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 目を覚ました場所は、冷たい床の上だった。

 どれだけ眠っていたのか分からないが、体中が痛い。こんな硬い石の床の上で寝ていたからだろう。だが、好きで寝ていたわけではない。まだ頭がくらくらするが、しっかりと覚えている。僕はあの行商人に騙され、催眠ガスで眠らされ、ここに運ばれた。それだけではない。僕が身につけていたものがパンツ以外すべて無くなっていた。体が痛いのは、パンツ一丁で寝ていたせいでもあるんだろう。

 痛い体を労りながら、ゆっくりと体を起こし、周りを見ると、三方向を床と同じ石の壁に覆われ、残りの一方向は鉄格子になっていた。

 この光景を見れば、誰だって分かる。ここは牢屋の中だ。

「おぉ、坊主、気づいたか。ほれ、これを着ろ。そのままでは風邪を引いてしまう」

 僕と同じく牢屋の中にいた老人が汚い布を渡してきた。おそらく、これが僕らに与えられた衣服なのだろう。見れば、老人の他にもう一人、子供にしてはやけに丸い人も、この汚い布を体に巻き付けている。

「まあ、汚いのは分かるが、着らんと風邪も引くし、見回りでいちゃもんを付けられかねんからな」

「はい……ありがとうごがっ……」

 お礼の言葉を言おうとしたが、途中で堅いものを噛んでしまった。

 吐き出してみると、それは綺麗な宝石……。

「メリル! よかった。無事だったんだね」

 子供たちにもらった腕輪も、大人たちにもらったなけなしのお金も、母からもらったネックレスも、服も、剣も、そして、モーガンからもらった指輪も、全部なくなっていたけど、この綺麗な宝石、メリルだけは意識を失う前に口に放り込んだおかげで無事だった。

「無事だった? どこがよ! 全身、あなたの唾液だらけよ!」

「ご、ごめん……」

 拭くものといったら、さっき老人にもらった汚い布しかない。

「ちょ、ちょっと! 汚い! 汚いわよ!」

「仕方ないだろ。これしかないんだから」

 嫌味を言われようが、メリルの体は宝石なので、暴れることもなく、ちゃんと拭き終わった。最初に拾ったときより少し汚くなったような気もするので、綺麗な水と布があったら、そのときは磨いてやろう。

「それで、何で私を口の中になんて放り込んだのよ。飴とでも思ったの?」

「いや、あのまま気絶していたら盗られると思ったんだよ。現に、今、パンツ一丁だし……」

「あなたが口に放り込んだりしなければ、私の魔法でガスなんて吹き飛ばせてたの。分かる?」

「そんなの分からないよ。魔法が使えるなんて知らなかったし……」

「ちゃんと説明したわよ。あなたが意識を失いかけてて聞いてなかっただけでしょ」

「それは……」

 その通りなのだが、意識を失いそうになっているときに話しかけられても理解なんてできない。

 何か言い返そうと思っていたのだが、それはできなかった。

「そ、その声は……まさか……」

 僕たちの言い合いに、突然、汚い布をくれた親切な老人が話に割り込んできた。

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