130 女王とお茶
「うむ、相変わらずそなたの甘味は絶品だな。生まれ変わっても腕は落ちてないようだ」
「ありがとうございます」
「あむあむ……う〜ん!美味ひいれふぅ〜」
妖精女王に出したお茶とお菓子は高評価を貰えたようで、上機嫌にお茶を飲んでくれる妖精女王。
前に作った、妖精女王のための専用の小さなティーカップでお茶を飲み、もしもの為に用意した妖精サイズのお菓子を口にする妖精女王と、しれっと混じってお菓子を頬張るミル。
先程もかなり食べたのに、何とも幸せそうに食べるミルは何とも微笑ましいものだ。
「シロよ。他の者への手土産も無論あるのだろうな?」
シロ……これは、俺の呼び名らしい。
その呼び方の意味は前世の時からさっぱり分からないけど、妖精女王の言葉の方は無論分かるので頷いておく。
「ええ、勿論」
「ならばよし。ミルよ、後で城下の者達にも配ってくるといい」
「ふぁ〜い」
ハムスターのような頬張りかただが、それが微笑ましいのがミルという少女であり、それとは反対に小さく一口づつ食べては笑みを浮かべるのが妖精女王という人であった。
「時にシロよ。その姿はそなたの好みか?」
「いえ、特に要望などは出してませんが……」
「うむ、実に私好みだが、同時にあの創造神とも通じるところがある。そうなるとやはりそなたの魂が先に取られたのは、かの創造神の仕業か。そなた、あの創造神に気に入られたのだな」
創造神……妖精女王の言っているのは、恐らくは、俺の敬愛する女神様のことだろう。
「気に入られたのかは分かりませんが、俺はあの方に救われました」
「みたいだな。妾達には、人間の事情や感情など分からぬが……そなたが面倒な枷を取り払われたのは何となくだが分かる」
俺の心を持ち直させたくれたという意味でなら、確かに面倒な枷を取り払って貰えたというのは正しいのかもしれない。
本当に、心から感謝しかないよね。
なんて思っていたのだが、次の言葉に俺は思わず首を傾げることになる。
「呪いも消えておるし、やはりあの創造神は別格だな」
「……呪い?」
はて、そんなものがあっただろうか?
妖精女王と会った時には、呪術も勿論習得していたので、早々呪いなんてものを受けても直ぐに解呪出来たはずだし、そんな状態で妖精界を訪れた覚えなどなかった。
どういう事だろう?
「なんだ、気づいてなかったのか?そなた、前に見かけた時に、呪われておったぞ」
そんなはずは……無いとは言えないが、妖精女王が気にしていたということは、人間によるものとは少し違うのかもしれない。
「念の為お聞きしたいのですが……その呪いは、どんな物だったか分かりますか?」
「うむ、効果は不明だが、あれはある邪神の呪いのように感じたな。名前は忘れたが、あの創造神を裏切った邪神やもしれぬ」
妖精女王曰く、前回の俺の訪問時にそれが見えたが、妖精女王でも解くのは難しかったので、俺を妖精に転生させてから、一度リセットさせて、俺との繋がりを強くしてから呪いを解こうと考えていてくれたらしい。
何とも嬉しい心遣いだが、教えてくれても良かったのになぁ……とはいえ、邪神の呪いとなると俺に解ける確率はかなり低いだろうし、結局一緒だったのかもしれない。
にしても、呪いねぇ……女神様は特に何も言ってなかったけど、俺に無用な心配をさせない為?
或いは、女神様にとっては片手間で済む問題で言う必要性もなかったのか……何にしても、これも後で聞いてみることにしよう。
知らなかったとはいえ、呪いとやらで更に俺は女神様に救われていた事にもなるし、そのお礼も言いたいしね。
あと、妖精女王にも一応お礼は言いたいかな。
何だかんだと、気にかけてくれていたのなら、これほど嬉しいことはない。





