コウ・ユージン 「ここはどこ? あなたは……誰?」
飛鳥『マスターがお目覚めになる前に、何らかの成果を出し、その報告が出来ると良いのですが……。』
どこか嬉しそうにそう呟く、AI飛鳥は多忙であった。
――そして暫しの時が流れる。
「ん……。ん~? ここはどこだ? 俺は一体……。」
確か新しい宇宙船をGETしたから、お祝いにバカンス惑星まで行く途中に航行トラブルで……。
だいぶ眠っていたのか? やたら頭がボーッとするせいで、ただただ見慣れぬ天井を眺め続ける俺。
「ここは医務室か? 俺生きてた? 不時着成功?」
流石最新鋭の船だ。初航行で死亡フラグは何とか回避したか。
『あら? お目覚めですかマスター』
ん。この声は……飛鳥か。良かった飛鳥も無事か。
何だかホッとした。
こんな状況で生き残っても、1人きりじゃ寂し過ぎるよ。
「ああ、起きたよ飛鳥、オハヨ~って……おい! オイおい飛鳥さん? お前さっき何勝手に色々やらかしやがってくれたんですか? ……ってあなたは誰? ハッ……もしかしてお前……飛鳥か!?」
この極悪非道な、AIによる暴走で俺は強制スリープかまかされたのを、今やっと思い出したのだ!
絶対に文句を言ってやるぞ! と飛鳥の声が聞こえてきた方向へ、首だけグリッと横にした俺の視線のその先には、見た事もないような、妖艶な超絶美女が微笑みながら立っていたのだった。
しかもキャットスーツのような、ピタッとした服を着ているので体のラインがより強調されていた。
――Ohビューティフル。あーんど、ダイナマイトバディ!
『YES肯定します。正確には子機です。所謂【分身体】のような存在と言えます。
今後の活動に向けて、マスターの護衛と身の回りのお世話をさせて頂くべく、今回新たに誕生致しました。
完璧には程遠い、間に合わせの汎用型では御座いますが、どうぞ末永く宜しくお願い申し上げます』
そう俺に向かって、恭しく綺麗にお辞儀をする妖艶美女飛鳥。
……確かに、声や口調は飛鳥そのもの。それは間違いない。
マジか……。まじで飛鳥さんなのか。美人さんやな?
でもちょっと、その姿は刺激が強過ぎますよ飛鳥さん。
その美女、いや飛鳥さんは、そんな俺をずっと見詰めながら、やたらニコニコと上機嫌だった。何だろうね?
「いやしかし、誕生……。汎用型……。そんな時間あった?」
『はい。あれからマスターは、正確には78時間と33分お眠りになっておりました』
ナルホド。あのトラブルで、予想以上に俺の精神や体に負担があったのかも知れない。五体無事で怪我も無いだけラッキーだ。
「3日以上も!? そりゃビックリ。んじゃそれから今まで、何か問題はあったか? それと周囲と機体の状況は?」
――そうして俺は、飛鳥に現状までの報告をさせるのだった。
頭の片隅では、この先こんな美女と一緒の生活に、1人思いを馳せワクワクしていたのは……俺だけの秘密である。