飛鳥 『ちょっとした野性味溢れるキャンプだと思えば』
「俺3日以上も寝てたの!? そりゃビックリ。んじゃ~あれから何か問題はあった? それと周囲の様子とか機体の状況はどうなってる?」
――そして俺は、飛鳥に現状までの詳しい報告をさせるのだった。
「そもそも、ここは何処なんだ。何かこの惑星についての情報はあるか?」
『それらしき惑星の情報は、私の中のデータには御座いません』
「それって未知の惑星か? それは困ったな。この船はすぐ飛べそうにない? 飛べるならば、近くに何処か情報のある惑星があれば、話が早くて良いんだけど」
『不時着時前後で、船外部に甚大な損傷を受けており、飛行可能状態までの修復作業に、最低でも数週間単位が必要です。また修復に必要な物資も充分では無い為、可能であれば物資の追加補充を要求致します』
「うへぇ~それキッツ~んじゃ暫くは無理か~……。まぁ命があっただけマシって事か。しかし、追加の物資って言われてもなぁ~? こんな惑星で、そうそう物資の補充が出来るとは思えないけどね?」
『飛行ドローン3機展開し、現在まで機体周囲を探索させておりますが、10km圏内に人種の集落は発見出来ておりません』
「うへぇマジか~、もしかして相当辺鄙な場所に不時着しちゃったりした? もしくは、そもそも知的生命体が存在しない星とか? だったら相当キツイなぁ~」
『いいえ。この惑星に不時着する際にですが、私の視界センサーで、あくまで確認出来た部分でですが、人種による村のような集落をいくつか確認しております』
「そっか、完全に無人の惑星って訳じゃない訳ね? そりゃ良かった」
『はい。ですが文明度は相当低そうです。物資の補給は期待出来そうにありません。こちらは派手に不時着したというのに、あちらからの接触は今現在まで全くありませんので』
「普通はすぐ、現場確認くらいするよな~? 相当文明とか遅れてる? んじゃどうするかな? わざわざリスクを犯して、こちらから未開の惑星の人とコンタクトを取るべきか否か。そもそも言葉とか通じるの? んで補給物資も見込めないなら、大人しく機体の修理をのんびり待って、そのまま飛び去った方が良くないか?」
『はい。物資を切り詰めれば何とかなりそうです。時間は余計に掛かるかもしれませんが、最低限の飛行可能な程度までにはなる見込みです。また言語につきましては、御時間を少し頂ければ私が現地言語を学習する事で、翻訳が充分に可能かと思われます。そして新たな問題があります』
「ん? 何?」
『この惑星に突入してからですが、通信機器が一切反応しておりません。機器の故障では無いと思われますが……』
「え? じゃあ救難信号とか出してても意味が無いって事?」
『はい。外部からの通信が一切受信出来ておりませんので、これは大変な異常事態であると考えられます』
「船の修理をしながら、大人しく誰かの救助を期待する事も出来ないと言う訳か。そもそも糧食とかどうなってる?」
『3ヵ月分程度の船内糧食の備蓄と、数日分の携帯食料が御座います』
「大人しく修理を待つにしても、何かギリギリって感じだな」
『実はマスターが寝ている間に、船外の探索活動をしておりまして、その際に色々と発見したのですが、その中で食用可能そうな生物もいくつか確保しております』
「おお! マジで? 流石飛鳥さん、有能!」
『はい。ただ完全に、食用が可能かどうかの分析が完了しておりませんので、結果が出るまでは今しばらくの御時間が必要です』
「それならおっけ~! 食用可能な生物がいるなら、ちょっとだけの間サバイバル生活してれば良いじゃんね?」
『はい。分析結果でも大気の状態などは澄んでおり、周囲は自然に満ち溢れております。子機での短時間の探索でも、食用可能そうな生物も豊富に捕獲出来ましたので、その辺は今後も期待出来ると思います』
「かなり予定外だけど、ちょっとした田舎の野性味溢れるキャンプ生活~みたいな感じか」
『そうなります。私の子機だけでも、周囲の探索は可能ですので、マスターはのんびりと、船内で自由に羽を伸ばして頂いても構いません』
「そっか~わかった! じゃあ暫くは船内でダラダラしてるわ」
『何かあれば、随時ご報告致しますので、ごゆっくりどうぞ』
――そんな飛鳥の言葉を鵜呑みにしてしまった俺は、ダラダラと数日を船内で過ごしてしまうのであった。