羨ましい。まあ、私というか、エルフでも私が知る限り3人しか使えないんだけどね」
空間魔法はかなりレア度の高い魔法と言える。
それは、2度目の英雄の頃の人生でも、今世でも同じようだ。
まあ、あそことは違ってここではあんな地獄の扱いは受けないので本当に良かった。
今世バンザイだね。
「ん……この部屋なんか変だね」
そんなことを考えていると、いくつかある部屋のうちの一つで立ち止まるスフィア。
そのスフィアの言葉の途中で俺もやや遅れ気味にその部屋の魔力反応に違和感を覚える。
英雄の前世の頃に何度も出くわしたことのある、トラップのある魔力反応だったのだ。
「だね。多分魔法系のトラップかな?中にそこそこ良いものがあるかもね」
「おー、シリウスも私と同じ意見なんだね」
嬉しそうに微笑むスフィア。
にしても、スフィアは凄いな。
これでも、俺は英雄の前世の頃に1人で未発掘の地下遺跡に単身潜って、それなりにこの手のトラップやらの察知に敏感になっているのに、そんな俺よりも遥かに早く見つけてしまう程の魔力感度。
やはり、魔法の本場であるエルフなだけあるね。
まあ、でも、スフィアが単純に凄いだけかもしれないけど……何気にトラップオンリーの部屋を避けてるし、敵の索敵も早い。
正直、戦闘において初めてこんなに頼れる人に出会った気がする。
ソロプレイのボッチが初めてマルチプレイして、上手い人と当たって感動してるのに近いのかもしれない。
まあ、ネトゲとかあんまし知らないけど。
「それで、入る?私はどっちでもいいけど」
「まあ、入るのもいいかもね」
流石に術式を見る前に罠の解除は少し難易度が高いが、反応を見るにそこまで高度な罠ではなさそうに、思える。
勿論、古代の魔法には、魔力消費の少ない罠などゴロゴロあるが、この遺跡の場合は俺はどちらかといえば、最初の前世を彷彿とさせる化学系の防衛機能や罠が多かったように思えた。
マシンガンとか、ロケットランチャーとか、俺はいつから近未来に来たのかと思う程に進んだ技術力。
動力は魔力なので、最初の前世とは威力が桁違いなのだが、それはそこまで問題はなかったりする。
そんなことよりも、部屋のトラップとは別のお宝らしき物の反応の方が俺にとっては気になるものであった。
トラップとの対比が凄いが、そこそこ良いものかもしれない。
スフィアもその認識に至ったのか、警戒しながら、部屋のドアを慎重に開ける。
物理的な罠が無いのは確認済み。
さて、問題は魔法的な罠の方だが……そんなことを思っていると、煙が周囲を覆い始めた。
「これは……」
「多分、精神魔法系のトラップだね。スフィア、一応気をつけてね」
「シリウスも――」
そんな言葉と共に俺の意識はブラックアウトするのであった。





