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26 冒険者ギルド

フィリアとの視察という名のデートから数日後、馬鹿な3人組の件も終わったようなので、俺は領内にある冒険者ギルドを訪れていた。


この世界にも、冒険者という仕事は存在しており、それぞれの領地に独自に支部を持っている。


基本的に、冒険者ギルドや教会とはどの領主も不可侵を定めている所が多い。


国ですら、ある程度の距離を心がけているくらいだ。


勿論、相互の連絡はあるし、権限は領主や国が最も大きいが、大抵のことは冒険者ギルドや教会は独自の姿勢を貫いている。


そんな中、俺の領地はといえば、他よりは密接な関係を築いていると思われる。


まあ、これは、前任者の後始末の時に、どちらの方面にも協力をしたからであり、冒険者ギルドのギルドマスターや、受付、冒険者に、教会だと神官などともそれなりに面識があるのということだ。


なので、俺が冒険者ギルドの扉を開けると、かなりの注目が集まるわけででして。


「あ、領主様。ギルマスにご用でしょうか?」


集まる視線の中で、近くにいた受付嬢からそんな風に声をかけられ、すぐに俺はギルマスの部屋への通される。


「これはこれは、領主様。先日は馬鹿な奴らがすみませんでした」


屈強な、如何にも戦士という感じの体格の大きい軍人もどき。


それが、俺のギルマスの見た目の第一印象だった。


まあ、ラウル兄様に似た感じだ。


「いや、ああいう手合いは仕方ない。とはいえ、一般人を恐喝する馬鹿な真似は本気でやめさせた方がいいだろうね」

「ですな……それで、本日はどのようなご要件で?」

「その前に質問……何かあったの?」


ギルドに入った時に、感じた受付嬢達の慌ただしさと、ギルマスの疲れきった顔に何やら厄介事の気配がして俺はそれを先に尋ねた。


「いえ……実はですね……」


話すべきか迷ったようだが、ギルドは意を決したように話してくれた。


「『サンダータイガー』の出現が目撃されてまして……」


サンダータイガー。


文字通り、雷を纏った虎で、Aランクの冒険者複数で挑む魔物だ。


魔力を持つ自然界の動物。


それを魔物と呼ぶのだが、彼らの体内の核である魔石がその力の源であり、魔道具に使われる動力なのだ。


サンダータイガーか……雷の魔石はレアだから欲しいな。


「ふむ、なるほど。その討伐隊の編成での慌ただしさだったのか」

「いえ、それが……」


ギルマスが言うには、Aランクの冒険者が今現在街におらず、最高でBランクの冒険者グループが1つ居るだけだそうだ。


そして、サンダータイガーの目撃が確認されたのは、昨日のことだそうで、ギルドがない村から早馬で近くにあるウチの領地まで依頼を運びに来たらしい。


「……早急になんとかしたくても、手札が足りず、どうしたものかと……」

「なら、俺が行こうかね」

「え?領主様がですか?」


どこか困惑気味の視線を受ける。


まあ、8歳児がAランク相当の魔物退治とか有り得ないしね。


ただ、この3年の間のことを知ってるので、否定するのもどうなのかという感じか。


「ギルマス、冒険者ギルドのギルドカードって何歳からだったっけ?」

「12歳からですが……」

「確か、領主やギルマス、高ランク冒険者辺りの指名の場合は特例が認められてたよね」

「はい……あの、冗談ですよね?」


半信半疑なギルマスに俺はパチンと指を鳴らす。


すると、俺の足元をウロウロしていたペガサスのクイーンが元の大きさに戻り、その綺麗な翼を広げてみせたのだ。


「なんと……!ペガサスですか!?」


聖獣の出現に、目を丸くするギルマス。


クイーンは俺にじゃれつきつつも、その威厳のある姿を見せつけていた。


ちなみに、頭の上のフレイアちゃんは何故自分を選ばなかったとコツコツと頭をつついてきていた。


だって、流石にフェニックスはレベルはギルマスが倒れかねないしねぇ……


「そんな訳で、1人で十分だよ。魔石は欲しいから貰うけど、それ以外は売るからそれでどう?」

「……分かりました。ですが、念の為、Bランクの冒険者パーティーを同行させてもよろしいでしょうか?」

「構わないけど、俺が何をしても黙っててくれるって約束出来る?」


この領地から活動拠点を変えた冒険者が、変な風に吹聴したら面倒なのでそう事前に確認をとっておく。


まあ、Bランクともなれば、口の硬さはある程度保証されてるとも言えるけど。


ランクが上がるほどに、ギルドからの評価基準は高くなり、そこにはある程度人格も含まれる。


なので、人格が破綻してる者はそこまで上に行けないのがこの仕事の暗黙のルールだったりするらしい。


「それは、大丈夫です。彼女たちはその辺は弁えてますので」


彼女たち?


女の子パーティーなのだろうか?


まあ、そういう冒険者パーティーは珍しくないけどさ。


「分かった。なら、いいよ」

「では、早速手配をしますね。彼女たちも丁度来てるので、ここに呼びましょう」


そうして、しばらく俺は椅子でのんびりと寛ぎつつ、クイーンと小鳥状態のフレイアちゃんと戯れていると、コンコンというノックの後に、4人の女性が室内へと入ってきた。


「ギルマス、どうかしたの?」

「私達何かしましたっけ?」


短髪の活発そうな女性がそう聞くと、眼鏡をかけた魔法使いの女性が少し困ったように尋ねる。


「……多分、サンダータイガーの件」

「その可能性が高いな」


後ろにいた、片目を眼帯で覆った、無表情な魔法使いの少女と、スレンダーな金髪の騎士らしき凛々しい女性がそれに続く。


「ああ、その件だ。お前たちに同行して貰いたくてな」

「ギルマスが行くの?でも、流石に私達が居ても――って、え!?ペガサス!?」


今更な反応だが、これは俺達が透明化の魔法で隠れていたからだ。


それを良さそうなタイミングで解いたのだ。


これは、ギルマスからのお願いだったが、彼女たちは高ランク冒険者でありながら、さっきまで気配すら感じて無かったことにかなりびっくりしていた。


しかも、出てきたのは聖獣であるペガサス。


そして更に――


「って、え?領主様?」

「わ、本当だ」


何故かこの話をしてる所に居る人物。


普通なら、領主にサンダータイガーの件を相談したのだろうと予測出来る。


実際に、短髪の女性と眼鏡をかけた女性はそうかなと予想するが、残りの2人はそうは思わなかったみたいだ。


「……領主様、そのペガサスは領主様の?」

「うん、そうだよ」

「……おい、どういうことだ」


無表情な眼帯魔法使い少女の表情がその確認で、僅かに動き、凛々しい女性騎士はギルマスを睨みつけた。


こんな時にふざけた冗談を――とでも言うかとおもったが、答えは全然違っていた。


「いくら、領主とはいえ、子供にサンダータイガーの討伐を任せるのか!」

「……だが、お前なら分かってるんだろ?シャルティア」

「確かに、領主様の強さは知ってるが……これは大人の問題、ましてや冒険者の仕事だろう!」


なるほど、随分と正義感が強いようだ。


「落ち着けって……そんなんだから、行き遅れるんだぞ?」

「黙れ!それとこれは関係ないだろ!」

「いや、そんなにギャンギャンうるさい女嫁に欲しくないっての」


そうかね?俺としては教育ママになりそうで頼りになるけど……まあ、感性はそれぞれか。


というか、俺の実力知ってる風だけど、何故?


「……シャルティア、ストップ」

「だがな、セシル。これは……」

「……前に2人で領主様が魔法使うところ見た。それに、そのペガサス……絶対、私達より強いよ」

「むぅ、だがな……」

「あーっと……つまり、領主様がそのペガサスの主ってことなのかな?」


短髪の女性からのその質問に俺は頷く。


「まあね。友であり、子供かな。それより、サンダータイガーの討伐に関してだけど、俺がやるから、4人にはそれを見守ってて欲しいんだ」

「えっと……流石に子供を魔物の前には……」

「だよな、アイン!ほら見ろ!」


騎士の女性……シャルティアは短髪の女性の言葉に頷くと味方が増えたように喜ぶ。


「うーん……でも、領主様って凄い魔法使いなんだよね?それに、ギルマスが決めたならいいと思うけど」

「……私も、クレイに賛成」


クレイという魔法使いの言葉に、眼帯魔法少女のセシルは、何かを確信したようにそう言う。


「だがな……」

「……そんなに心配なら、シャルティアが守ってあげるといい」

「そうだぞ、そんな必要は無いかもしれないがな」

「……ああ、分かった」


どこか納得はいかないようだが、そう答えてから、シャルティアは俺に騎士の礼を取るのだった。


丸く収まったみたいで何よりだ。


そうして、自己紹介を兼ねて全員の顔と名前を覚える。


先程の騎士の女性はシャルティアという名前で、盾役をすることが多いそうだ。


大盾と剣は白く輝いていてカッコよかった。


眼帯魔法少女はセシル。


このパーティーで唯一の10代で、闇魔法を使えるそうだ。


闇魔法――まあ、光の正反対な訳だが、その効果は主に相手を呪ったり、怪我を悪化させたり、その頂点とも言えるのが人の生死すら操るというものだ。


まあ、俺も使えるけど、この魔法はレアではあるが、あまり人には好まれないので、宮仕えは諦めて冒険者になったらしい。


あとの二人、短髪の女性がアインで、眼鏡の魔法使いがクレイ。


アインは剣士らしく前衛、クレイは後衛の主力ということだ。


そんで、俺の自己紹介はほぼ不要だった。


皆、俺が領地であれこれしてるのを知ってるみたいだし、シャルティアとセシルは、俺が領地をちょこっと弄ってた時に魔法を目撃していたそうだ。


なるほど、だから、ペガサスの召喚主だと言って信じてくれたのか。


「じゃあ、手早く済ませようか。ギルドカードは?」

「少し時間がかかるので……出来れば、その間に準備を」

「分かった」


まあ、俺は別に準備は必要ないが……でも、距離的には準備が必要とも言えるので仕方ないか。


早馬でも1日はかかるんだし、本当はペガサスでサクッと1人で飛んでいきたいけど、監督役の4人を置いてくのはねぇ……とはいえ、他の子達を呼んだら誰が俺を乗せるか、乗せられなかったら拗ねるだろうし、移動は陸路になってしまうか。


もどかしい……やっぱりパーティープレイは性にあわないな。


あと、ギルマスからこの依頼での出来事の口外を禁じる言葉を皆即座に頷いたのは助かった。


疚しいことはないけど、念の為ね。




















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