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39 腹話術と人形

「うん、まあまあかな」


針仕事はそこまで得意でもないけど、やり始めると意外と楽しいと分かった今日この頃。


男が針仕事をするのがこの世界ではほとんど無いので、俺が針と糸を所望すると怪訝な顔をされたが……うん、気にしない。


刺繍などの分野で女性に勝てる気はまるでしないが、勝ち負けには拘ってないので、その辺は寛容でいいだろう。


王族ともなると、それなりにいい品を手に入れられるので、布や綿なんかも品質がいい。


ハンカチや、クッションなんてものもいいけど、今日は別のものを作ってみた。


「……シリウス様、これ人形?」

「随分と変わってますが……蛙と牛ですか?」


そう、俺が作ったのは蛙と牛を少し可愛くデフォルメした人形……というか、パペットかな。


手を入れて動かすそれは、昔テレビで特集がやってたので、なんとなく作りたくなったのだ。


「……穴空いてるけど、人形とは違うの?」

「まあね」


やって見せるのが早いと、俺は両手に蛙のゲコ丸と牛のモー吉を装着する。


『やあ、モー吉!今日も丸いね!』


ゲコ丸の口を言葉に合わせて動かしつつ、俺は逆に口を開けないように沈黙する。


『も〜!丸くない〜!も〜も〜』


プンプンと怒ってるようなモー吉を演じるが、声を変えて芝居ってかなり難しい。


しかも、腹話術で声を変えるのって素人にはハードルが高すぎたようだ。


口を開けずに、喋ってるのを悟らせないポーカーフェイスと、声音を変えての演じ分け。


俺には役者は無理だろうと痛感するのだった。


「……びっくり、人形が喋った」

「か、かわいい……!」


セシルは人形を見て、興味深そうな表情を浮かべており、シャルティアは喋る人形に心を打たれていた。


……俺の苦労の姿を見て、可愛いとか言ったわけじゃないはず。


うん、シャルティアはそんな女性ではないから、喋る人形の方に関心がいってるのだろう。


「……なるほど、こうして遊ぶんだ」

「まあね、とはいえ、俺は演技とは出来ないからそれっぽいことしか無理だけど」

「……さっきのは、凄く良かったよ?」

「ありがとう」


さて、本当はこのままパペットで少し遊ぼうかと思ったが……シャルティアの食い付きが以上にいいので、せっかくだしついでに作っちゃうか。


新たに、布と綿を用意して貰うと、俺は早速縫い始める。


手縫いって、綺麗に作るのは結構難しいけど、作業自体はそこそこやってて落ち着くので好きだ。


緑の布は、ゲコ丸への変身していき、白黒の布でモー吉を作成。


絵本関連で、にゃん太とワン次郎でも良かったが……それはどうせ、後で姪達のために作る予定なのでこうして別のを作っているのだ。


「……シリウス様、本当に多才」

「そう?」

「……うん、凄い」


俺の作業を見てそんなことを言ってくれる、セシル。


ちなみにシャルティアは、パペットのゲコ丸とモー吉に夢中なようで見てなかった。


なんというか……シャルティアのそういう可愛いところ好きだわ。


フィリア、セシル、シャルティアと三者三様の魅力があって、誰と居ても楽しいものだ。


「セシルはどんな動物が好き?」

「……牛」

「お肉の話じゃないよ?」

「……うーん、じゃあ、牛」


特に拘りは無いようだ。


まあ、牛のお肉美味しいけど……とりあえず、セシルにはモー吉をあげるとしよう。


「さて、シャルティア」

「は、はい!」


人形を見て微笑んでいたシャルティアに声をかけると、慌ててこちらを向いてきた。


うんうん、そういうリアクションは嬉しいねぇ。


「じゃあ、シャルティアはゲコ丸でいい?」

「え……あ、あの、よろしいのですか……?」

「うん、貰ってくれると嬉しいかな」

「ありがとうございます!」


大切そうにゲコ丸を抱きしめるシャルティア。


少しだけゲコ丸が羨ましくなる。


今度、俺も抱きしめて貰おうかなぁ……いつもは、俺からしか求めないし。


まあ、シャルティアから俺を抱きしめるなんて、難しいだろうし、俺からアクションしないとね。


そういう意味では、フィリアも似たような感じはあるけど、不思議とフィリアは何を言っても受け入れてくれそうな母性を感じるのでちょくちょく甘えてる。


そう考えると、3人の婚約者の中で1番アクティブなのはセシルかもしれない。


「……シリウス様、私には?」

「勿論あるよ、モー吉でいい?」

「……うん、ありがとう」


あまり大きく表情を変えることはないが、僅かに表情を動かすのは分かりやすい。


眼帯もトレンドマークとしていいが、馬鹿なことを言う奴らが居なければその綺麗な金色の瞳をもっと見たいものだ。


モー吉を抱きしめてから、セシルはふと、聞いてきた。


「……シリウス様、フィリア様の分は?」

「勿論あるよ」

「……流石」

「2人に作って作らない選択肢はないからね」


後日、フィリアにはペガサスのクイーンをモデルにした人形を渡したが、喜んでくれた。


そのお礼に貰ったハンカチのレベルが高すぎて、フィリアのスペックの高さを再認識したが……嫁力高いので、素晴らしい。


ちなみに、そのハンカチは大切な宝物の1つになるのだが……そりゃ、仕方ないよね。






















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第3王子はスローライフをご所望
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