57 シリウスさん家の晩御飯
「ほぅ、これは中々凄いね」
姪の乱入はありつつも、なんとか調理を終えて運んだ料理は結構な数になった。
フライドポテト、フライドチキン、野菜の天ぷら、唐揚げ、焼餃子、水餃子、ハンバーグ、変わり種でハンバーガーも作ってみた。
揚げ物系は勿論のこと、野菜もドレッシングやマヨネーズなどを使用しており、普段とは違うテイストになっている。
うん、毎日食べたら太りそうだ。
まあ、その辺は料理を作るバルバンにきちんと注意しておいたし、早々ヤバくなるほど出ることはないだろう。
「シリウス、この茶色の肉は何かな?」
「唐揚げですよ、ヘルメス義兄様」
「へー、なかなか美味しいね」
我が義兄は唐揚げを気に入ったようで、美味しそうに食べていた。
「それにしても、お義兄さんの娘は元気ですね」
楽しげに子供たちの輪に入っている我が姪ティファニーは、ヘルメス義兄様の子供達ともあっという間に仲良くなっていた。
きっと、ああいう子を前世でコミュ力高いとか言うのだろうと、アホなことを考えていると、ヘルメス義兄様はレグルスに尋ねていた。
「もう、婚約者は決まったの?」
「いや、まだだよ。でもまあ、シリウスの婚約者になるんじゃないかな?」
「あぁ、なるほど。その可能性が高いか」
……おかしくない?
なんか既に俺が娶る感じになってるのは気のせいだろうか?
うん、気のせいだろう。
兄が弟に娘を勧めるなんてことはないはず。
「うん、どの料理も美味しいね。ただ、毎日食べるとモルシュ侯爵みたいに肥えそうだ」
代表になるほど、肥満体型らしいモルシュ侯爵。
まあ、俺はその人のこと知らんけど、レグルス兄様は知ってるようで納得していた。
「あれ?シリウス、これは?」
レグルス兄様がとある料理を見つけて聞いてきた。
「メンチカツですよ、レグルス兄様」
「見たことないけど……これは今日が初お披露目だったりする?」
「いえ、ただ、レグルス兄様は知らないかもしれませんね」
メンチカツを出した時に、レグルス兄様は居なかったし、ハンバーグを考えた時に同時に思い出した存在だったりする。
「へー……これも美味しいね」
「すっげー!おにくやわらかい!」
ハンバーグにフライドポテト、そしてメンチカツは子供受けが非常に良いらしく、母親に怒られつつも美味しそうに食べていた。
女の子や女性はこの後に出したプリンとかのデザートの方への反応が凄かったが、やっぱりどの世界でも女性は甘いものが大好きなのだろうとしみじみ思った。
「にしても、シリウスがフローラを気に入って良かったよ。フローラも満更でもないようだし」
「そうなんですか?」
だったら、嬉しいかな。
俺の片想いだったら少し切ないしね。
「それで、車椅子の方はどうですか?」
「ああ、それなら今夜中には仕上がると思うよ。後はその都度直すしかないかな」
流石に仕事が早いようで、ある程度の伝えただけですぐに形になるようだ。
これで、フローラも遠慮なく食事の席へと出られるというものだ。
本当は俺が連れてくるつもりだったが、フローラは迷惑になるからと、遠慮して譲らなかったので、早急に車椅子が出来るのは助かる。
「でも、本当にシリウスは便利だね」
「物みたいな言い方ですね」
「分身とか出来ないかな?ウチの国も欲しいんだけど」
冗談めかしたことを言われるが、分身したら遠慮なく使われそうなのでしないでおく。
まあ、一応似たような魔法はあるのだが、俺としても自分が2人いるのはなんとなく居心地が悪いのであまり使ってない魔法に分類される。
「おじちゃま!」
ふと、見ればティファニーと女の子達から熱い視線が向けられていた。
それを見て察せない俺ではないので、ため息混じりに答えた。
「食べ過ぎはダメだから、最後の1つだよ?」
「わーい!」
「……シリウス様、ナイス」
サラリと混じる女性陣。
セシルは勿論遠慮なくお代わりを所望するが、フィリアとシャルティアはそうでもないようで、大人しく座っていた。
「フィリア、セシル、シャルティア。これからフローラに会いに行くけど……3人はどうする?」
そう聞くと、フィリアが微笑んで答えた。
「今夜はフローラさんに譲ります。シリウス様、フローラさんとゆっくりしてきてください」
呼び方が変わったようだが、随分と仲良くなったようだ。
それにしても、行くかどうか尋ねたのにその返答はまるで、今夜俺がフローラと寝るような言い方だったけど……どうなの?
行ってみて、枕が増えてたらそうなのかもしれないなぁ……なんて思いつつも満更でもなかったりする。
今日はあんまり話す時間無かったし、寝るまで色々話せるのは有難いかな。
まあ、確定みたいだけど、思い込みの可能性もある。
あまり浮かれずに、ポーカーフェイスを貫こう。
フィリアには色んな顔を見られてるが、まずはカッコイイ姿を見せねば。
今のところ俺は、フローラの厄集めの呪いで溜まった病気の治癒しかしてないし、互いをもっと知るのはいいことだ。
そう、だから、決してフローラという美少女と添い寝出来るかもと期待した顔をしないようにしないと。
――なんて、思ってる俺は心が汚れてるのだろうと、ティファニーを送り届ける時に見たあまりにも純粋な我が姪の笑顔を見て思うのだった。





