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31 水餃子

「なんてことだ……!」


俺は思わず天を仰ぐ。


ここきて、俺はこれまでのツケを払わされることとなった。


なんて無情なのだろう……


事の始まりはいつもの気まぐれだった。


片栗粉を見ていて、そのレシピを思い出し、強力粉、薄力粉と揃えて生地をうって一晩寝かせた。


この時点で俺は問題点を全く意識して無かったのだ。


ところが、具材を揃えていざ!と本番を迎えて、気づいてしまった。


そう――醤油が無いことに。


ぐっ……ここにきて、後回しにしたツケが回ってくるとは……


「ま、仕方ないか」

「……シリウス様見てると面白い」


俺の絶望と嘆きと諦めを、『面白い』の一言で片付けるセシル。


うん、そういう所嫌いじゃないよ。


そんな訳で、いい加減何を作ってるのかを発表しましょう……そう!水餃子です! (拍手カモーンヌ!)


え?焼き餃子じゃないのかって?


俺的に、たこ焼きと並んで熱いのに食べたいものランキング上位の存在なのだよ。


熱々すぎるそれらは、俺が生きてることが確認出来るので、社畜時代に1月に1度は食していた。


まあ、買いに行けないから手作りだけどね。


「セシル、包むの手伝って」

「……うん」


餃子を手作りする時に、個数によっては包むのがタルくなるのだ。


そこで、セシルにも手伝って貰う。


結構器用な彼女は、特に苦もなく綺麗に餃子を包んでくれて、その苦労を知ってる俺には天使のように見えた。


そうして、鍋を用意すると、水餃子を作るが……口惜しい。


ポン酢醤油か醤油で食べれないのが惜しすぎる……酸っぱいのはあんまり好きじゃない俺なのだが、ポン酢での鍋は美味しいと知っている。


まあ、眠気覚ましに酸っぱいのとか辛いものとか食べまくったこともあって、お腹を壊しての負の連鎖があったが……あれは過去なのよ、忘れよう。


うーん、やっぱり醤油を早めに入手したいな。


餃子なら、ご飯も欲しい。


チャーハンもたまには作りたい。


あれ?改めて考えると、日本食って実は凄いんじゃない?


やっぱりあの最初の前世の時代まで食のレベルを上げるのは、素人の俺では難しい。


まあ、別に俺が食べたいものだけ食べれればいいけどね。


マヨネーズとか、作ったはいいけど、俺は食べてないからね。


ただ、母様からの圧に負けて、野菜を彩るのに作ったが、食べすぎると太るから気をつけるように注意は忘れない。


マヨネーズとは諸刃の剣なのだ……


「……シリウス様、美味しそう」

「味見する?」

「……うん」


おたまで掬って、お皿に乗ると湯気が凄い。


「熱いから気をつけ――」

「――――!――あふ、あふ――!?」


遅かったか……口の中で熱い餃子が乱舞してるのだろう。


念の為水を渡すと勢いよく飲み干した。


「……死ぬかと思った」

「ごめんごめん、注意する前に食べたからさ」

「……シリウス様、あーん」


おっと、そうくるか。


ふっ、だが、俺には通用しないのだ!


「あむ……うん、美味しいね」

「……むぅ、魔法使ったの?」


口に入る前に少しだけ冷気を出して熱さを相殺したのだ。


「……でも、これ楽しい」


俺が心の中で勝ち誇っていると、セシルは構わずに水餃子を再び俺の口元に運ぶ。


反射的に食べたが、少し冷ましてくれたのか、悶えるほど熱くはなかった。


うーん、でも、やっぱりポン酢醤油は欲しいなぁ……


「……シリウス様、シャルティア呼んでくる」


結構お腹いっぱいまで食べさせられた後に、セシルはシャルティアを呼びに行った。


なるほど、次のターゲットは彼女か……


「シリウス様、お呼びでしょうか?」


少し待っていると、音もなく厨房へと入ってきて傅くシャルティア。


段々、人間離れしてるが……まあ、いいか。


「シャルティア、料理作ったから食べてみてくれない?」

「シリウス様の手作り……はい!是非に!」


……ごめん、そんなにキラキラした瞳を向けられたら熱々水餃子でハメようとか思えないよ。


「熱いから、気をつけてね」

「はい!……!?」


勢いよく、冷ますことなく食べたシャルティア。


その熱々の中身は当然口の中を蹂躙して、必死でそれを隠そうとして、少し涙目だった。


可愛いけど、流石に可哀想なので水を渡す。


「はぁ……あ、ありがとうございます。とっても美味しかったです」

「そっか、なら良かったよ」

「……うん、本当に良かった」


いつの間にか来ていたセシルが、シャルティアの先程の様子を見ていたのか満足気な表情をしていた。


「……シリウス様、フィリア様にもこれ持ってくの?」


2人も当然、空間魔法や転移魔法を知ってるので、その疑問も当然かもしれない。


「うーん、今日は忙しいだろうから、明日かな」

「……予定把握してるの?」

「大体だけどね」


それと、結婚前にフィリアと領地で同棲するという計画も密かに進行中だ。


早めに領地入りして、慣れるため……というのが表向きの理由だが、本音は俺がフィリアと一緒に居たいだけなのだ。


大体、13歳頃を予定してるが、結婚式は成人の15歳の予定。


それまでは、手を出せないが……別に、焦ることもないだろう。


フィリアや、セシル、シャルティアとのんびり過ごせるのなら、悪いことではない。


むしろ、まったりライフが俺の希望なのだ。


ちなみに、学園に関しては、飛び級で入ることになっている。


本来は12歳からの入学なのだが、俺とフィリアの実力的に特例が許されたのだ。


魔法に関しては俺の指導でかなり伸びてるし、学問なども優秀なのでフィリアってば凄い。


10歳……つまり、後2年後に俺とフィリアは飛び級で学園に入ることになる。


そこで側室候補を探すつもりだったが……まあ、その辺はあまり気にしなくて良いだろう。


後日、水餃子をフィリアにも食べて貰ったが、流石にあの熱い目に合わせるのは気の毒なので、俺が冷ましてあげた。


この待遇に、セシルとシャルティアは複雑そうだったが、後ほど同じことをしたら嬉しそうだった。


そういう所可愛いよね。


















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第3王子はスローライフをご所望
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