私を愛してくれていると思っていた夫の望みは「自らの能力よりも高い子供を生み出す大神殺しのスキル」を持つ私が高い能力の子を生むことだった。だけど嫁いで3年たち、石女と言われた私は離縁を宣言されました
大神殺し、それは私に宿ったスキルでした。
遠い昔、必ず、父となる男よりも高い能力を持つ子供を生み出す女がいて…。
その女が次代の神を生み出してしまい、父である神様を殺したということに由来をします。
私を求めて何人もの男が争いました。
子に殺されるという伝説以上に、高い能力を持つ男たちが己よりも高い能力を持つ子供を求めたのです。
子が生まれるかということまで私は検査され…一番条件がいいところに嫁にやろうと貧乏な親も画策していました。
「子供はいらない…君が欲しい」
そう言ってくれたのが侯爵であったアストル様でありました。
私はその言葉を信じてアストル様と婚姻したのですが。
「お前は嫁いで3年しても子を為せなかった。お前と同じスキルを持った少女が見つかったときいた、私と離縁してくれ。子ができない女はいらない」
と私はアストル様に宣言されてしまったのです。
アストル様は昔庶民の女に子を産ませたことがあったらしく、子供ができない原因は私にあるといいました。
「子供なんていなくてもと…」
「そんなの嘘に決まっているだろう。貧乏な子爵の娘であるお前の価値など大神殺しのスキルしかない」
冷たい目でアストル様は私を見て、そして新たな少女との婚姻を決めたというのです。
「それは不貞…」
「不貞ではない、お前は石女だ。跡取りが産めない女との離縁は認められている!」
私はアストル様に家を放り出され、離縁届に無理やりサインをされてしまったのです。
「…子供、子供って…」
私は実家にすら戻れず、泣きながら下町を歩いていました。
私はまだ22歳、子供を産める可能性はまだまだあります。
「…おや、どうしたお嬢さん?」
「…え?」
「ほう、良いスキルだね、大神殺しか」
「どうして…」
「あたしはスキル鑑定の能力を持っている占い師さ」
ニヤッと笑い話しかけてきた老婆は占ってあげるよと言うのです。
「…私」
「あんたの能力を欲するものは多いさ、泣くんじゃないよ。あんたさえよければもっと良い男を紹介してやるよ」
何もかも見透かすような瞳でいう占い師、私はアストル様に離縁されたことまで見通すこの老婆が恐ろしいと思いましたが、どこに行く当てもなく…老婆を頼ることにしたのです。
「…どうして隣国の王太子が…」
「おばば様に父に対抗できるだけの力を探して来いと頼んだんだけど…」
隣国に私は連れていかれ、そこで王太子というかたと謁見させられたのです。
彼は父の王と不仲で王太子の地位を脅かされていてるというのです。そういえば隣国の王は後から迎えた側妃の産んだ第二皇子を愛し王太子にさせたいと噂がありました。
「…大神殺しのスキルは亡き正妃様も持っていたスキルだよ坊や! これさえあればあんたも…」
「私子供ができないといわれて夫に離縁されたのですが」
「それはね、あいつが不能だからさ、あんたは子供ができる体だよ!」
私は困った顔の王太子、レオン様を見てお互いに困ったなあと言い合いました。
「私はもう20歳になるが父に疎まれ婚約者さえ決まらない。だから強い力を持つ人を探してくるようにお願したんだけど…あと私は子を作るつもりはない。父に疎まれたのはこの父よりも優れた能力のせいだし」
「私下働きでもなんでもします。ここにおいてください!」
「…そうだねえ、婚約者が決まらないことでも文句を言われているし、仮で婚約者になってくれないかな?」
クスクスと笑うレオン様、おばば様とやらは亡き正妃様付きの占い師だったそうです。
私は隣国の子爵の娘でありながら王太子殿下の婚約者となりました。
大神殺しのスキルを持つ女を婚約者にしたと王太子につく人間も増えて…王である父はあきらめ、隠居し、レオン様が王となることが決まったのです。
「子はいらない、養子をとればいいし、サーシャもそのほうがいいだろう?」
「いいえ、レオン様ならどのような子が産まれても愛してくれると思います」
私は王太子妃となり、王妃となりました。
隣国の王家に呼ばれて、城で元夫に会いましたが、お前みたいな石女が王妃なんて信じられるか! と暴言を吐いた罪で所領を没収されてしまいましたわ。
あのあと、大神殺しのスキルを持つ少女と再婚をしたものの子が産まれず色々と悩んでいたみたいですし。
私はレオン様の子を3人産みました。
彼よりも優れた能力を持つ子供たちですが、レオン様に愛され、治世は保たれ私は幸せに過ごしました。
元夫は子に恵まれず、とうとう所領を没収されたのが響いたのか、爵位を返すこととなったそうです。
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