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IDOL is KILLERS  作者: しまうま
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0.新生活

4月。あたたかな春の陽射しが新生活を祝福するようなこの時期。

近くに咲いているわけでもないけれども、なんとなく桜の香りがするような気分だ。

家の外からは新入生だろうか、無邪気な子供たちの笑い声が聞こえる


そうか、もう登校の時間か。僕もあまりゆっくりはできないな。今日から社会人なのだから、初日に遅刻だけはしなようにしないと。

僕は甘めに作った飲みかけの紅茶を一気に飲み干す。

まだ冷め切っておらず、少し舌が火傷した。

 

ネクタイを締めながら、部屋に立てかけた姿見で自分の姿を確認する。

変なところはないか、スーツに皺がついていないか。…よし。平気そうだ。

入社説明の時にラフなかっこで出社していいよ、とは言われたものの、境界線がわからないし、言葉通りに受けとったら、意外とみんなきっちりスーツだったりしても嫌だしな。初日はスーツで行って、翌日以降様子を見るのが吉だと判断した。


さて、そろそろ家を出ようか。玄関に向かい、まだ新しい革靴を履きドアをあける。ふわっと柔らかな風が吹き頬がくすぐったくなる。


家から仕事先までは徒歩20分。少し歩くが、都内の混雑した電車に乗らずに済むメリットはとてつもなく大きい。

それにしても、家まで借りてくれるなんて、ありがたい話だ。

いろいろな会社に面接を受けては落ち、受けては落ちを繰り返したけれども、ギリギリで内定を取れて良かった。

業務内容は初日に伝えられるという点は少し不安だけども、面接官の人も優しく丁寧だったし、なによりテレビCMも出してるような製薬会社だ。専門知識なんかゾウリムシの鞭毛ほどもないから、営業とかかな。運転免許の有無も確認されたしありそうだ。

正直手あたり次第面接を受けていた時だから企業に関して深く調べてはいない。

メインは製薬部門だが、他にも芸能や貿易にも手を伸ばしており、今後も様々な分野へと進出していく…と入社前の説明会では聞かされている。


万が一芸能人としてデビューとかになったらどうしよう、と、ありもしないことを考えてニヤニヤしていたら、すれ違う人の訝しんだ視線を感じ、顔に締まりを取り戻させる。

と、そうするうちに、目的地に到着した。


ここが僕の新天地、ASH製薬の本社ビルだ。


面接のときとはまた違う緊張感を持ちながら自動ドアを通る。

家を出てきたときは晴れていたのに、薄暗い灰色の雲が空には広がっていた。




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