104 7人の婚約者
「フィリア様、お茶なら私が……」
「いえ、折角なので私が淹れますよ。シャルティアさんは座っててください」
「しかし……」
「……シャルティアは不器用だから、美味しいお茶を淹れるなんて無理。フィリア様にお任せするべき」
「というか、貴様の仕事だろうが!あと、私だって美味しいお茶くらい淹れられるわ!シリウス様にも褒められたし……」
「……シリウス様は優しいから、お世辞で褒められた」
「はいはい、もうすぐ出来ますからね」
自室にて、のんびりしていると、部屋のチェックが終わったのかフィリアがやって来てお茶を淹れてくれていた。
恐縮して名乗り出るシャルティアと、フィリアの意志を尊重していつも通りシャルティアを宥めるセシル。
何とも賑やかだが、ここ数年で仲良しになっているのは喜ばしいことだ。
「セリアさんも読んでるのですね!」
「うん、シリウスくんの恋愛ものは面白いからね。フローラちゃんも読んでて嬉しい!」
そして、視線を左に逸らすと、青髪美少女のフローラと、エルフの姉妹の妹のセリアが本の話で盛り上がっていた。
なお、俺の書いた恋愛ものの小説がお気に入りらしい……なんか、照れる。
『あの、スフィアさんその髪飾りは……?』
『うん?ああ、これ?これはシリウスからのプレゼントでね。似合ってる?』
『とってもお似合いです』
『ありがとう、ソルテも可愛い指輪ね』
『はい……ご主人様からの贈り物ですから』
そして、そこから更に視線を横に逸らすとそちらではエルフ語で話すエルフ姉妹の姉のスフィアと、ハーフエルフのソルテの姿が。
こないだ俺が贈った髪飾りを褒められて上機嫌なスフィア。
気に入ってくれたようで良かったよ。
何だかんだで、スフィアとセシルも俺の婚約者になったのだが、まあ、好ましい2人なので特に今ところは不都合もない。
平和っていいね。
なお、少し遅くなった婚約指輪を嵌めたソルテは大切そうにそれを胸に抱いているが……ここ数年で更に俺への依存度は上がってたりする。
悪いことではないし、俺も責任を取ると決めているので問題あるまい。
しかし……この部屋凄いな。
気がつけば自室に婚約者全員が揃っており、7人もの美少女、美女が賑やかな様子を見せている室内……これが全員俺の婚約者とか、ウチの領地以外の所だと嫉妬が凄そう。
これまでも婚約者達全員が揃う機会はあったのだが、これがこれからの日常になるというのは中々に楽しそうで思わず頬が緩む。
「何だか、嬉しそうですね。シリウス様」
「まあね、お茶ありがとう」
「気に入って貰えると嬉しいのですが……」
「フィリアのお茶はいつだって最高だよ」
「……ありがとうございます」
照れつつも笑顔でそんなことを言われるとドキッとしてしまう。
むー、やっぱりフィリアさんは小悪魔だね。
「……シリウス様、私は?」
「セシルのお茶も好きだよ。というか、セシルは器用だよね」
「……シリウス様程じゃない。でも、確かにシャルティアよりは器用かも」
「私は騎士だからな」
「うん、頼りにしてるよ、俺の騎士様」
何処と無く得意げなセシルと、俺の言葉に嬉しそうにするシャルティア。
この2人も相変わらずだけど、やっぱり一緒にいて楽しいよね。
「シリウス様、ここは賑やかでいいですね」
「そうかもね」
『はい、皆さん一緒で楽しいです』
フローラの言葉に頷くソルテ。
「ねえねえ、シリウスくん。この後暇なら皆で街の視察しない?デートも兼ねてさ」
「それはいいかもね。どう、シリウス?」
「そうだね、じゃあ、皆で少し出掛けようか」
スフィアとセリアはここ数年ですっかり領地に慣れたようで、俺が学園を卒業するまで少し仕事を任せていたのだが……本当に頼りになって助かるよ。
まあ、これからは領地から学園に通うようになるから、俺も前よりももう少し領地の仕事を出来るだろうし、婚約者達との憩いの時を潰さない程度に頑張るとしよう。
そうして、お茶を楽しんでから婚約者全員を連れて領地の視察……という名のデートをするが、何とも優しい領民たちはそれを温かい眼差しで見守ってくれてたりするのだから、有難い。
でも、「お子が楽しみですなぁ」という言葉は少し早いかな。
まあ、嫌じゃないけど……それは結婚後の楽しみだからね。





