決着
「オラァァ!!」
護の剣が大魔王を貫く。
既に魔王達は暗殺に奇襲殲滅、ボロクソに挑発してからの油断を突くなどして倒している。
とても勇者様の戦術とは思えないが勝てば官軍、要するに勝てば何をしてもいいのだ。という外道精神をフルに発揮しての勝利である。
それでも勇者か。
幾度も言われたが、護の知ったことでない。
勝手に呼ばれて戦わされて正々堂々など鼻で笑うのが護だ。
「人間という劣等種を根絶する計画も頓挫か、口惜しいが負けは負けだ。 勇者護よ、三大陸を救いし偉大なる異世界の人間よ。」
「お前からの賞賛とかくそ食らえだから、マジで要らねぇ。しかも相打ちだし、あぁもう喋るのもしんどい」
大魔王を突き刺した剣から護の手が離れる。
顔面は左眼球が潰れ、左腕は根元から無くなり、切り裂かれた腹部からは臓器が溢れだしている。
「つか三大陸?お前三大陸も同時に侵攻してたのかよ、ご苦労様な事だな。仕事漬けだっただろ、ざまぁみろ。」
「………饒舌だな勇者護、何故だ。我は貴様が命を捨てるきっかけになった憎き仇敵、不倶戴天の間柄の筈だ。」
「どうせ死ぬんだ、俺もお前も。憎いけど無言で満足したみたいな死に様は俺には似合わねぇ、クソッタレなお前でも話し相手にしたい気分なのさ」
「そうか………我も死に際の会話など想定しておらなんだな、負ける気など欠片も無かった故。」
「おっと……これは……死ぬな……先に行くぞクソッタレの大魔王」
「ああ、さっさと死ね。お人好し馬鹿の勇者め」
勇者護は死んだ。
死因は失血死、劇的とは言い難い有り触れた死に様。
大魔王も心臓の位置にある核が砕かれている、もう永くはない。
「そうだ、いい復讐を思いついたわ。羞恥に悶え、あわわよくば悶絶死するがよい」
大魔王は勇者護の亡骸に細工をする。
死者蘇生の禁術、大魔王ならば一分もあればできる事だが生憎と大魔王は瀕死。
数千年に渡ってゆっくりと蘇生させる方法しか無いのだ。
無いのだ。
「クククッ、貴様が悶える姿が見れぬのが残念だが。さぞや滑稽な醜態を晒すのだろうな」
笑いながら肉体を魂を魔力に変えて術式を組み上げる。
砂のように崩れる肉体の悲惨さとは裏腹に大魔王は笑顔だった。
「ではな勇者護、これが我を殺した貴様への最期の復讐だ。地獄にて笑い転げてやろう」
顔が崩れる。
言語を発せなくなる直前に勇者護を転移にて跳ばす。
やがて勇者と大魔王の戦いの痕跡は、更地になった周囲と大魔王であった粉のような残骸の山だけであった。